他の追随を許さない

「とりあえず、前半お疲れ。俺、ナイシュー」

「まあ特に二点目はお前じゃなきゃ入んなかったわ」

「いやいや、あれはマジでたまたま。こぼれ球を青野が拾ってくれればなっていうシュート」


 「あ、後半始まっちゃうな」


 俺達は事前に決めていた通り、辻、川崎と五十嵐、中田を交代した。球技大会は全員でなきゃいけないのだ。


「よーし行くぞ」


 後半は相手からのキックオフ。堅実にパスを繋いでビルドアップしてくる。


 一人一人をパスで交わそうとしてくる。こういう時は澤野にも戻ってきて貰うようにしている。


「逃げてんのはどっちだよ」

「...」


 そこでサイドにボールが出たとこで、アーリクロスが上がる。敵ながら綺麗な軌道を描いてファーへ...いやこれは


「しゃあ!」

「やられたなあ」


 クロスではなく、ループ気味なシュート。俺は逆サイドにいたので気づかなかった。

スコアは2-2。追い付かれてしまう。


 またキックオフから始まったが、今度は敵が詰めて来なかった。最初ので打ってこないと高をくくっているのかもしれない。だが


「おいおい嘘だろ」

「すまんな。わりと得意なんだよ。ミドルシュート」


 ぶっちゃけコートはそこまで広いわけでは無いので、ハーフライン辺りからでも全然シュートは狙える。というわけで打ってみた。


「クッソー!」


 やはり俺を避けつつの展開を見せてくる。そしてさっき二点目を決めたヤツが強引にシュートを放つ。それを上田がはじき、相手がボールをトラップ。


「遅い!」

「うわっ」


 俺は斜め後ろからボールだけに当たるようにスライディングをかます。こぼれたボールらまたもや運悪く敵の元へ。そのシュートを五十嵐が弾く。


「ナイス五十嵐!」


 そのまま上田がキャッチしたので、俺は全速力で攻めに走る。澤野ばかりを警戒して俺の注意が散漫になったな。


「澤野!ナイスおとり!」


 澤野と逆サイドでボールを受け取った俺は落ち着いてシュートを放ち、四ゴール目を決めた。そして試合終了。


「しゃあ!次も決めまくって得点王とってやる!」

「お前なんかテンションバグってるな」

「インタビューん時からイラついててな!」


 この試合はその怒りをぶつけたみたいな感じだ。チームメイトと雑談していると、身長は180ギリ無いくらいの男がこちらの様子を伺っていたが、目が合うとどこかへ去っていった。


「冬馬どうかしたか?」

「いや...何かあのヒョロくて背が高いヤツがこっち見てたから」

「うわっ...あいつC組のヤツだよ。何かクラブでサッカーやってるとかいう」

「へぇ...」


 確実に勝つためにスカウティングでもしに来たのか?まあ良いや、そろそろ西野さんも出るバレーがあるから見に行かなくては。


 バレーは確か15分で多く点を決めた方が勝ちとかいうルールだった気がする。


 少しゆっくりしすぎていたのもあり、体育館につくとすでに6分が経過している。そして点差は7も差をつけ勝っていた。


「余裕じゃねえか」

「ああ、西野さんヤバイわ。男の俺でも止めらんねえかも」


 そういえばA組バレー強いとか言われてたっけ。とか思ってると西野さんが味方がレシーブミスしたのを、まるで最初からわかっていたかのように素早くカバーに行き、それをオーバーハンドで中央へふんわりあげる。


「えぇ...あれって普通相手コースに返すのに手一杯なやつじゃないの...」

「それな、未来でも見えてるんかな」


 一方的な試合展開だった。だいたいの得点に西野さんが絡んでいて、ゲームが終わる頃には18-7になっていた。


「西野さん、お疲れ様。あんなにバレー上手かったなんて知らなかった」

「...いや冬馬がそれいう?凄かったわ...後半途中から見れなかったのだけれど、結局どうなったの?」

「4-2。俺の四得点!」

「ほんとに得点王とっちゃいそうだね...」


 俺はあと10分もしたら移動しなければならない。ここでも元気のくじ運が悪く、間が1試合しか空いてないのだ。ほんとにあいつ...


「次は1試合通して見れるから」

「うん!次も勝ってサッカー部泣かすから見てて」

「確かに悔しいでしょうね。あなたに負けると」


 どうせ目的地が同じならと一緒にグラウンドへ向かう。こういうときに手を繋げる関係になる日は来るのだろうか

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