規格外
街の近くにある大きな森林。
そこに規格外の魔物が出たとの報告を聞いた僕は婚期についてうだうだと悩んでいたカターナさんと共に現地へと訪れていた。
「わぁ……規格外」
森林の方に着くなりすぐ。
僕は冒険者ギルドへと飛び込んできた男が規格外であると告げた理由を理解する。
「……これは、すごいわね」
森林に現れた魔物が規格外と呼ばれた理由。
それはその巨躯にある。
自分たちの前にいる魔物の巨体はまさしく規格外であり、山もかくやというほどである。
「もう何がどうなっているのかもイマイチわからないね」
「そうね」
山のような巨体を持つ魔物の全容をとらえることはかなり難しい。
というのも、その魔物は何とも不気味で形容しがたいものであり、至るところに器官が浮かび上がるゲル状の物体であり、どれが顔で手足なのか。
まるかわからなかった。
「─────」
「……うるさっ」
そんな訳のわからない魔物は聞き取れない金切声のようなものを上げており、かなり不快であった。
「おらぁっ!気張れやぁ!お前らぁっ!こんなところで止まっているんじゃねぇぞぉっ!」
そんな魔物は体から細々と伸びる触手をぶんぶん振って戦うという脳筋スタイルであった。
それを相手する冒険者たち。
その中心には僕の奴隷であるクルスの姿があった。
「やっぱりあの子はガッツあるわねぇー。奴隷になる前からあの子の能力の高さは認めていたけど」
「そうだよね。クルスってば普段がゴミカスな癖にしっかりと実力だけはあるんだよ」
冒険者たちをまとめ上げるべく声を張り上げながら、永遠と再生して振るわれ続けている魔物の触手をさばき続けているクルスを見ながら僕とカターナさんは暢気な声を上げる。
「それで?あれが本体だと思う?」
「いや、違うわね。あれを生命とは思えないわね」
「反応的にはそうだよねー」
見た目からも生きている存在であるとは思いたくない化け物であるが、その本質、魂の方からも生きている存在だとは感じ取れなかった。
恐らく、これは何かによって作れた存在か、何かであろう。
「でも、それでもやはりこれだけの巨体となると、純粋にわたしたちの方が図り取れていない可能性もあるかもしれないわ」
「そうかな?」
僕は自分の隣に立つカターナさんの言葉に疑問で返す。
間違いなくこいつは普通の存在だとは思えないけど。
「なら、試してみる?」
「……どうやって?」
「燃やして」
カターナさんの言葉に対して軽く答えた僕は迷いのない足取りで魔物と真正面から相対しているクルスたちの前に立つ。
「おわっ!?いたのかよ!」
「ご主人様っ!」
「んなっ!?ご主人様がどうしてこんなところにいるのですかっ!?」
「はいはーい。下がってねー」
僕は自分の方に向けられる奴隷たちの言葉を無視して強引に彼女たちを含め、冒険者全員を一様に下げていく。
「ふぅー」
その後、僕は自身の魔力を高めて魔法の発動の準備を始めていく。
「天与奉火」
言葉と共に僕は指パッチンを一つ。
「───っ!?」
それをトリガーとして発動した僕の魔法が自身の目の前にいる山ほどの魔物を一瞬で業火へと包み込んでしまうのだった。
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