高貴なお客さん

 しっかりと定休日と抱えていたはずが開けられた魔道具店の扉。

 

「す、すみませーん」


 その扉を超えて姿を見せたのは仮面で顔を隠した背丈が僕と同じくらいに見える少女であった。


「何でしょうか?扉の方に札をぶら下げているように今日は定休日なのですが」


「す、すみません……ですが、ですがどうしてもお願いしたいことがありまして」


「なるほど。それに対しても理解を示しますよ……しかし、顔を見せぬ相手の頼みを聞くなどそうやすやすと出来ることではないのですが」


 少女を客としてもてなしながらもしっかりと意思表示をしていく。

 ……流石に誰かもわからない奴に物は売れないからね。

 変な奴に売ってしまった結果、うちのお店の評判が悪くなっても困ってしまうからね。


「……私はこういうものです」


 そんな面持ちの僕の言葉に対して、仮面をかぶった少女は胸元から一つの家紋入りのペンダントを取り出す。


「おっと……貴族様でしたか」


 ペンダントに刻まれた家紋。

 それはの街を統べるローエスト伯爵家の家紋であった。

 貴族にとって、家紋ほど大事なものもない。貴族とは基本的に見栄で生きているような存在であり、自分の家をどことも知れぬ奴に語られるなんて絶対に許せないのである。

 目の前に出されている家紋入りのペンダントが偽物である可能性はないだろう。


「はて、それでは一体何の用でしょうか?」


 ローエスト家と僕はほんど関係を持っていない。おそらく向こうは僕のことをほとんど知らないであろうから自分のよう正体に気づいたとかでは別にないだろう。

 となると。

 

「……作ってほしいものがあるのです」


 やはり、魔道具の作成依頼となるだろう……何か、ローエスト家が魔道具に頼らなければいけない理由があったっけ?


「何でしょうか?自分に出来ることであれば行いますよ」


 そんなことを思いながら尋ねる僕の言葉。


「……それでは」


 それに頷いた目の前の少女は自分に向けて様々な要求を告げてくるのだった。


 ■■■■■


 突然やってきた少女が作領に頼んできた魔道具は地味に高度なものだった。

 というより、作成のためにかかる費用がかなりかかるような代物なのだ。

 代金を商品引き渡しの前に送るわけにもいかないし、まずは高い高い材料費を何とか集めてこないとね


「たのもー!」


 といことで、僕は冒険者ギルドの方にやってきていた。

 目的は簡単。お金稼ぎである。


「……ん?」


 リスタ、トア、クルスの三人を連れて意気揚々とやってきた僕は急に自分の方へと視線が集まってきたのを感じて足を止める。


「……なんか、見られていない?」


 僕は自分の後ろにいる三人たちへと疑問の声を投げかける。


「ん?あぁ、私たちは一応周りから一目置かれる、新進気鋭の冒険者パーティーって扱いを受けているからなぁ。その影響じゃないか?私たち三人を連れ立っている人がいたら目立つってもんだぜ」


 いつの間にか自分の奴隷たちが新進気鋭の冒険者パーティーとして有名になっていた。


「……いつの間に君たちは新進気鋭の冒険者になっているの?全然聞いてなかったんだけど」


「も、申し訳ありません。わざわざいうこともではないかと勝手に判断してしまいました。こちらの不手際で申し訳ありません」


「いや、別にそこまで深刻でもないから別にいいけど」


「それで……こちらへと視線を向けてくる不届きものを処罰いたしますか?」


「いや、別にそんなことしなくていいよ。僕の目的を考えても現状はそこまで嫌な状況じゃないから」

 

 僕は自分へと視線が集まってくる現状も気にせず冒険者ギルド内を僕は歩き、ギルド内にあるへと机の方へとやってくる。


「はーい!」


 机の上にを一つの水晶玉を置き、椅子へと腰掛けた僕はその場で大きな声を上げる。


「占い屋さんだよぉー!今、話題の魔道具店店主にして新進気鋭の冒険者パーティーのご主人様である僕が開いた占い屋さんだよー。自分の運勢を図りたい人はいるかねぇー?」


 そして、占い屋さんとして大きく名乗りを上げるのだった。

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