大嫌いな人
-私だって普通の女の子何だよ?
家に帰った後もその言葉がずっと反芻している。ちゃんと人を好きになったのは初めてで、恋した相手は何よりも特別な存在となっていた。
変な話、彼女も俺と同じ人間なのだということを一度たりとも考えたことはなかったのだ。
「同じじゃねえか...」
そうだ、同じだ。俺が嫌っていた、軽蔑していた"内面をみないで判断する"ような人達と。
知ろうともしなかった...勝手に神格化して、思っていたのと違ったらおちこんでる。最低な人間だな。
「でも...やっぱり好きだ」
西野さんともっと話したい。好きな食べ物は何か、趣味は何なのか、何で図書委員になったのか、過去に好きな人はいたのか...言い始めたらキリがない。
俺は彼女の人を上辺でみないところはもちろん好きだ。それに加え、本当に傷つく言葉言わない優しさや、嫌なことは嫌だとハッキリ言ってくれるとこも好きだ。顔もめちゃくちゃ可愛いと思う。もう全部好きだ。俺の心が、身体が、耳が、目が、彼女と会うだけ喜ぶような感覚。
会えただけで嬉しくて、話しただけで楽しくて、視界に入らないだけで寂しくなる。今更になって俺は酷く振って来たことに申し訳無さを感じていた。
このままじゃ終われない。だから俺は西野さんにメッセージを送った。
『あのさ』
すぐに既読が着いた。
『何?』
『球技大会のサッカー、俺本気で勝ちに行くから』
『そう。頑張ってね』
『だから当日、サッカーを...俺を、見に来てくれない?』
既読は着いたが返事は帰ってこない。それから何分たっただろうか...俺はその画面から目を離せなかった。流石にダメかと思い、画面を閉じようとしたら返信が来た。
『わかった』
時刻は21:47分。走りに行くため、着替えを初めた。大嫌いな自分を、好きになるために。
〈西野視点〉
「ズルいよ...」
そんな言い方されて無視できる訳が無い。
彼に傾きかけているこの気持ちを忘れて無かったことにしたかった。彼にとっての"理想"のままでいたかった。
「私が好きになっても、彼は好きで居てくれるのかな」
今までさんざん強がって来たけれど、私はたぶん今、彼のことが気になっている。もちろん恋愛的な意味で。決定打に成ったのは、文化祭で冬馬が逆ナンされていたのを見た時...見てしまった時。
心がチクりとした。今思えば嫉妬だったのだろうか...ていうかそもそも、あのイケメンに好きとか可愛いとか言われ続けて全くなびかない女子なんて居ないでしょ!
「あーもうイライラしてきた!何で私があいつのことでこんな悩まなきゃいけないのよ!」
最初はただただ不気味だった。そこから話すようになって、遊びに行くようにもなって思ったより普通?と思うように。そして文化祭と時は流れ、気付いたら目で追いかけるようになっていた。
「保留しっぱなしの告白の返事も、球技大会でどっちなのかちゃんと決めよう」
もし...もしも万が一、彼のことを好きになってしまったら...今度は自分から...
変なことを考える前に眠りに着いた。彼のことから目を背けるかのように...
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