謝罪と煽りと得点王

「まずは皆に伝えたいことがある」


 サッカーの1試合目。心なしか観戦者の数が多い気がする。まあそれは一旦置いといて、試合直前にどうしても言わなければいけないことがあった。


「マジでごめん」

「いや良いよ、あれは冬馬悪くないよ」

「良くも悪くも冬馬が注目を集めている。だから負けてもお前に責任がいくだろうし別に」

「何か燃える!」


 上田が異常過ぎるが、澤野青野は大人な対応をしてくれた。


「確かに、凄いプレッシャー感じてたけれど、結果が良くても悪くても"風岡あんなにいきってたのに"ってなるのか」


 辻達は似たような反応をしてくれた。


「散々煽ってしまったが嘘は言ってない。俺は本気で勝てると思ってる。絶対克とうな」


 俺達は鼓舞しあった。戦術は特に決めてないといったがあれは嘘だ。確かに"相手に合わせての"は相手を調べる時間は無いから諦めた。だがチームとしての約束事はいくつか作っている。


「そろそろ始めまーす。スタメンの方はピッチに出てください!」


 お互いフォーメーションを取った。こちらボールから試合が始まる。澤野が右サイドに張って、青野がキックオフを俺に落とすというスタート。試合が始まり青野が俺にパス。

それをダイレクトでシュート...のふりをして突っ込んで来た二名をかわす。そのまま中央突破を仕掛けるとゴツい奴が出てきた。


「俺はサッカー部でレギュラーのセンターバックだ。簡単には抜かれんぞ!」


 小物臭が凄いが無視。まずは相手に突っ込んで足を出させたところを抜くつもりだったがなかなか出さない。流石にそこまで軽く無いか...


「ならこうだ!」


 俺はスピード乗ったままヒールリフトをしてゴツいやつの後ろを取り、身体を入れながら前へトラップ。キーパーが前に出てきたので落ち着いてループをしてゴール。


「うおおお!!!!」

「冬馬やべえ!」


 見ていた人達から歓声が上がる。やっぱりこういうときは気持ちいいな。俺は仲間とハイタッチして自陣に戻る。


 相手のキックオフ時に最初に突っ込んできたヤツがこちらを睨む。


「風岡冬馬...逃げるのか?」


 俺らは今バック四のオフェンス1みたいなフォーメーションを取っている。それが気に食わなかったみたいだ。


「俺は"勝ちに来た"それだけ言っておく」

「奇襲が上手く言っただけで調子に乗るなよ!」


 向こうの攻撃が始まる。キックオフで下げたボールを澤野が全速力で追いかける。澤野にはパスコースは切りつつ片方のサイドに追い詰めるようにプレスしてくれと頼んでいた。それを忠実に守ってくれている。


「」

 だが一人で取りきるのは中々難しい。ここは流石と言うべきか、サッカー部が多いらしいD組がペナルティエリア前まで侵入してきた。


「おまえ、守備も上手いのかよ!」

「一芸程度であそこまで啖呵きらないって!」


 相手の選手が俺から逃げるようにサイドにいた選手にパスを出す。それに青野が詰める。


「冬馬だけじゃ無いって言うの!」

「チッ」


 縦をきられており、中に斬り込んで来たら俺が居るみたいな状況だったからか、無理矢理クロスをあげてきた。それを上田が冷静にキャッチし、コーナー辺りのスペースにおもいっきり投げた。


「あいつどこ投げてんだ...って澤野はや!」


 上田がボールを持ったら迷わずコーナーめがけて投げる。そして澤野がダッシュというのは事前に決めていたので、俺もパスを貰える位置に行き、難しい角度だったが、ゴール前に青野がいたので無理矢理シュートを打ってみたら入ってしまった。


「上手すぎだろ...俺」

「自分で言うなよ自称今大会の得点王」


 澤野に普通のツッコミをされた。


 そのままこちら優位な展開で進むが、前半の終わり際に青野が抜かれ、俺がカバーに行ったところをパスで交わされ、その後辻達も奮闘したが、一点返されてしまう。


 前半終了を告げる審判の声は歓声でいまいち聞こえなかった。


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