第15話 それでも

「ドサッ!」

瞬間、俺の腕に重力がのしかかる

........ごめん、シリアスな雰囲気のとこ悪いんだけど

(軽い)

めっちゃ軽いのよ、思ってた3倍は軽かった........

こういうのって普通

支えられずに倒れ込むんだろうけど

軽過ぎて普通に支えられてんのよ

そのせいでお姫様抱っこみたいになってるし........

(てか、この状況どうすんの?)

俺の頭はいつしか正常に回り始めており、

俺は口を開いた。

「大丈夫........ですか?」

「........」

俺の問に、彼女は口を開かない

沈黙が辺りを埋めつくした。

(めっちゃ気まずい!なんか言ってくれ!)

そんな空気はお構い無しに、

俺はいつも通りの思考を巡らせる。

「ありがとう」

俺の問いから約10秒後、彼女は俺の問いに答えた。

「今度から気をつけるわ」

「あ、あぁ.......そうして下さい」

彼女は、感謝を述べた後『気をつける』とだけ

言って立ち去っていった。

(クールだなぁ)

俺は、知らない。なんせ彼女と初対面だったから

彼女の感情なんて知らない........

彼女がどのような人間かも知らない........

彼女が俺の思ったことと"真逆"なんて知らないんだ

この時の俺は、彼女の頬が紅く染まっているのを

知らないんだから。........まだ、ね。




「なんか疲れた顔してんね」

「お前と居ると安心するよ、悠」

なんだか悠と話すのは久しぶりな気がする

........まぁ理由は1つなんだけど。

「で、どした。

購買でお気に入りのパンでも売り切れてたか?」

お前の中では俺はパンで、

一喜一憂する奴だと思われてんの?

(やっぱ、コイツは親友じゃねぇよ)

何食わぬ顔で親友ズラしているが、

悩みの理由に1ミリも掠ってないのどうなん?

「........」

「嘘!嘘だって!」

俺がジト目で見つめると、悠は慌てて弁明した

(一応、ふざけてた自覚はあったんだな)

「空気を和ませるジョークだよ」

「空気を最悪にするジョークの間違いだろ」

「そうとも言う」

「終わってんな........」

でも、俺の疲れは消えていた

なんやかんやで気を遣えるのかもしれない。

(重い空気にしないようにしてくれたのか........?)

「何があったんだよ」

「階段から美少女が落ちてきた」

「ちょっと待って?」

悠の優男(ヒモ男みたい)な表情は消し飛んでいた

「動揺し過ぎだろ」

「アレ聞いて動揺しない奴なんて居ない」

「お前は人類を舐め過ぎだ」

「俺、人類そのものなんだが?」

え?悠って人間だったのか?

確かにそこそこ頭いいと思っていたが........

(流石に冗談)

どうしよう、これでさ

『ほぅ?我の正体を見抜くとは!』

みたいなバトルアニメみたいな展開になったら

無いな、悠がそんなこと出来るとは思わんし。

「なんか罵倒されてね?俺」

「気の所為だ」

「そっかぁ」

なんて脳味噌が溶けた応答だ

こんな奴が正体隠す系の強キャラになれる訳ねぇ。

(あれ?何してたんだっけ俺?)

「じゃねぇよ!美少女が落ちてくるって何!?」

「かくかくしかじか」

「現実でやる奴初めて見たよ」

大丈夫だ、俺も初めて言った

そして同時に理解した........。

(ただの時間の無駄)

「七瀬....和奏?さんだっけ?を

階段から落ちそうな所を助けた」

「ラノベの主人公かてめぇ」

「現実見ろ」

「辛辣過ぎる」

全く........俺は真剣だというのに(ふざけてるだろ)

ん?なんか不思議な力でディスられた気が、

神か........神のせいだな、取り敢えずそうしよう。

「え?マジ?」

「本気と書いてマジ」

「まぁなんて言うか、羨ましいくたばれ」

「慰める気1ミリも無くて草」

友人が疲れ果てているというのに

慰めるどころか罵倒するなんて酷いものである。

「まぁ、一応お疲れ」

「早く帰って寝てぇ........」

「おいおい、この後50メートル測定だろ?」

「........オワタ」

「忘れてたなお前。」

もう疲れたんだよ!俺はさぁ!助けて神様!

俺は都合のいい時だけ、神を頼るのだった。

"未来に前例はない迷ったら新しい道を選べ"である


あとがき

ご愛読頂きありがとうございます

久しぶりの悠との会話の回でした。

七瀬さんの件はねぇ........

とてもサラッと終わらせてしまったんですけど!

これからです!体育祭編は

七瀬さんにめっちゃ焦点当てると思うので

勿論、他ヒロインも活躍させていきます!

これからも応援よろしくお願いします









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