正体

 僕の業火を食らい、完全にその身を灰と変えてもなお、さも当然のように再生してきた魔物。


「えっ!?なんでっ?」


 そんな存在を前にしてクルスたち含め、多くの冒険者たちが困惑の表情を浮かべる。


「行けるかしら?」


「少し、時間はかかるだろうけど問題なく」


 そんな中で、僕とカターナさんは素早く自分たちのやるべきことを理解しあって確認を終える。


「じゃあ、任せたわ」


 再び行動を開始した魔物の相手をするべくカターナさんが剣をもって突撃を開始。

 自分の元に群がってくる大量の触手をすべて切り捨て、その本体へと次々と攻撃を加えていく。

 カターナさんは非常に強い力を持った実力者だ。

 だが、それでもすべての触手が彼女を狙うわけもなく、彼女がすべての触手を打ち落とせるわけではない。

 

「お前ら、僕の守護をお願い」


 僕は自分の元にやってくる触手の処理をリスタたちの方に任せて魔法を発動させていく。


「はっ!?いきなりっ!?」


「了解しました」


「わかったよ!」


 何だかんだ言いながら、クルスの方も合わせ、三人が僕の守護のために行動を開始させる。


「……んっ」

 

 その間、僕は魔法でもってここら一帯の探知を始めていく。

 森の中にそびえたっている山なりの魔物が邪魔していることもあって、探知が中々うまくいかないのだが……。


「これか?」


 山なりの魔物。

 だが、これはあくまでその魔物の本体ではなかった。

 あのデカいのはあくまで、別の魔物が魔法によって顕現させている魔法物体でしかない。

 その本体、魔物は別のところにいる。


「……これっぽいな」


 そして、その本体を僕はしっかりと魔法で見つけてみせていた。


「……普通につぶせるか?」


 探知魔法を発動したまま、僕は別の魔法の準備を始める。


「えっ?何?」


「いや、ワンチャン普通に倒せそうだなって思って」


 魔法の発動。

 そのために魔力を高ぶらせた僕を前にして驚きと疑問の声をクルスが上げたのに対して、こちらが答えたとの同時に。

 僕は魔法を発動。


「黒点地変」


 遥か上空。

 そこにぽっかりと黒い点が浮かびあがると共に強力な吸引力を発揮。

 上空の黒点が急速に地面を吸収して一つの大きな土くれへとその姿を変えていく。


「わわっ!?」


「こ、ここまでっ!?」


 僕は驚きながらも対応できているクルスとカターナさんの二人を除いた全員が飛ばされないように結界で守りながら魔法を継続。

 どんどんと森の地表を剥いでいく。


「見えた」

 

 その果てで、この地下に何重にも張り巡らされた強固な半透明な結界の中にいた相手を発見する。

 あれがあの、すでに黒点に呑み込まれた山なりの魔物を魔法で生み出していた張本人である。


「普通に人じゃないか」


 その相手。

 それは魔物ではなく、まごうことなき人であった。


「とりあえず捕らえるか」


 魔道具等も駆使して何重にも張り巡らされている強固な結界を破るのは容易じゃない。


「封印」


 ということで、僕は地下に埋まっていた結界ごと封印術を施して山なりの魔物を生み出していた人物を捕らえるのだった。

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