サヨナラが燃えた

花火仁子

サヨナラが燃えた

 フリック入力の練習がてら、スマートフォンで小説を書いている。時代に追いつきたいし、君に近づきたい。毎日、日本酒をコップ一杯だけ飲む母の気持ちがなんとなくわかった気がする。私はあれから毎日、ワインをマグカップ一杯だけ飲んでいる。


 春は別れと出会いの季節だと言うけれど、大人になるとね、春夏秋冬関係なく、いつだって、別れの方が多くやってくるんだよ。


 その中でも、秋は誰にもバレずにサヨナラができる。サヨナラは燃える。紅葉と同化して、綺麗に燃える。全て燃やし尽くして、灰になる。


 こうして大好きだった人は、可愛い人の元へ飛んでいってしまった。




 数年後。




 大好きだった人に、どうしても聞きたいことがあって、電話をした。


「もしもし」


 ダメ元でかけた電話だったが、意外なことにでてくれた。懐かしい声。私が大好きだった声。


「単刀直入に、ひとつだけ聞くね。君と私が仲良くしてた時、ちょーっとくらいは、私を好きな気持ちあった?」


 私の問いに間をあけることなく、君は答える。


「まぁ、少しは」


 その答えに、当時の私が報われた気がした。


 サヨナラを燃やしてくれて、ありがとう。


 これで私も灰になって飛んで行けそうだ。

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サヨナラが燃えた 花火仁子 @hnb_niko

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