第11話 「第三話 さよなら、史香」10話:そして史香さんがいなくなった。


 

 それからすぐに梅雨は明けた。

今年は、例年よりも少し早いとのことだ。




 連日照りつける太陽は、すでに真夏の開始を告げていた。

 早く言えば、暑い日々が始まったのだ。




 そして僕はと言えば、その後、テストやらなんやらで忙しくて、

 ついつい霊園に行って史香さんに会う機会を逸していた。




「もう、学校で幽霊の話題をするヤツは、誰もいないよ」




 久しぶりに史香さんにあった僕は、そのことを伝えた。

 人の噂もなんとやらである。




 書道室に毎晩現れていた釈幸純しゃくこうじゅんさん……、秋沢純子さんが、

 出現しなくなったこと、そして大下が偽手紙を一切書かなくなったことから、

 みんなの間から急速に幽霊話は出なくなった。




 それは、目前に迫った楽しい夏休みと、

 その前に受けなくちゃならない期末試験のことで忙しかったことも関係あると思う。




「そうなの。あーっ、よかった。

 あれから私、直接、学校に行って確かめようとなんども思ったんだけど、

 もし、万が一やぶ蛇になったら元も子もないでしょ? だから、自重していたんだよね」




 史香さんは、笑顔でそう答えた。




 今日も、霊園の丘から見下ろせる風景は抜群で、ときおり吹き抜ける風が気持ちいい。




 その後、僕たちはいろんな話をした。

 それは、音楽のことだったり、テレビ番組のことだったり、

 もちろん学校のその後のことだったりだ。




「私、観たい映画が、あるんだ」




 史香さんが、突然、言った。




 聞くとそれは、封切り間近の洋画でアクション映画だった。

 史香さんは、恋愛映画はほとんど観なくて、好きなのはハリウッドの大作映画だったのだ。




「今度、いっしょに観に行こうか?」




 ぼくは、思い切って史香さんを誘ってみた。

 自分では平静を保ったつもりだけど、たぶん、僕の顔は真っ赤になっていたに違いない。




「ええっ? 連れて行ってくれるの?」




 史香さんは、本当にうれしそうに笑顔を見せてくれた。

 そして、墓石の周りをくるくると踊り出す。見ている僕までうれしくなってしまう。




「ねえ、それってデートだよね。デート」




「……そ、そう、だね……」



 僕は言葉に詰まった。

 そうかなとは思っていたけど、やっぱり、これはデートなのだ。

 僕は、ついに女の人を誘うことに成功したのだ。




 ……なんだか、うれしさと恥ずかしさが、いっぺんにこみ上げてきた。




「明後日、来るから」




「うん。待ってる」




 映画の封切りは明後日だから、そのとき僕が、この墓場に迎えに来ることで約束が決まった。

 そしてその日、僕は帰宅したのだった。




 ――だけど、それが史香さんとのしばしの別れになるなんて、

 そのとき僕はほんのちょっとも思わなかったのだ。




 二日後。

 その日は、夏休みの初日でもあった。




 僕は、映画の前売り券を二枚持って、自宅を出て霊園墓地へと向かった。

 時間はまだ早かったけど、太陽はすでにじりじりと地面を焼き始めていた。




「……今日も、暑くなりそうだな」




 僕は、霊園入り口のアスファルトの照り返しの中で、汗を拭きながらつぶやいた。

 そして、八段区もある霊園の坂道を一歩一歩登り始めた。




 春には花々を見事に咲かせていた桜並木も今はすっかり青葉になって、

 地上に濃い影を作っている。

 途中の坂にはお墓参りに来ている人がいるようで、自動車が数台、駐まっているのが見える。




 それらを追い越しながら、僕は頂上へと向かっていた。




 そして到着した丘の上。

 僕は目印となっている角地にある我が家の墓を目指した。

 その隣が史香さんの骨が眠る紅林家の墓なのだ。

 まだ、できたばかりの真新しい墓所で、墓の中には史香さんしか埋葬されていない。




「あれっ?」



 僕は、そのときにすでに違和感があった。

 いつもなら、墓石の上に腰かけた史香さんの姿が見えるはずだったし、

 僕の名前を呼ぶ声も聞こえてくるはずだからだ。




 だけど、その日は違っていた。

 僕は、我が家の墓所の角を曲がった。




 そのときだった。




「……ええっ!」 




 僕は叫んだ。そして絶句した。

 我が家の墓である相田家の墓石の隣が、ぽっかりと空いていたのだ。

 そこにあるはずの紅林家の墓が、なくなっていたのである。




 一昨日まで、そこにあった墓石はおろか外柵もすっかりなくなっていて、地面は更地になっていた。

 まだ土が敷かれたばかりなことから、昨日くらいに墓石が撤去されたのは間違いない。




 ……でも、その理由がわからない。




「史香さーんっ。史香さーんっ」




 僕は、力の限り叫んだ。

 それは、霊園全部に行き渡るくらいの大声だったけど、史香さんの姿はまったく見当たらなかった。




 僕は、しばらく立ち尽くしていた。とにかく途方に暮れていたのだ。




「どうしよう? ……いや、違う。考えるんだ」




 僕は、必死に考えを巡らした。

 史香さんの魂は骨には宿っていない。もちろん墓石にもだ。




 だから、いかなる理由で墓石がなくなったのかはわからないけど、

 史香さんが成仏してしまった訳じゃない。

 もしかしたら、単にどこかに出かけているだけかもしれないのだ。




 でも、なくなった墓石のことは確認したい。

 そう思った僕は、丘を降って霊園事務所の中へと入って行った。




「すみません。ちょっと、聞きたいことがあるんですけど……」




 声をかけると中年の小太りの男性が、席から立ち上がってくれた。

 その格好から霊園職員であることは間違いない。




「西八段区の紅林さんのお墓参りに来たんですけど、お墓がなくなってしまっているんです」




 僕は中年男性に、そう尋ねた。

 すると、男性は眼鏡をかけ直しながらカウンターに来てくれた。




「紅林様? ああ、そう言えば昨日、改葬かいそうがあったんですよ」




「改葬?」




 僕が質問すると、男性は親切に教えてくれた。

 改葬とは簡単に言えば墓の引っ越しで、

 昨日、紅林家の人たちと、お坊さんと石材店の人がやって来て、

 お墓を片付けてしまったのだと説明された。




「紅林様は引っ越しされるんで、それで、お骨も持って行ったんですよ」




 そう、言われた。




「引っ越し? どこにですか?」




 すると、男性は顔を曇らせた。




「失礼ですが、お客様は紅林様と、どういう、ご関係ですか?」




「え、えーと。お墓に入っていた紅林史香さんの友人なんですが……」




「うーん。ご友人ですか……」




 男性は、しばらく考え込んでいた。そして、結論から言うと引っ越し先は教えてくれなかった。

 規則で個人情報を漏らすことはできないというのだ。




「ご親族の方であれば、大丈夫なのですが……」




 僕は、お礼を言って事務所を後にした。

 そして足早に霊園を出た。行き先は史香さんの家だ。




 もう、すでになんども来ているので道に迷うことはない。

 僕は、最短距離を通って史香さんの叔父さん宅に到着した。




「……空き屋?」




 初めは留守かと思った。

 でも、表札がなくなっていて、

 窓ガラスのカーテンも全部なくなっていることから、僕はそう確信した。




 そして庭に入り、窓から屋内をのぞくと、そのことが確実だとわかった。

 家具類もすべてなくなっていて、きれいに片付いていたからだ。

 やっぱり紅林家は引っ越ししていたのだ。




「……そう言えば」




 僕は思い出していた。

 史香さんが位牌を取りに戻ったときに、史香さんの部屋が片付けられ始めていたり、

 居間の調度品がなくなっていたりしたと史香さんが話していたことだ。




 あれは、引っ越しの準備だったのだ。




「つまりは……、位牌が持ち去られた」




 僕は史香さんが姿を現さない理由を悟った。

 史香さんの魂は位牌に宿っている。おそらく史香さんは、

 今この瞬間、位牌の近くでさまよっているに違いない。




「あのー。すみません」




 僕は、隣の家の庭でガーデニングしている中年女性に声をかけた。

 おそらく、その家の主婦に間違いない。




「なんでしょうか?」




 中年婦人が気がついてくれたので、僕は質問をした。それは、もちろん紅林家の引っ越し先だ。




「故郷に戻るって、言ってたわね」




「故郷? どこですか?」




「うーん。詳しくは知らないのよ。私は、あまり紅林さんと親しくしていなかったし、

……そうそう、そう言えば、東北の方だと聞いてたわね」




 お隣の主婦は、そう教えてくれた。

 人のよさそうな感じの女性だったので、嘘はついていないと思う。

 それに僕に嘘をついても仕方がないはずだ。




「……東北」




 僕は、お礼をいって史香さんの家だった家屋を後にした。

 ひとこと東北地方と言ってもとてつもなく広い。

 僕は、史香さんの家族の出身地を聞いていなかったことを激しく後悔した。




「……手詰まりだ」




 僕は、自宅へと戻った。

 他に手立てが浮かばないからだ。家に入ると、そのまま自室のベッドの上であおむけになった。




「くそっ」




 そして、ポケットに入っていた映画のチケットをめちゃくちゃにちぎった。




 ――僕は、落胆していた。




 それは、もちろん映画の券が無駄になったことじゃない。

 史香さんに会えなくなったことだ。




 史香さんの笑顔や、声に、二度と会えないと思うと、悔しくて、悲しくて、涙が出てきた。




 それでも僕は考える。

 今度の引っ越しは急な話だったに違いない。

 たった三ヶ月前まで、いっしょに暮らしていた史香さんさえ知らなかった話なのだ。




 おそらくは、叔父さんの転勤……。そんなところだろう。

 もちろん、僕は史香さんの叔父さんたちの勤務先を知らないことから、そこから調べようもない。

 当然、叔父さんたちの電話番号だってわからない。




「ん……! 電話番号?」




 僕は、がばっと跳ね起きた。

 そして、ポケットからスマホを取り出す。

 そして急いでメモリーからある人物を呼び出した。そして、コールする。




「……る、留守電か」




 僕は、メッセージの内容にしたがって手短に要件を告げた。

 その後、念のためメールでも同じ内容で送信した。……後は、返事を待つしかない。




 その後、弟が呼びに来た。

 昼食ができたとのことだったけど、僕はいらないと返事をした。

 今は、のんびり食事をしている気分じゃないからだ。




 連絡が来たのは、午後三時を回った頃だった。




『なんだ? 急な用件ってのは?』




 大鷹だった。背後から竹刀の音が聞こえる。剣道部は夏休み初日から合宿に入っている。




「うん。……実は、史香さんがいなくなったんだ……」




 僕の言葉は、最後の方は胸が詰まって、うまく言えなかった。




『いなくなった? どういうことだ?』




 大鷹が、あわてたように訊いてくる。

 大鷹は史香さんの幽霊の事を知っている。

 それは永井さんから告白されたときに一度見ているし、その後、永井さんから話を聞いているからだ。




 大鷹は、数少ない史香さんの現実を知っている人物だったのだ。

 他に知っているのは、当然、僕と永井さんだけだ。




「霊園に行ったら、墓がなくなっていた。そして、家に行ったら引っ越しした後だった」




『……』




「そ、それで、頼みがあるんだ」




『なんだ。できることなら、なんでもするぜ』




「永井さんに、訊いてもらえないか? 史香さんの家族の出身地のことを……」




『わかった。今は、部活に戻らなきゃならないから。……そうだな、亜季にメールしておく』




 そう言って、大鷹からの電話は切れた。




 僕は、大きく深呼吸した。まだ希望の糸は切れちゃいない。

 史香さんとあれだけ仲がよかった永井さんなら、なんらかの情報を持っていてもおかしくない。




 そして、それは当たっていた。

 なにごとも手につかず、ただベッドでぼんやりしているとスマホが鳴ったのだ。

 見ると見知らぬ番号だったけれど、僕は直感でそれが永井さんだとわかった。




『相田くん。史香が、消えちゃったんだって……?』




 やっぱり、永井さんだった。




「大鷹から、メールが届いたんだ?」




『ええ。メールの中に相田くんの電話番号が載ってたから、すぐにかけたのよ。

 ……もう私、驚いちゃって、びっくりしちゃって、どうしたらいいのかわからなくなっちゃって……。

 とにかく急いで相田くんに電話したって訳なのよ』




 永井さんは、そうとうあわてている様子だ。

 そして、心なしか声が涙ぐんでいるように思えた。




「ありがとう。永井さんに、相談したいことがあったんだ」




『なあに? 私にできることなら、なんでもするわ』




「うん。それで聞きたいんだけど、史香さんの家族って、東北のどこかわかる?」




『知ってるわ。私の親戚と、同じだから』




 永井さんは即答してくれた。やっぱり永井さんは史香さんの居場所の手がかりを知っていたのだ。

 しかも親戚と同郷なのだという。

 ふたりの仲がいいのは、そういうことも関係していたのかもしれない。




 そこはT市だった。




 僕は頭の中で地図を思い浮かべる。新幹線に乗って更に在来線に乗り換えたところで、

 東京からは何百キロと離れている。




 僕は、井さんと話しながら、いつぞや史香さんとやった実験を思い出していた。

 それは僕が位牌を持って、どれくらいの距離まで史香さんが実体化できるかの実験だ。




 そのときは半径十メートルくらいなら史香さんは実体化できた。

 それ以上となると、史香さんの姿は他人には認識されなくて物にも触れることができなかった。




 T市か……。




 史香さんは位牌に束縛されている。それは位牌に魂が宿っているからだ。

 これは僕の想像だけど、その位牌が何百キロも離れてしまうと、

 さすがの特異体質の僕にでも史香さんを認識できないのだろう。




『私もね、詳しい番地までは知らないの。だけど、私の祖父もT市に住んでるの。

 だから祖父に聞いたら、大体ならばわかるかもしれないわ』




「ありがとう」




『……あのね、相田くん』




「なに?」




『……史香のこと。好きなの?』




 永井さんは、突然そんなことを聞いてきた。




「……たぶん。いや、たぶんじゃない。好きだと思う。いなくなって、わかったんだ」




 僕は自分でも驚いていた。

 こんなに素直に自分の心がわかったことと、それを誰かに教えてしまえることに、

 びっくりしていたのだ。




『……そう、本気なのね。あーっ、なんだか、私までうれしいわ。

 ……じゃあ、調べて後でまた電話するわね』




「ありがとう」




『史香のこと、よろしくね』




 そう言って、永井さんの電話は切れた。




「……やったかも」




 僕は、小声でつぶやいた。

 ついに手がかりを見つけたのだ。思わずガッツポーズをする。




 そして、僕が思った以上に史香さんの情報は得られることになった。

 永井さんの祖父が紅林家を知っていたのだ。




『私も、びっくりしたのよ。T市にある大きなお寺に、お墓があるんだって』




 再び永井さんから電話があったのは、それから一時間くらい後のことだった。




『そのお寺、祖父が檀家総代を務めてるの。そこに紅林家の本家のお墓があるんだって』




「ええっ!」




 僕は驚いた。こんなにうまく情報が手に入るとは思わなかったからだ。



 

『だから、お寺で調べれば紅林家の本家の住所はわかる、って言うのよ』




 永井さんのおじいさんが務める檀家総代とは、お寺の檀家さんたちの代表みたいなものだ。

 それなら住職さんと関係は深いから個人情報がうんぬんと言われて断られることもないだろう。




「永井さん。ありがとう。ありがとう」




 僕は、なんどもお礼をいった。




『あのね、私、史香のことが心配なの。

 ……中学のときからの親友で、とっても仲が良かったのに突然死んじゃって、悲しくって、

 ……私、ほとんど毎日のように、泣いていたわ」




「……そう」




 それは、僕にも想像がつく。

 縁起でもないけれど、もし大鷹が突然死んでしまったら僕は途方に暮れてしまい、

 しばらく抜け殻のようになってしまうに違いない。




『……でも、史香は、帰って来てくれたわ。

 ……もちろん、相田くんのお陰なんだけど、


 私はこんなに嬉しく思ったこと、人生で一度もなかったわ。

 これって、全然、大げさに言っているのじゃないのよ』




「……うん」




『それなのに、また史香に会えなくなっちゃったなんて、……私、私……』




 そこで永井さんはまた泣き出してしまった。

 僕は、しばらく無言のままで永井さんが復活するのを待っていた。

 やがて永井さんは、やっとのことで言葉を紡ぎ出す。




『……でも、相田くん。これから、どうするの?』




「どうするって?」




『電車に乗って気軽にすぐ行けるって距離じゃないわ。それに日帰りなんて無理よ』




「うーん」




 永井さんの言う通りだった。確かに簡単に行き来できる距離じゃない。




『ね、そうでしょ? ……で、ものは相談なんだけど……』




 そう、永井さんは切り出した。

 まだ声は涙ぐんでいたけれど、しっかりとした口調になっている。




『私も行くってのは、どうかしら? もちろん、ふたりきりじゃないわ。大鷹くんもいっしょによ』




「えっ!」




 あまりの展開に、僕はついていけない。




『あのね、T市に私の家の別荘があるの。

 そこに泊まれば、史香の親戚の家を探すのに便利だわ』




「えっ……、でも、なんだか、永井さんに悪い気がする」




『いいのよ。困ったときは、お互い様。

 ……それに、これには条件があるの。ギブアンドテイクなんだけど、私の方にもお願いがあるのよ』




 聞けば、大鷹を誘って欲しいというのだ。




『あの人は剣道一筋だから、私が頼んでも無理だと思うの。

 でもね、親友の相田くんの頼みなら聞いてくれる可能性があるわ』




 僕は、なんだかわからないけど同意した。やって来たチャンスを逃す手はない。




『……よかった。相田くんが納得してくれて。

 私は千佳ちかあずさ知美ともみたちに口裏を合わせてもらうことにするわ。

 男の人たちとだけで旅行するって言ったら、お父さんたち、卒倒しちゃうから』




 つまり、表向きは、女友達と出かけることになるらしい。




『あとね。迷惑じゃなかったら、私が新幹線のチケット用意するわ』




「えーっ! それは悪いよ。僕の分は、僕の方でなんとかするから」




 そこまでお願いするのは真面目にまずい。

 これは僕の問題だからだ。でも、永井さんには通用しなかった。




『それはダメ。実は、もう、三人分予約しちゃったのよ』




 そう言って、永井さんは電話の向こうで笑い声を聞かせた。

 どうやら、ネットですぐさま手配してしまったらしい。




『これは、史香のためでも、相田くんのためでもあるけど、実は私のためでもあるの。

 だからお願い。私のわがままを聞いて』




 そう言って、永井さんの電話は切れた。




 永井さんの家は、確かに大きなお屋敷だ。つまりは金持ち。資産家だ。

 だけど、果たしてこのまま甘えていいんだろうか? 

 僕は、深く考えてみたけれど、永井さんの提案しか打開策は見当たらない。




「……大鷹に、頼んでみるか」




 僕は、永井さんが出した唯一の条件である大鷹も同行させることを、思い出した。

 そして、スマホからメールを出した。




 でも内容には触れなかった。

 それは頑固な大鷹を説得するには直接会って話をしないといけない、と思ったからだった。



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