第14話 これは彼女の物語

これは私、七瀬和奏(ななせ わかな)の物語

『彼』と出逢う前の、物語。




「はぁ.....」

私はそうため息をついた

何も変わらない、私の日常........

それらを否定したい訳ではない

この日常に楽しさだって感じている。

でも、それでも........

「なんか起こんないかなぁ」

変化を望んでしまうのが人間というものだろう

少なくとも私は、変化を望む。

(まぁ、意味なんて無いけど)

何年間........この日常を過ごして来たと思ってるんだ

変わらないよ、残念だけどね。


彼女の日常が劇的に変化するまで、

『彼』と出逢うまで........あと"1年"。




「なんっも、変わんない!」

中学の頃は大人ぶって『変わらないよ』

なんて思ってたけど........。

「変わってよ!?」

普通、日常が劇的に変化するフラグでしょ!

「まぁ〜た、なんか言ってるよ」

「何も変わらないこの日常が悪い」

「平和で良いと思うけどなぁ........」

そういう彼女は、南 穂乃香(みなみ ほのか)

中学の頃からの友人である。

「高校でも、こんな日常が変わらないなんて........」

「名門の『星羅学園』だって

劇的に何が変わる訳無いでしょ........」

全く........夢がない奴である

期待ぐらいさせて貰いたいものだ。

「てか、和奏は何を望んでんの?

白馬の王子様〜って感じじゃないっしょ」

「まぁ........そうだね」

『アレ』を経験しておいて、

今更、男子なんかに期待はしていない。

「この話やめよ、暗くなるわ」

「そうだね」

穂乃香の配慮によって、私たちの会話は終了した

(気の利く友人だこと........)

正直、あのことを思い出したくない

考えることすらも脳が拒絶する。

(早く教室行こ)

そう思い、私は歩み始めた

何も変わらない廊下を踏みしめて。


『彼』と出逢うまで........あと"1時間"。




「ごめん、穂乃香........この後ちょっと」

「事情は分かってるって〜何年一緒に居んのよ」

「ありがと」

「ねぇ........和奏、無理しなくていいんだよ?」

そう言う穂乃香の顔は、心配の感情で満ちていた

「慣れてるから、大丈夫だよ」

「なら........良いんだけど」

このやり取りである程度察しはつくと思うが

これから私は『告白』される。

(時間の無駄でしかない........)

私に告白してくる男子の顔なんて知らないし、

興味も無い、というか『好き』って何?

数年付き合って、結局別れるのが好きなの?

相手を独占したいと思ったらそれは好きなの?

「くだらない」

思わずそう口に出してしまう

憂鬱な気分で階段を降りていると........

「へっ?」

瞬間、私の足から足場が消える

脳が否定したくなる現象を、

現実が私に突き付けてくる........。

"階段から足を滑らせた"

(どうしよう......どうしよう、どうしよう)

私の頭は正常に回ってなどくれなかった

受け入れ難い現実に、何もすることが出来ない。

(非日常を望んだ罰かな........)

過去の言動を後悔し、

骨折とかしないと良いなぁ等と思い目を閉じた。

失明してしまいそうな現実から、目を逸らすように

『ドサッ!』


『彼』と出逢うまで........あと――――






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