木曜日。

午前8時。

昨日に引き続き早く目が覚めた。

うん、なんだか昨日よりも身体が軽い気がする。

ふと隣に目をやると、もにゅもにゅ言いながら気持ちよさそうに眠っている夫の姿があった。

おはよう、と心の中で呟き、キッチンへ向かった。

せっかく早起きできて調子もいいのだ。昨日のお礼も兼ねて多めに家事を担当しよう。

いつも通り温かい紅茶を淹れて、キッチンの掃除を始めた。


***


午前9時30分。

なんだか今日はよく眠れた気がする。

布団の中で小さく伸びをして寝返りを打つと妻の姿がなかった。

よくよく耳をすませば、扉の向こうから鼻歌が聞こえる。妻の大好きなシンガーソングライターの曲だ。

扉を開けると、水色のエプロンをつけた彼女がいた。

「あ、ごめん。起こした?」

「ううん大丈夫。よく眠れた」

「お腹空いたから朝ごはん用意してるんだけど、悠介も食べる?」

「せっかくだし、いただこうかな」

「うん。もうすぐできるよ」

分かったと返事をして、洗面所へ向かった。


***


午後1時。

洗濯物も終わった。ベランダの掃除もした。軽くつまめるようにおにぎりも握った。よし、仕事も頑張ろう。

外はいい天気だった。この様子だと2週間もすれば桜が咲くだろう。

近くに桜並木が綺麗に見える公園がある。缶チューハイでも片手に夜桜を見に行きたいなあなんて考えていたら、あっという間に職場の最寄り駅に着いた。


***


午後5時40分。

仕事が粗方片づいた。

今朝のたまごやきのおかげか、昼のおにぎりのおかげか、今日はものすごくはかどった。

彼女のことだ、きっと昨日のことに感謝と少しの負い目を感じて、俺に何かお返ししたいと思ってくれての行動だろう。月曜日の俺みたいに。


ブブッ

携帯が短く震えた。

『仕事おわったー!』

『今日はがんばれた!!!』

びっくりマークの多さからテンションの高さが窺える。おまけに脳内での再生も完璧な自分に苦笑してしまった。

『おつかれ様。気をつけて帰ってきてね』

さて残りの仕事もパパっと片づけてしまうか。


***


午後7時30分。

2人ともお風呂を済ませ、一緒に食卓を囲む。

「「いただきます」」

今日の献立は炊き込みごはん、きゅうりの漬物、チキン南蛮、焼いたかぼちゃとたまねぎ、そしてわかめのおみそ汁。

仕事の話や週末の話をしながら食事を楽しんだ。


さて、

「やりますか」

各々飲みたいお酒と、つまめるお菓子をトレイに乗せ、趣味部屋へ。

乾杯してふた口ほど飲み、オンラインゲームを起動する。

少し大袈裟な稼働音が鳴り響く中、2人揃ってボイスチャットに参加した。


「おつかれ様でーす」

「ういす」

「おつかれ~」

他愛もない話をしながら物資を漁って、敵と遭遇したら戦う。

「左もいるよ」

「了解。ちょっと回復させて」

「目の前の結構削ってるよ」

いつものメンバー、いつものキャラクター、いつもの連携。

こうやって一緒に遊べるのもうれしいし、2人一緒に受け入れてもらえるのもうれしい。

楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。

みんながよく活躍できた1戦を最後におしまいにした。


「楽しかったね」

「ね、楽しかった」

「さて片づけて寝ますか」

「そうですね」


***


「すごい充実した1日だった」

「よかったね。最後の熱かったね」

「ね!また近いうちに遊びたい」

「楽しみだね」


***


今日もありがとう。また明日。

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