凶報
既に僕の魔道具店の制度。
魔道具によって自動化された店舗スタイルにはもう常連のお客さんは慣れてしまっている。
別に僕が魔道具店に滞在しなくとも何の問題もなく勝手に売買が行われるであろう。
「ありがとうございました!」
「はーい。それでは次の方どうぞー」
ということで僕は連日連夜冒険者ギルドの方に訪れてせっせと占い屋さんとして小金を稼ぐ生活を送っていた。
「……すみません」
「おや?」
僕の前に次の客として頭を下げながら座った人。
それは僕でも知っているほどに高名な女冒険者であり……そう。
「……カターナさんじゃないですか。いつもうちの魔道具店をご利用いただきありがとうございます」
カターナさんだ、そうそう。
良かった名前が出てきて。
確か、ソロで活動しているくせにパーティー単位で動いている人たちよりも多くの戦果を挙げてくる上位の冒険者だったはず。
「……今。一瞬名前が出てこなかったかしら?」
「そんなことないですよ。それで?魔道具店ではなくここに来たということは占ってほしいことがあるんですか?それとも魔道具店関連で?」
「いえ、占ってほしいことがあるのよ」
「なるほど。何でしょう?」
「えっとね……わ、私の婚期について占ってほしいのよ」
カターナさんはもじもじと恥ずかしそうにしながら自分の婚期について聞いてくる。
彼女の年齢は25歳。
この世界だと圧倒的な行き遅れであり、同い年の女性はもうみんな結婚して子供を産んでいる頃合いだろう。
きっと両親からのせっつき、孫を見たいなぁーっていう要望も多数寄せられていることだろう。
「別に構いませんが本当に占ってもいいですか……?どんな結果になってもキレることはないと」
「だ、大丈夫よ。所詮は占いだもの……ねぇ?」
「本当です?基本的に自分の占いは当たりますけど……ここでカターナさんが結婚出来ないなんて占われてもちゃんと受け入れてくれます?」
「……」
僕の疑問に対してカターナさんは体を震わせながら閉口する。
「り、リップサービスとかって?」
「僕は見たままを素直に告げますが」
「……」
カターナさんが撃沈する。
「やっぱり、良いわ。ちょっと耐えられそうにないわ……うぅ。もう一人は嫌なのにぃ」
「それじゃあ、次の人ー」
「無慈悲っ!?」
目の前で悲しんでいるカターナさんを無視して次のお客さんの方に僕が視線を向けたところ、彼女は驚愕の言葉と共に固まる……いや、それもそうだけど、僕の占いを待って大量のお客さんが並んでいるのである。
「おいっ!!!」
僕がカターナさんを無視して別のお客さんを招こうとしていた折。
いきなり冒険者ギルドの扉が勢いよく開かれる。
「大変だっ!森の、方で……森の方でっ!規格外の魔物がっ!」
そして、そのまま冒険者ギルドへとなだれ込んできた血まみれの男が必死の形相で口を開いて声を上げる。
「今、クルスたちのパーティーを中心として抵抗しているが……流石に長くはもたねぇっ!!!頼む、救援を!救援を出してくれぇっ!」
「ほぇ?」
血まみれの男が叫ぶ報告を前にして、冒険者ギルド内にいる人たちがざわめきたって警戒心をあらわにしだす中で、僕は自分の奴隷たちの名前が出てきたことに驚いて何とも情けない声を漏らすのだった。
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