第4話 リア姉とレオ兄

 私はアウレリア・レーヴェント。17歳よ。弟達からはリア姉って呼ばれているの。

 父似だと言われる、サラサラな金髪とダークブルーの瞳が自慢よ。

 末っ子が刺繍をしてくれたリボンでポニーテールにしているの。可愛いでしょう?

 両親が亡くなって、叔父夫婦に家を追い出されてからはマリーにお世話になっているわ。

 学園も退学したし、幼い頃からの婚約者にも婚約を解消されたわ。

 でも、そんな事どうでも良いのよ。いえ、良くないんだろうけど。退屈だったから良いのよ。

 その元婚約者のお邸へ奉公に出る話もあったのだけど、断って直ぐ下の弟レオと2人で冒険者になったの。

 だって、嫌じゃない? 何が悲しくて、元婚約者の家で働かないといけないのよ。


 私は、お父様から教わっていたから剣術は得意なのよ。身体を動かす事も好きなの。

 心の中では、何を考えているのか分からない様な貴族に仕えるよりずっと良いわ。

 何より、弟達と離れたくなかったの。これ以上、家族がバラバラになるのは嫌だったのよ。

 私は伯爵家を継ぎたかった。直ぐ下の弟がもう少し大きくなるまでの、ほんの数年でいいのよ。その為にお父様から色々教わっていたわ。だから、私が継ぎます! て、訴えたのよ。

 領地にだって何度も一緒に出掛けていた。もう顔見知りの人達だっているの。

 なのに! いつかはあの叔父夫婦から家や爵位も奪い返してやるのが私の野望よ。

 

 今日もマリーの作ってくれた、お弁当を持って冒険者ギルドにやって来た。今日はピカも一緒なの。

 レオと2人で、受付を済ませる。ピカはギルドの受付嬢にも人気なのよ。


「今日はピカちゃんが一緒なのですね」

「そうよ、沢山狩ってくるわね」

「わふ」

「お気をつけて」


 今日はダンジョンではなくて、森で魔獣狩りをする予定よ。だからピカも一緒なの。

 ピカはなんでも沢山収納してくれるから、狩りをする時にはいつも連れてきている。その上、戦力になるもの。強いのよ。


「姉上、あまり深い場所は駄目ですよ」

「どうしてよ。ある程度の場所まで行かなきゃ」

「危険です」

「大丈夫よ。ニコやロロがお肉を待っているわ」

「アハハハ、確かに。でも、無理は駄目ですよ」

「分かっているわよ」


 私と、直ぐ下の弟はDランクの冒険者なの。Fから始まるからたった1年でDランクなら上等よ。

 行き場の無くなった私達4人を、何も言わずに引き取ってくれたマリー。少しでも生活費の足しになるようにと2人で頑張ったもの。

 今日も頑張るわよ! ガンガン魔獣を狩って、可愛い弟達の為にお肉を沢山持って帰るのよ!

 

◇◇◇


 僕は、レオナルト・レーヴェント。15歳。両親が亡くなった時に、姉と一緒に通っていた学園を退学した。

 それは別に構わないんだ。だって僕には学園は退屈だったから。何故なら、もう最終学年で教わる範囲まで勉強は終わっていたんだ。

 来年には、飛び級の試験を受けようと母と相談していた位なんだ。早く卒業して、父の手伝いをしたかったんだ。


 僕は母似だと言われている。母と同じ藍色の髪にラベンダー色の瞳だからだと思う。性格も似ているかも知れない。

 母はいつも冷静で、優しく微笑んでいる人だった。僕も、そうなれたらいいなぁと思う。

 姉と一緒に冒険者をする様になってから、御守りだと言って末の弟が姉と色違いのリボンをくれた。それで髪を結んでいる。

 僕は知っているんだ。このリボンが普通ではない事を。

 僕は下の弟2人に勉強を教えている。末っ子には魔法やポーション作りもだ。

 まだ3歳だというのに、この末っ子の才能は素晴らしい。教えた以上のものを、いつの間にか身につけている。リボンの刺繍もそうだ。

 

「れおにいはだいじょぶらけど、りあねえは心配なのら」


 と、辿々しい話し方で俺に渡してきた。


「ロロ、御守りなの?」

「うん。ちょっといやいやとかわかる」

「そう、有難う。大切にするよ」

「うん」


 いつの間に付与なんて覚えたんだ? きっとこのリボンには、防御の効果でも付与してあるのだろう。この末っ子は、1番才能があると僕は思っている。

 姉は良く言うと、何にでも熱くて全力なんだ。猪突猛進タイプだ。

 そんな姉を見て育ったからか、僕はどうしても物事を一歩引いて見たり、物事の裏側を考えてしまう。慎重派なんだ。冷静でいようとも意識している。

 魔獣と戦う時だってそうだ。姉は真っ先に正面から剣を振り翳して突っ込んで行く。だから、僕は姉の背中を守るんだ。

 僕も姉と一緒に父から色々教わった。僕は剣より槍や弓の方が好きだった。だって槍はリーチが長い。弓は遠距離攻撃ができる。

 僕は僕なりにみんなを守りたいんだ。その為に魔法も頑張った。幸い僕には適正があった。

 姉は火属性魔法で火力のゴリ押しなのに対し、僕は風、水、土の3属性を操る。風属性魔法を応用した索敵が得意だ。


 今日も姉は張り切って森に向かっている。

 いつの間にかロロのそばにいた大きな犬(?)のピカも一緒だ。


「ぴか。わんわん」


 て、ロロは言っていた。姉はそのまんま信じたみたいだけど、絶対にワンちゃんなんかじゃない。

 どこの世界に収納スキルや、魔法を使えるワンちゃんがいるんだよ。

 それに両親が亡くなって、家を出て行く時に突然ロロのそばにいたんだ。どこから入ってきたんだよ。

 そのピカの、収納スキルのお陰でどれだけ助かったことか。僕達とマリーだけだと持ち出せなかった量をどんどん収納してくれた。

 僕達が持ち出した物を売ったら、思いもしない金額になった。これで、暫くは安心だ。

 それも、ピカがいなかったら持ち出せなかったんだ。

 どうしてロロの側にいたのか分からないけど、ピカのお陰で助かっている。

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