第4話 名乗りはクソだがマジレスしやがる
天文十六年 尾張国 熱田 加藤屋敷 竹千代居室
室内に嫌な気配がある。
無駄に間を開けるなんて勿体ぶらず数正は言った。
「貴方様による幕府の立ち上げです」
「………」
わしは無言だった。
が、顎で先を続けるように促した。
「遠い遠い後の世です。徳川の世は終わりました」
「なんと」
思うところはあった。
だが、同時に仕方のない気もした。
平家、鎌倉殿、室町殿、織田、豊臣……皆長くは続かなかったのだ。
唐土を見よ。
一体いくつもの王朝が起こったと言うのかね?
「しかし徳川の家は続きました」
「ふむ」
良いことである。
「ですが、不満を抱くものもおりました」
「……であろうな」
わしとて、織田殿には思う所があった。
後の世の人も同じく思うであろう。
徳川死ねとかな。
「ですので、後の世のとある民らは家康公を消そうと思い立ちました」
「ん?」
わしは引っかかりを覚えた。
消すも何も、後の世ならわしとっくの昔に死んでね?
歴史書から消すと言う事か?
「そこで彼らは考えました。
一つ、スケートが得意な信長公の子孫か、ガチャ引く方の信長を使いつつ抜群の知名度でノブを鬼強化し改変する」
わしは数正を見た。
こいつは何を言ってるんだ?
あの織田殿から面白おかしい人間が出ると?
だが発言を続けやがるので、わしは黙ったままだ。
「二つ、秀吉の家庭問題と魔羅の薄さを解決し、志村園長らに協力してもらう。あと半島と大陸を焼き払うのをしない国内内政無双ムーブ」
奴は、わしの視線には気づかない。
そのまま、数正はつらつらと狂気の未来予想図を続ける。
「三つ、信康殿が今川を取り込むルート……
勿論そこでは殿をヌッコロですね【お父さんが悪いんだ! いつもいつも馬鹿にして!】作戦」
「ヌッコロ」
「はい。ヌッコロです」
信康は、なあ…………アイツはなあ……
いや待て、と言うかそもそもおかしい。
わしは慎重に奴へと問う。
「なあ数正」
「システム:KAZUMASAです」
「数ま「システム:KAZUMASAです」あ、そう……」
面倒くせえ……なんだコイツ……
わしは、ソコには触れず疑問点を出した。
「そもそも。後の世の人間がどう、死んだ人間を殺すのだ?」
わしが言うと、数正は鼻で笑った。
「何を言いますか、貴方様は今を生きてるではありませんか?」
数正の一言は考えたくないことを、わしに意識させた。
この今が確かな現であると、実はわしは認めたくない。
わしは現状が夢だと思いたかった。
でなければ、わしは狂ってしまった現世に舞い戻ったことになるのだから。
今は死後に見ている末期の夢。
それこそ邯鄲の夢のようなもの。
その前提は崩れ、奴は「わしが生きている」と断言した。
「……分からぬことが多い、夢かも知れぬぞ」
そう耐えかねて反論すると、奴は笑いもせず言った。
「そう、でしょうか?」
議論すべきか。
わしは迷ったが、やめた。
死人であるとかよりも今を認めた方がいい。
「夢であっても、わしが今現在死ぬと困るのだな?」
「ええ。それはもちろん」
数正は、わしをじっと見る。
「織田が管領ですよ? 耐えられますか」
「あー…」
嫌だな、それ。
ノッブは良くても信忠やら怪しいし。
有楽斎がチョーシぶっこいたら、わしの手で千利休してやりたくなるだろう。
「猿が子沢山ですよ?」
「ぬう…」
どちらも想像したくない。
三郎殿も太閤殿もなあ……
「まあ現状のままでも、未来では織豊ファンや尊王攘夷派からすると貴方様はゲスイ悪役なんですけどね」
「それさあ、今言う必要があるんか?」
お前、主君を馬鹿にして無事だと思うのけ?
「あります。既に貴方様はピンチですから」
心を読むな!
「そ、そうか?」
わしは疲れて来た。
元々子供の体で体力がない。
それと、数正の話に混乱していたのもあった。
「……ピンチって、わし、今ならまだ死なんだろ? まだまだ親父生きてるだろうし」
あれ? そもそもピンチってなんだ?
「ところがですね……それも怪しいのですよ」
わしは、ひっかりを覚えて即座に反論した。
「怪しい?」
「はい・・ちょっと色々・・あ・・・・・」
「どうした?」
数正の様子が変だ。
「歴史改変者、それも小学生らからの介入のようです……」
「は?」
小学生に邪魔をされると?!
お前、凄いんだか駄目なのかハッキリしろよ!!
「数日、音信不通…今のシステム:KAZUMASAはここまで…兎に角…貴方様、命大事に…」
そういうなり、カクンと首が落ちた。
慌てて駆け寄り数正をゆする。
と、野郎、よだれ垂らして寝てやがった。
「なんなんだ…」
わしは奴を横にしながら悩んだ。
どないせいと。
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