俺も俺が何者かわからない
ご飯も食べ終わって帰ることになり、今は駅へと向かっている。ていうか谷と全然話してないな。
「梨乃!楽しかったね!」
やたら高いテンションで高田が西野さんに話し掛ける。
「楽しかったよね!」
あの、こっちを見るの辞めてくれません?まるで俺さえ居なければといってるかのようじゃないか!
「なあ風岡、連絡先交換しようぜ。今まであんまり話したこと無かったけど、仲良くしようぜ」
良いやつだなあ...俺はQRコードを差し出し交換した。
「あ、私とも交換しよ」
高田と空気を読んだ西野さんも交換する。
何回聞いても教えてくれなかったから今めちゃくちゃ驚いている。そして物凄く嬉しい。
「なにニヤニヤしてーんの?」
高田に煽られてしまう。
「可愛い女子二人と連絡先交換出来て嬉しいんじゃない?」
「風岡って思ったよりうぶなんだな。可愛い女子の連絡先の20や30は知っているもんだと思ってた」
「そんなに嬉しかったんだね。この美少女が夜電話掛けてあげようか?」
四者四様の弄り方。ここまで一方的にされると何か面白い。
「可愛い女の子と連絡先交換出来て嬉しいという気持ちも8割ぐらい有るけどさ、なんか距離が近いようで遠かった図書委員のメンツと少し仲良くなれたのが嬉しかったんだよ。」
「読点の前を削ったら百点の答えだったな」
風岡がそういうと皆が笑い合う。今俺がしている笑顔は偽物なのだろうか?
駅につき、途中の乗り換えで谷と二人になった。
「風岡って西野さんに嫌われてるの?」
「何でそう思ったの?」
「西野さんって誰にでも優しいみたいなイメージ有るのに、一度風岡に対して塩対応取ってたとこを見たことあってさ」
人には見られないようにかなり気を使っていたんだが、バレてしまったみたいだな。
「本人曰く、"嫌いでは無いけど気持ち悪いとは思ってる"らしい」
「なるほどねー。でも少し解る。俺も風岡が自分以外信用してなさそうに見えるところは何だかなって思うよ。」
図書委員は鋭い人が多いのか?
それ以降は会話をせずに電車を降りた。
家に帰ってご飯風呂を食べ終わった時に高田から電話がかかってきた。
「本当に電話かけてくるとは思わなかったよ」
「美少女から電話かかってきて嬉しい?」
「うん、この上なく嬉しいよ」
「ありがと。電話したのは聞きたいことがあったから何だよね。」
もしかしてこいつも何かを察したとか言わないよな...
「西野梨乃を好きで居るのは楽?」
意味がわからない。西野梨乃が好き?なら解るが、楽?とはどういうことなのか。
「君は梨乃を好きになったから今恋をしているの?それとも恋をしてるから梨乃が好きなの?」
「意味がわからない。その2つはイコールで結ばれる物だよ」
「君の場合に限り違うでしょ」
その声はどこか怒っているように感じた。
「視界の端に捉えただけでわかった。風岡君は昔の私と似てる。理想の自分を自分で作り、それを演じている。」
「今は違うんだね」
「そうだよ。その生き方は疲れるでしょ?私は友達多くなくても良い。好きな人とだけ関われれば良い。そう思うようになってからは気が楽だったよ。」
いまいち話が見えてこない。ようするに高田は同族嫌悪をしているということで良いのかな
「話を戻すよ。つまり私は、"恋をしている風岡冬馬"を演じるために、絶対あなたのことを好きにならない梨乃を利用しているのか、それともあなたの生き方とは関係無く恋に落ちてしまったのかを聞いてるんだよ」
前者なら許さないとも言われる。
「俺にとって恋は落とし穴見たく、落ちてみないとそこに有ったということがわからない物なんだ。恋をしてみて俺は思った。」
これを聞いて満足したのかはいまいちわからないが、しばらくの沈黙の後に電話を切られた。
「にしても厄介なメンツだな、図書委員は」
これからの未来を暗示しているかのように月が隠れた
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