そんな君だからこそ

「で、どこからがあなたの策略なの?」

何度目なのかわからないため息をつきながら西野さんが聞いてくる。


「何も仕組んでないよ。2日前の昼休みのこと思い出して見なよ。」


 2日前の昼休み、つまり俺と西野さんが図書委員会の担当だった日のことだ。





~~~2日前の昼休み、図書室にて~~~


「ねぇねぇ梨乃」


 同じ曜日担当の高田音葉が西野さんに話し掛ける。


「どうしたの?音葉」

「遊びに行きたいね!」

「突然だね...でもそうね!そのうち行きたい」


 俺への対応との温度差を感じながら、俺はもう一人の図書委員の谷冬馬と返却された本を棚に返しに行く。


「そうだよね!やっぱり行きたいよね!

明後日の土曜日どう?」

「空いてるよ。どこ行こうか」

「ボウリングとかどう?」

「良いね!じゃあ駅前集合ね!」

「一緒に遊びに行くの初めてだね」


 西野さんが急にきょとんとし始める。


「前にご飯とかカラオケ行ったでしょ?」

「何言ってるの?」


 今度は高田さんが首を傾げる。


「四人で!行くんだよ?」


「えぇ!?」


~~~2日後~~~


「俺の意志が介入する余地無かったと思うけど...」


「四人でここに来るのはまだわかる。でも私達二人が一緒で、残り二人がはぐれるってどういうことなの?」


 四人でボウリングに行った。そこまでは良かったのだ。委員会が同じといっても、高田さん、谷とは実はあまり話したことが無かったが、結構楽しめた。


 問題はそこから。そこは服や雑貨、飲食店などが複合されてる結構でかいショッピングモールだ。昼御飯を食べることにしたら何故かはぐれた。


「何か梨乃電話繋がらないし、風岡も谷くんの連絡先知らないんでしょ?」


 首を縦に振った瞬間に舌打ちされる。

「あなたさえ居なければ"楽しかったね!"を本心で言えるのに...」


 一度はぐれて連絡する手段が無いとなると、この人混みだし見付けるのは難しい。

さてどうするか


「俺も流石にこの状況を喜べないな。夢にまで見たシチュエーションでは有るんだけどさ」


 てか俺嫌われ過ぎじゃね?何か直接的にした覚え無いんだが


「ねえ西野さん、俺のどこが嫌い?」


「まるで恋人が自分の好きなところをきくかのように聞かないでよ...

正直に言うと風岡のことをきらいではないの。でも、気持ち悪いとは思ってる。」


 気持ち悪いは彼女との初会話でも言われた。どういう意図なのかはいまいちわからなかったが


「風岡はさ、何というか常に求められてる自分を演じてる感じがするんだよ」

「鋭いね。西野さんだから言うけど、人と話すときに本心で話すことは全く無いよ。」

「私への気持ちも?」


 それだけは本心だと伝えると呆れられる。


「何か凄く生きずらそうだし、自分でもそれを理解した上でその道を選んでるのが凄く不気味。何で自分からその道を選ぶの?」


 俺は少し考えてから答える。 


「決めてるのは俺じゃない。周りが求めてる俺を、無意識で演じてるのが風岡相馬という人間何だよ。」


「それって虚しいね。一緒に心から笑い合えない人を絶対私は好きに成らないからね。」


「君の前では求められる自分を演じることが出来ないのは何故なんだろうね」


 むしされたところでたまたま谷達が見えたので、ダッシュで近付きなんとか合流できた。


 今の俺の生き方を、気持ち悪いと言ってくれる彼女だから俺は好きになった。彼女じゃなくちゃいけないのだ。

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