第4話 貰ったスキル1

「う……」


 目が覚めた。また、うつ伏せで寝ていたみたいだ。

 ゆっくりと上体を起こす。

 視界の焦点を合わせる。それと同時に、聴覚も戻って来た。

 意識がハッキリとして来た。

 まず、自分の手を見る。

 若返った、瑞々しい手……。夢ではなかったみたいだ。傷跡もないし。

 大きく深呼吸をする。

 さて……。


「ここは何処ですか?」


 まず、床だけど、カーペットだった。中世とか言ってたけど、これ人口糸で作られてない?

 それと、机と椅子が4人分ある。

 十畳間くらいの大きさだけど、見たことない計器類が壁に設置されている。

 背後には、扉があった。部屋なのか?

 そして、前方を見る。……見たのだけど、窓ガラスがあることしか分からない。光が入って来なかったのだ。雨戸?

 今はLED照明みたいな光で、室内が見渡せていると思う。


「……潜水艦を想像させられるな。もしくは、夜なのかな?」


『起きられましたか? ご気分はいかがでしょうか?』


 不意に声をかけられた。

 周囲を見渡すが、誰もいない。だけど、幻聴ではない……、と思う。


『え~と……。私の声は、あなた様の脳内に埋め込まれたマイクロチップから発生させています』


 え? マイクロチップ?

 いや、そうじゃない。脳内に埋め込まれたってなんだ?

 嫌な汗が噴き出して来た。


『お目覚めになられるまで、多少の時間がありましたので、少し肉体改造させて頂きました』


 恐怖心が私を襲う。

 なにをされたのだろうか……。

 いや、まず現状の確認をしよう。


「え……と。お名前を聞かせて貰ってもよろしいでしょうか?」


 裏返った声で質問してみる。


『私に名前はありません。〈量子コンピューター〉とリンクした〈万能AI〉になります』


「……はい?」


『まず、現状の確認からいたしましょう。ドアから外に出てみてください』


 振り向くとドアが開いた。

 こう……、なんと言うか未来的なドアだ。二重扉であり、まず左右の扉が開いて、その後上下の扉が開いた。

 SFなんかで出て来る、宇宙船をイメージさせられる。

 私は促されるまま、部屋を出た。

 ここで違和感に気が付く。

 壁の材料が見たことない物質だったからだ。金属ではないと思うけど、石でもない。セラミックかもしれないな……。


 恐る恐る触ってみるが、堅いとしか分からなかった。


『そちらは耐熱セラミックですね。2000℃以上の高温に数分間耐えられます。この船の外壁材として多く使われていますよ』


 嫌な汗が止まらない。

 私の知識が正しければ、宇宙ステーションの材料に使用される素材のはずだ。高価なんてモノじゃないぞ?

 そのまま、言われるがままに進む。

 階段を上り、天井のハッチを開ける。

 そして、外に……。突風が吹いた。そして、気圧が変わったのを感じた。

 耳が痛い。


「雲――か? 今は高いところにいる? いや、私は研究施設を望んだんだ。高い山の山頂付近に作られた施設……」


『クスクス。それでは、全体をお見せしますね』


 そう言われた後に、地面が揺れた。

 そして、視界が晴れた。


「えっ? えっ?」


 頭が付いて行かない。私は空飛ぶ船に乗っていたからだ。





「これは、飛行機になるのかな……」


 まず、船の形だけど、ヘリコプターの様なプロペラが四基付いていた。ドローン?

 高度は、4000メートル上空だと思う。富士山の山頂くらいだろう。雲が眼下にあるし。なにより寒い。

 風景は壮観としか言いようがない。

 私は、空飛ぶ船に乗っていたのか……。


『〈飛空艇〉と呼んでください。ファンタジーの定番ですよ?』


「〈飛空艇〉……。それはいいのですが、なぜ私は〈飛空艇〉に乗っているのですか? 神様との契約と違うんじゃないですか? 安全な研究施設だと聞いています」


『う~ん。できれば前世のモノは再現したくなかったとしか言えませんね。それで、研究施設の代わりに〈飛空艇〉が与えられました。でも安心してください。実験設備は揃っていますよ?』


 待て待て……。落ち着こう。

 空飛ぶ船が手に入ったと思おう。多分だけど、これが研究施設の代わりになるはずだ。

 それと、衣食住の保証もお願いした。

 多分だけど、揃っているはずだ。


 それと、眼を背けてはいけない単語がある。

 先ほど、〈量子コンピューター〉と〈万能AI〉と言った。


 神様との会話を思い出す。


「もしかしてですけど、パソコンの代わりが、〈量子コンピューター〉ですか?」


『そうなります』


「そうなると……、人工知能の代わりが、あなたですか?」


『そうなります』


 嫌な汗が、止まらない。あの神様……、私の話を聞いていなかったな。

 後、なにを要求したのかを思い出す……。


「……飛空艇は、なんのエネルギーを使って動いているのですか?」


『え? 〈超小型核融合炉〉を積んでいますけど?』


 核融合って……、おい!


「出力は……」


『最大出力は、100億キロワットになります』


 ごふ……。吐血しそうになった。

 原発一基分の千倍ですか……。


『出力の確認を行いますか? レールガンがありますよ? 陽電子砲でもいいです』


 飛空艇が、変形して行く……。

 物騒な砲身が現れた。なにを撃ち出すの?


「ストップ! ストップ! 危なそうなので仕舞ってください」


『え~。せっかくだし一発撃ってみましょうよ~』


 かなり面倒くさい人工知能だな。

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