第3話 安心と驚愕

(何で?本当に何で!?いやいや、おかしくない?)

俺の頭の中は、困惑で満たされていた。

最初はバグを疑ったが、

『バグなんて起こるのか?』と

思い始めてきてしまっている。

非常に受け入れ難い現実である......

「んじゃ、今日はここまでなー。」

そこで、やっと俺は教室の前方に目を向ける。

この時俺は思った......やっちまったな...と

悠に後で飯でも奢り、ノートを見せてもらおう。

授業を丸々無に帰したというのに、

やっぱり俺の頭は、朝日奈の好感度のことで

頭がいっぱいだった。

「零っ!今日は学食かい?それとも購買かい?」

「学食...、今日は奢ってやる。理由は後でな」

「え?俺なんかしたっけ?....まぁ良いやラッキー」

......それで良いのか?果たしてコイツは

将来は、騙されていそうで少し心配である。

「んで、今日は何で学食?だいたい購買じゃん?」

「ただの気分だよ。」

まぁ、半分は嘘。

本当に今日は学食の気分だったが、

それと他の生徒の好感度チェックである。

...そうして、食堂に向かって歩いていると、

「ん、やっぱり可愛いぃ〜」

「は?急にどうしたんだ?」

俺の友人が壊れてしまったかもしれない、

前々からおかしいと思ってはいたが......。

「七瀬和奏(ななせ わかな)!学園三大美少女の!」

「へぇ、そうだっけ。」

いちいち、そんなことは覚えていない

朝日奈は辛うじて同じクラスだから

少し知っていただけだ。

(んで?好感度の方は......)

そうして、彼女が俺の視界を独占する。

......まぁ、学園三大美少女というのも納得である

「32...ね。」

「お前の方が、急に何!?」

好感度が、とても低くて安心である。

やっぱり朝日奈がおかしいだけで、

他は正常だな。......じゃあ、何で朝日奈だけ?

..辞めよう、とてつもなく面倒臭くなる気がする。

「いや、なんでもない。早く食堂行こう」

「お、おう......やっぱ今日ちょっとおかしいな。」

「どこがだ?ここまで正常な人間は居ないぞ?」

「平常運転だな、安心したよ。」

そんなくだらないことを話しながら、

俺たちは食堂に到着するのだった.........。




「今日、何で急に奢ってくれたん?」

「授業の内容、完全に聞き逃したんだよ......」

「あぁ〜ね、ノート借りたい訳だ。」

「正解。」

俺の友人が察しが良くて助かるね

まぁ....この出費は、次の反省としよう。

「零っ君!」

「何ですか......夜桜先輩。」

俺の目の前に映る美少女は、

夜桜美月(よざくら みつき)

俺らの1つ上で、先輩である。

(好感度は...71ね。......何か高くね!?)

いや平静を装え、全力でポーカーフェイスだ。

「もう...美月先輩で良いのに〜」

「その取って付けたようなキャラ、辞めて下さい」

「えぇ〜なんのことか分かんないなぁ?」

......この先輩とは、中学から関わりがあるのだが

中学ではこんな風では無かったというのに。

「ごめんね?零君借りてくね?」

「ぜっ、全然大丈夫ですっ!」

...テンパりまくっている、まぁ仕方ない

もう皆さんお察しだろうが

夜桜先輩も、学園三大美少女の1人である。

(悠の熱弁による説明。先輩癖なんだろう、悠は)

「拒否権は?」

「ある訳なくない?」

「はい、知ってました。」

毎回、俺をこんな風に身勝手に連れて行く

しかし根が真面目な為、

申し訳なさそうなのがバレバレである。

そうして、彼女に連れられ

席を移動する羽目になったのであった......

「んで、今回は何の用です?」

「嫌だなぁ...後輩とお話したいだけだよ。」

「さっさと本題に入んないと、帰りますよ」

「......ごめんて。」

しょんぼりさせてしまった、

その顔をしてくるのはズルだと思う。

「...大丈夫です、で?何があったんですか?」

「君、私と契約して偽彼氏になってよ」

時間が、止まった。

本当に時間が止まった訳では無いが

間違いなく、俺は時が止まったと錯覚した。

「冗談ですよね?」

俺は一縷の望みに縋り、

夜桜先輩に問いを投げかけた。

「え?めっちゃガチだよ?」

......詰んだ。断っても、承諾しても地獄でしかない

全てを投げ出して、逃走したいくらいだ。

「何故、急に?」

「えぇっとね、私が見栄張ったから!」

「.........くたばれ。」

俺の考えた時間を返して欲しい

本当に意味の無い時間だった。

「助けてよぉ!......もう後戻り出来ないんだよ!」

「先輩が悪いだけじゃないですか!?」

「そうだよ!でも、前みたく助けて下さい!」

うぅ〜ん、見事なまでの開き直りだ

前回で、一切として反省していない。

「まぁ......一応考えておきます。」

「え?マジで?やったぁ!言ってみるもんだね」

「やると言った訳では無いです。」

1度、彼女を助けた責任がある

途中で投げ出す訳にはいかないしな。

「どうせ、ピアノの先生に何か言われたんでしょ」

「そうなの!」

夜桜先輩は、ピアノを習っている

それも、コンクールで入賞するレベルで。

先輩の話によると、ピアノの先生に、

『恋の感情が乗ってないのよ!

どうせ彼氏居ないんでしょ?』という発言に

先輩は見事なまでに言い返した....という訳らしい。

「相変わらず、個性的な先生ですよね......」

「なんやかんや好きなんだけどね。」

そう、夜桜先輩にピアノを教えている先生は

とても有名なのだが......少しだけ個性的なのだ。

「恋の感情って何!?分かんないよ!」

「先生の言ってること、正解じゃないですか。」

「返す言葉がないね!」

そんなに清々しい声で言わないで頂きたい。

「というか、何で俺なんです?」

「うぅ〜ん?零君のこと好きだから。」

「ふぅ〜ん、そうなんでs」

ちょっと待て、この人は今なんて言った?

『零君のことが好きだから』

レイクンノコトガ、スキダカラ......

いや、理解したほうが分かんねぇよ!

「先輩?冗談ですよね?」

「ん、そうだよ?冗談」

......はいはい、知ってたよ

仮にも、中学が同じだったんだぞ?

こんなの分かるに決まってるだろう。

「顔、赤くなってるよ?」

「もう夏ですね。」

「ふふっ、そういうことにしておく〜」

"愛することとは、ほとんど信じることである"


あとがき

今回で、一通りヒロインは出し終わりましたね

朝日奈雫、七瀬和奏、夜桜美月です。

七瀬和奏の零に対する好感度は、

32で、殆どの関わりがありません。

なのにここまで低いのは、

和奏が男子そのものを好きでは無いからです

『誰だっけ?君......』くらいの印象です

夜桜美月の零に対する好感度は、

71で、中学から関わりがあります。

ここまで高い理由は、

美月が"ある時"に助けられたからです。

(今回も少し話に出てました)

『信頼出来る、男子の後輩っ!』くらいの印象です

ここまでご愛読ありがとうございます。

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