第12話
話が長くなってしまい、その日は村長の家にお世話になることになり、その間にも関係者各位には話が通達された。
翌朝には家に帰る前にルーカスとエレナちゃんを迎えにいくことになった。
「リュナ様、本当にありがとうございます。ルーカス、言うことを聞いてしっかり励むんだよ」
「ああ、母さん。頑張るよ!」
感動的なシーンだ。
母親のエマさんは春から新設される村の薬草畑で未亡人達や年齢が高い人達と一括りで働くことになった。これについては今回の件とは関係なく、元々そういう畑を作る予定ではあったと言っているが、村長にねじ込んで話を進めていたことを考えれば、村の救済と彼らだけが特別な対応を受けたと石を投げられないようにとの対応ではないだろうかと考えている。
そしてルーカスとエレナちゃんについては真面目に働いて技能さえ身につければ実質結婚ができると言うことになる。成人が一五歳の三年後となるのでその後ではあるけど。
「エレナも頑張るんだよ。ルーカスが不甲斐ないようならいつだって蹴飛ばして別の男を捕まえなさい。あんたの幸せが一番なんだからね」
「はい、お母さん。私も頑張るから」
なんでもエレナちゃんのお母さんとは親友だったららしく、我が子のようにずっとお世話をしていたらしい、エマさんも苦労人なんだな。薬草畑になれば普通の作物より重労働ではなくなるようだし、上手く育つといいんだけど。この人には報われてほしい。
それにしてもエレナちゃん一五歳、実にパワーがある主に胸周辺、もちろん顔面偏差値も高いが幼さが目立つ。これはいわゆるロリ巨乳ってやつなんだろうか。
そしてルーカス。バカイケメンだ。十二歳でこれだぜ? 年を重ねたらどうなっちゃうんだよ。エレナちゃんはもしかして面食いなのかな。幼馴染な訳だし純愛だよね?
若いカップルとババアとの共同生活とか不安しかないんだけど。
二人のペースが思ったよりも遅くて家までにかかった時間が行きの三倍はあった。
村の子ってこんなに体力がないのか? 筋肉もいまいちだし、村長さんとかマーロさんは例外中の例外って感じかな。
「アルデン、飯の用意をしな。ルーカス、エマも手伝いをしながら覚えるんだよ」
「はい」
「俺は男で、狩人ですよ? 料理をするんですか?」
「ダメよ、ルーカス。言う通りにして」
「わ、わかったよ」
何故かババアが俺の頭に拳骨を落とす。
なんで、ねえなんで?
「弟子の不始末は師匠の責任だからね」
ルーカスがクソガキってことはわかったけど、このままだと俺の頭蓋骨が砕ける結果とかにならないよな?
クソガキは文句は言うものの、基本的な調理はできるようで安心した。エレナちゃんについては料理スキルは問題ないどころか、俺が何も言わないでも先を予想して動いてくれる。
この子も天才とかいう部類か? 君を副料理長に任命してやろう! ククク、これ絶対に俺が負けキャラの料理長役だよ。
「薬師様はこんなに美味いもの毎日食ってるのかよ!」
騒がしいガキだ。喜んでくれてるのは嬉しいという反面はあるものの、兄弟もいなかったし、ましては弟子なんて初めての経験だ、どう扱っていいのものか。
「ルー、楽しく食べるのはいいけど騒がしいのはダメ」
「なんだよ、美味かったから、美味いって言っただけじゃないか」
「エレナちゃん、さっきはルーカスだったのに、普段はルー呼びなのかい?」
「申し訳ありません、崩れた呼び方を」
「気にすることはないよ。師匠もそこまで気にしないですよね?」
「節度をもって生活をするのであれば呼び方なんてどうでもいいことさね」
じゃあ、俺もそろそろババア呼びでもいいって−−睨まれた。気を緩めてババアとか呼ばないようにしよう。
食事が終わって、三人で皿洗いをする。三人いれば洗う量が増えてもあっと言う間だ。
「リュナ様の家は凄いです。水が自動的に出る魔道具だったりお湯を簡単に沸かせたり」
「なー!」
異世界から来たから当たり前に使ってたけど、珍しい魔道具が多いんだもんな。
「片付けが終わったらなこっちに並びな」
ババアが当たり前のようにあんこを膝の上に乗せてるのはなんなんだよ。寒いせいか、夜寝る時もあんこを取られてしまう。俺のあんこなのに!
「ここで生活をする以上、私の言うことには従ってもらうよ。お前らの年貢について母親の分を含めて建て替えている。しっかり働かないなら叩き出すからね。働いて知識を、技術を得られれば未来の生活も楽になるはずさ。ルーカスはまだ成人していないからね、エレナ、お前がちゃんと手綱を握るんだよ」
「は、はい!」
「エマからお前らを預かってる手前、成人前に乳繰り合ったりしたら即叩き出すからね」
エッチなことはするなよって話ですね! 同感です! エッチなのなんてダメですよ!
「アルデン、お前も若い娘がいるんだ。配慮するんだよ」
「了解です。婚約者のいる女の子相手に変なことはしませんよ。俺は紳士ですからね」
「はん、紳士ねぇ」
何故か鼻で笑われてしまった。
確かに胸は最初凝視していたけど、今は三回に一回くらいしか見てないし! 見るくらいないいよね!
はっ、あからさまにエレナちゃんに胸を隠された、ババアが煽るからだ!
「エレナは一部屋余ってるからそこを使いな。ルーカスはアルデンと一緒の部屋だよ」
予想はしていたけど、部屋数が足りないし、同室になるか。
ベットの二つ入るようなスペースはないし、一人は床だな。
「兄弟子だからってずっと床で寝ろとは言わん。五日ごとに交代でベットは使うからな」
「わかった」
ありがとうございますくらい言えよ! 一応、後輩になる訳だろ?
「ルー、ちゃんとお礼を言って。アルデン様、申し訳ありません、気をつかっていただいたのに」
「いやいや、気にしないで。子供なんだからそんなもんだよ」
「ガキ扱いするな!」
ガキが言うセリフナンバーワンの言葉じゃないか。
「はいはい、それとエレナちゃんも様じゃなくてさんでもお兄ちゃんでもいいからね」
俺的にはお兄ちゃんがポイント高いよ!
「はい、アルデンさん」
まぁ、最初の距離感なんてこんなもんだろう。
明日からクソガキの面倒を見ないといけないと思うと気が滅入ってくる。
マーロさんも生徒が素直だったせいか手を出してくることもなかったし、訓練とか教える時ってどんな感じがこの世界基準なんだろうか。
最近のトレンドで言えば愛の鞭なんて論外で、暴力で縛る時代ではないからな、現代のトレンドに沿って叱らず諭しながら教えていくか。
「それじゃあ、私は寝室に行くから、午前中はいつも通りに、時間が余れば訓練を始めてもいいよ。アルデン、エレナにも簡単な基礎トレーニングだけはさせな。それが終わったら私のとこに寄越すように。ルーカスはあんたが見ておくんだよ」
「わかりました。明日は五時起きなので、各自寝坊しないように」
さてさて、若いカップルが一組増えたけど今後の生活はどうなっていくのかな。
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