復讐、しようぜ?

 今日は体育祭前最後の練習日。戦術が固まり、付け焼き刃ではあるが皆少し上手くなってきた気がする。


 だが、辻達がまだあまり乗り気ではない。どうしても体育祭というイベントにやる気が無い人達というのは存在する。でも練習でも結構勝ててるのにここまでやる気を出さないのは何か理由が有るのだろうか?


「なあ辻」

「...なに」

「やっぱり体育祭みたいなイベントはあんまり好きじゃない?」

「あんまり運動得意じゃないし...」


 やっぱりそうか。たぶん自分が目立てるイベントではないと諦めてしまって居るのだろう。そんなこいつを見ていると俺は...


「何かムカつく」

「...え?」

「お前も立派な戦力何だよ。事実何回かシュートブロックしたり、キックもわりと飛ぶし、それでゴールに繋がったりしてるだろ」


 これは本当だ。辻はテニス部で、あまりサッカーに役立てられるものは無いが、クリアの時とか何故か飛ぶ。フォームがいいとかでも無いのに、マジで何でだ。


「でも...強いんだろ?D組って」

「強いって言われてるよな」

「Cだってサッカー部多いって聞いたぞ」

「四人居るらしいな」

「たまたま体育が同じ組があんまり強くないだけで!別に俺らが強いわけじゃ無いんだろ...?」


 俺達みたく、サッカー部や経験者が全く居ないところが有るのなら、多いところが有るのも道理。球技大会で当たるCとDは正直学年トップの強さ。トーナメントならそれぞれ優勝してもおかしく無い。体育委員の元気よ、お前マジでくじ運ねえなあ!


「確かに、体育が同じのBとFはめちゃくちゃ強いわけでは無い。だけどそいつらに俺達は負けてない。1度もな」

「でも!」

「うるさい!でもじゃない!俺達は強い。何故なら俺が居る。澤野青野が居る。上田も居る」


 それにと俺は本心を続けて語る。


「お前らだって居る」

「俺は...そんなんじゃ...」

「腹がたたないか?俺達と当たってくじ運良いー!とか言ってるC組やD組に...せめて引き分けにでもなってくれればなとか言ってくるクラスメイトに」

「あと、お前らに一切期待してない女子達に!」


 俺が一番ムカついてることを最後にあげると辻が食いついた。


「勝ちたく無いか?調子に乗ってる奴らに。見返したく無いか?どうせ無理だと思ってる同級生アホどもに」

「そりゃあ勝ちたいよ...腹立ってるよ...見もしないであいつは駄目だと言ってくる奴らに!」


 こいつも結構熱いところあるな


「それにモテたいだろ?」

「...そりゃもちろん」

「素直で良いな!よし、見下してくるやつらとか、勝手に見放してる奴ら...ついでにCとDとかいう最悪なくじ運してる中村元気に」


「復讐!しようぜ!」

「...最後のは何か違う気がするけれど...」

「何言ってんだ。見下されるのも、見放されるのも全部あいつが悪いだろ!」

 

 辻は顎に手を当て、少し考えこう言った。


「確かに...くじ運が良ければこんなことになってない...かも」

「そう来なくっちゃな。絶対勝とうぜ」

「...うん」


 最初より何倍も明るくなった辻の表情は、何よりも眩しかった。

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