第3話 システムKAZUMASA

天文十六年 尾張国 熱田 加藤屋敷 竹千代居室



 加藤氏に「うるせえ!(直訳)」と叱られる程わしらはポコペンに熱中した。

 しかし榊原め、わしのカンチョーから7年殺しを発明するとは……鬼才か?

 そうして馬鹿さわぎしてるわしら年相応の顔だったろう。


 が、一人空気の読めない奴がいた。

 誰か? 石川数正だ。


 奴は遊びの最中も不満顔であった。

 皆は気付いてない。


 だ、がわしにはわかった(ドヤ顔)。


 そんな数正から「話がある、人払いしてくれ」と言われたのは意外だった。

 わしも断る理由がない。

 なので、自室にて正座して対応することにする。


「ふむ」


 数正の表情が硬い。とても年相応の顔には見えない。

 表情が浮かんでないからであろうか?

 何とも薄気味悪い。


「して、与七郎? わしに話とは?」


 奴は息を吸い、溜めた。

 昼間である。

 外から津島の賑わいが、うっすらと聞こえる。 

 暫しの沈黙。

 そして奴は、わしに向かって言った。


「汚ねえタヌキ」


 わし、キレていいかな? 


 怒りで血圧が上がったが、爪を噛んで耐える。

 最後まで言わせてやろうと思っての行動である。

 だが、わしは続く数正の早口に面食らうことになる。


「のぶやぼで影が薄い、孫に呼ばれて家康降臨、とっても味噌の人、元気な人妻●ませスキー、僕が一番ホンダムを上手使えるんだ、3図柄の魔法少女、中国人から地味に人気、キレのあるダンスはヤマサち●わ、八代将軍のご先祖、セカイの歴史学者のアイドル」


「与七郎? 何を言っている?」


「絵にかいた天下餅の一番いいところ食べただけ、キレやすい、小豆餅の食い逃げ犯、前半は熟女専ジャイプラ、後年はおはDロリコン、井伊直政を事案した、テンプラデブ、みんなの殿様(意味深)etc」


 一つ一つは思い当たるような、ないような。

 なのだが、何故だかどうして、ひどく腹が立つ。

 わしは数正が言い切ったのを確認してから、立ち上がった。


「与七郎! 気がふれたフリも大概にしろ!」


 刀が在ったら手打ちにしてたと思う。

 だが、今は出来ない。

 わしの手元にあるのは守り刀しかないからだ。

 立ち上がって数正を見下ろすと、奴は一切動じる事なく言う。


「いいえ、気は触れてはおりませぬ」


 数正は無表情のままだ。

 わしは、再びどっかりと腰を下ろす。

 訳わからんが、奴が狂ってないと信じたからである。


「ではなんだ? 神託とでも?」


 わしがそう言うと、数正は頷いた。

 呆然とするわしの前で数正は立ち上がり言った。


「その通りです。私の名前はシステム:KAZUMASA」


 絶句である。 

 わしは何故かわからないが、とてつもなく胸が苦しくなった。

 具体的に言えば、13~14歳くらいの時に罹患する病を感じたからだと思う。


 【自分には感情がない】とか、

 【この世に選ばれたのは己】とか言って、

 【霊刀】とか【サイキック=フォース】が、

 さも実在すると思い混んでたかのような……


 何故か羞恥心を掻き立てられる。


―――厨二ですね。


 ふと謎の声が聞こえた気がした。


「……それで何が目的だ?」


 わしはツッコミを諦めた。

 システムほにゃららは、表情をしかめつつ話し出した。

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