初めて
まあなんやかんやあって、文化祭一日目となった。俺と西野さん、元気、あやは同じ時間帯の担当となった。クラス40人を8つに分けて、一グループ一時間ずつ担当するという仕組みだ。何か回るより係の方がやりたいという人もいたから1グループ五人でも足りる。俺は呼び込み兼受付、西野さんは受付だけだ。
「楽しみだね」
「あのさ...」
「どうしたの?」
「何で私はあなたと二人で文化祭をまわってるの?」
「俺は悪くないよ?」
「そうだけどさあ...!!」
結論から言うと、あやが無理矢理二人にしたって感じだ。
「俺らの担当は最後だから、あと三時間ぐらい楽しもうね」
「明日は友達とまわるから」
「1/2も西野さんと居れるなんて、素晴らしい文化祭だ」
「冬馬さえ居なければ最高の文化祭なのに...」
何かもう口癖みたくなってる"俺さえ居なければ"発言を聞かなかったことにし、俺達はなんとなくコーヒーカップをやってるクラスに入ることにした。
「俺あんまり三半規管強くないんだよなあ」
「じゃあ全力で回して貰いましょ」
「えぇ...」
流石に自分達でハンドルを回したらカップも回るというシステムは作れなかったらしく、スタッフがカップを回してくれるらしい。
「じゃあはじめまーす」
何か聞き覚えのある曲が流れた。
「梨乃覚悟!」
同じ部活なのかわからんが、女子生徒がおもいっきりカップを回し、いっそう回転が速くなる。それを何人かにされる。やっぱり西野さんは友達多いなあ...
「ねぇ!ちょっと...辞めてよ!」
そう口では言うが、顔と声はすげえ楽しそうだ。目を反らせない...釘付けになっていると、気付いたら終わっていた。
「コーヒーカップって一点を見ていたら目が回らないって言うよね」
「言うけど...それが?」
「西野さんを見てたら目が回らなかった。西野さんってあんな風に笑うんだ。なんかはしゃいでるの新鮮だったなあ...凄くかわいかったよ」
あれ、いつもだったら"きも"だの"うざ"だの言われて呆れられるのに...無視が一番傷つく...
「...あっそ」
そこから縁日行って、購買で文化祭限定の唐揚げ弁当を購入し、三階の渡り廊下で一緒に食べることにした。なんか全然口を聞いてくれない。
「ねぇ...ここまで無視されると俺も傷つくんだけど...なんかした?」
また無視かと思っていたら、口を開いてくれた。
「私も...初めてだった」
「え?」
「あなたが私のこと本気で好きなんだなあって感じたのが」
それは今まで言葉でも行動でも示してきたと思うんだが
「いつもはさ、何か軽いっていうか...こう言ったら喜ぶかなみたいに"考えて"発言されてるような感じがしたんだよね」
「でも、さっき"可愛い"って言ってくれたとき、何の打算もない、思ったことを言っただけみたく感じた。それが嬉しかった」
確かに今までは"好きにさせるには"というのを考えて行動していた気がするな...何も言い返せねえ
「それに、それを言うときに笑ってた。そんな風に笑うんだと思ったのはあなただけじゃ無いのよ」
笑ってたのか...やっぱり西野さんは俺のことをちゃんとみていてくれるな...
「西野さん」
「何?」
「大好きだよ」
「そんなに軽く言わないでよ...」
「挨拶みたいなものだし仕方ない」
「どこの国よ...」
そういえば告白保留されてるんだったな、いつ改めて告白するべき何だろう
「お、西野さんと冬馬じゃん」
「谷じゃん。あと高田さん」
「私をおまけみたく言わないで。こっちが付録だから」
谷が段ボールで作った看板を持っていたので宣伝に来ているのだろう。
「この後私達クラスに来てよ」
「何をやるんだ?」
「カジノ!お金はいらないよ?」
1学年に1つはみるよなあ...カジノ
「あ、梨乃写真撮ろうよ」
「良いよ!」
二人は自撮りを何枚か撮り、何かこそこそ話しだす。西野さんが何か怒ってるような...
「梨乃じゃあね~!」
「うん」
数歩離れたところで谷が「そういえば」と言いながら後ろを向いた。
「お前らは写真撮らなくて良いのか?二人で回るくらいには仲良いんだろ?」
俺はすぐ返事をする。
「じゃあせっかくだし撮ってくれ」
西野さんが口を開くより速く言うことで、断りにくくさせた。
何か言いたげな視線を感じたが、写真は笑顔で撮ってくれた。谷達が行った後でホーム画面に設定しようとしたら「スマホ下に投げるわよ」と言われたので断念した。
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