第8話 竹千代企む

天文十六年 尾張国 熱田 加藤屋敷 竹千代居室



 あれから数ま……不本意だがシステムKAZUMASAとも何度か話した。

 が、襲撃者が誰か? と言う議論に結論は出なかった。

 そもそも、わしが未来の家康だと知る歴史改変者なら、


「いつ何時、誰がわしを狙ってもおかしくない」


 と言うのが、その顛末である。

 とは言っても、何もせぬまま殺されるワケにはいかん。

 自衛を頑張ったから暗殺が終わる訳がないのだし。


……ガキに過ぎたるものだが、忍びや、私兵を雇って損はないはずだ。

 

 しかしだ、対策の発想は生まれど、何をするにも元手がいる。

 おまけに今、わしには金がない。

 やむなく加藤殿に「小遣いくれ」と言ったら嫌そうな顔された。

 ただでさえ、わしらがタダ飯食ってるからだろう。

 けれど「借金で!」と言ったら渋々貸してくれた。

 

 つーわけでタネ銭は得たが、これを増やさねばならん。


 自前の護衛兼忍びを雇うためにも、継続的な収入は必要だ。

 となると何らかの商売、または売れるもんの殖産を考えねばならん。


……なんかあるか?


 愛知県だし織田七宝とか思いついたが、電気炉がないな。

 と言うか戦国時代に電源装置を作れる気がしない。

 んー? どうする、わし?

 あーでもない、こーでもないと悩む。

 散々悩んだが、なんとかアイデアを捻り出す。

 なんとかなるやろ、多分。


 あと……そうだなぁ、加藤殿の協力も継続したい。

 となると彼にも利益が必要か。


 ふーむ、そうしたら……?

 ちょっとした金策を行いつつ元手を増やしつつ蓄財だろうか?

 うん決めた、そうしようじゃないか。


 それから三河の服部ん家の部下を無理やり招聘するのが吉だろう。

 忍びの引き抜きで親父がキレるだろうが……知らんなぁ。

 

 何はともあれ、わしは借金を元手に、ちょっとしたビジネスを始めた。


 そしたらね? 簡単に成功した。

 わしって天才かもしれない。


 サクッと加藤殿に金も返して、服部ん家の若いもんも雇えた。

 こうした警戒が功を奏したのだろうか?

 目に見えて不審者が減った。

 下人兼護衛が来て何とかなったのだと思いたい。

 織田側の監視と協力されたら終わるような貧弱さだもん。

 それでも、なんとか白昼問わず、アホなことをされない体制のはずである。


 無駄に金と手間がかかったわ、糞が。


 まだ元服前と言う事もあり、大きく動けないのもストレスだ。

 再度天下を取れと言われても、やり直したからうまくいくものではない。

 畿内は魔境で、本願寺は健在、東海道も今川がブイブイ言わして、武田も元気。

 こんなんで天下取れとか、軽く言ってくれるもんだ、まったく。


……そんな、わしの最近のマイブームは、方々へのラブレターだ。


 お相(=西郷局)の実家に瀬名姫、あとママン。

 特に、お相は西郷の野郎に手籠めにされる前に、彼女は絶対確保する。

 メインヒロインはサクサク攻略せんとな!

 秀忠、待っててくれよ!

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