ご褒美

〈前書き〉ちょっとした誤字を直したため再投稿しました。内容は何も変わって無いです。

以下本編



「試験勉強?早いね、まだ1ヶ月先なのに。」

 俺達の通う学校は年5回定期テストがある。次の一学期期末テストは1ヶ月程先だ。

感覚としては中間が終わったばかり何だよなあ。


「政治・経済が大嫌いなの。これをやるくらいならあなたとデートした方がまし。」

 政治・経済は1くくりにされているが、2科目扱いで、二回試験がある。つまりこの科目が苦手なら二度地獄を味わう羽目になる。


「俺は西野さんほどじゃ無いけど好きだよ。大学も法学部か経済学部に行こうと思えるくらいには。」

「そういえばクラス最高点って言われてたわね。」

「後で先生に聞いたら学年最高だったよ。ちなみに98点。なんなら教えてあげようか?」


 後頭部に手をあてながら苦悶の表情を浮かべる。凄く悩んでいるらしい。

「...教えて」

「喜んで!ちなみに何がわからないの?」


 何がわからないかわからないというレベルでわからないらしいので、経済はインフレデフレ、政治は三権分立から教えて見る。これは今回の範囲では無いが、本人が良くわかってないのに次へ行きたく無いと言うので教えてあげた。


「悔しいけど解りやすい。一問一答みたいな感じでしか覚えて無かったけど、歴史や地理とも絡めると解りやすくなるのね。」

 法律が生まれるのにも理由がある。もちろん経済の理論も。


「風岡は政治と経済ならどっちが好きなの?」

「政治かな。」

 政治分野は文字通りの政治関連の学習もするが、法律系がメインだ。

「理由は?」

「人は平等じゃないし価値観も倫理観も全く違う。でも法のもとでは必ず平等というところに感動を覚えた。自分がしちゃいけないことを決めてくれるのはありがたいよ」

「相変わらず楽しくない生き方を、楽しそうに生きるんだね。」


 そこから図書委員以外誰も来ない図書室で予鈴がなるまで勉強して教室に向かった。


「西野さんが良い点取れたらご褒美がほしいな~」

「...こうなりそうだからあなたに頼みたくなかったのよ...聞くだけ聞いてあげる。」


「デートしてよ。今度は二人で」

「はあ...ちなみにどこ行くの?」

「そりゃあもう夏だしね、もちろん...どこ行こうか?」

 普段ならその場の空気に合わせて通りやすそうな提案をするのだが、西野さんの前だと気が狂う。何も出てこない。


「まあ良いわ。一回だけしてあげる。その代わり...」

 少し顔を近付けてこう言った。


「クラスで一位取れなきゃ行かないからね!」

「それは無理だよ西野さん。だって一位を取るのは俺だから。」

「そこはクラス一位で満足なの?とか言うところでしょ。じゃあ80点は越えないと行かない。」

「80点で満足なの?」

 初めて俺との会話で西野さんが笑ってくれた気がする...感動


「どこ行くかも考えといてよ。予め言っておくと、海とかプールは無しだから。」

「西野さんに嫌われることをコストに西野さんの水着を見るのはコスパ悪いね。」


 正直めちゃくちゃ見たくは有るけど、嫌いでは無いの現状を自分から下げるのは流石に出来ない。





~~~テスト返し~~~


「平均点は62.8点、クラス最高点は風岡の98点。ちなみに学年最高な。」


 どうしても百点は取れないんだよなあ......


 昼休みになり図書室に行くと西野さんがカウンターに座っていた。何か言いたそうな顔だ。


「...ありがとう。あなたのおかげで良い点がとれたわ」


 机の上に出された解答用紙には94点とかかれていた。


「まあでも?合計点は私の勝ちだけどね」

 政治・経済以外の科目では西野さんが最高点ということで呼ばれていた。つまり彼女がクラス一位ということだろう。


「流石だね。ところでご褒美のことだけれど...」

「そうだったね、で?どこ行くか決めたの?」

「もちろん。俺が政治・経済で二点を落としたのはそれを考えてたからだし」


 それが無ければ百点を取れていた筈だ。うん、そのせいだ。必ず。


「俺が西野さんと行きたいのは夏祭り」


「考えた割には無難なのね。日時は後で連絡して決めよ。」


 あと少しで始まる夏休みに過去最大の期待を持ちながら図書委員の仕事を励んだ。

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