教育
スラムの方からかっぱらってきた孤児二人。
その教育は当初、トアの方に丸投げしようと思っていたのだが、普通に彼女の方は冒険者としての活動で忙しかった。
なので、僕が代わりに孤児二人の教育を務めていた。
「んっ……」
と、言ってもそこまで大層なことじゃないか。
まずは簡単な基礎教養の授業からであり、やらせるのは読書である。
自分一押しの子供が読むべき書籍を二人に渡し、読めない文字や意味のわからないところがあれば二人が僕へと尋ね、それにこちら側が答えるという形式で進めている。
「……んんっ、ここはなぁ」
ということで自分の時間が一切ないわけでなく、僕は二人が読書している間も魔導書を読んでいた。
今日の魔道具店は定休日。
少なくとも僕の今日の一日はレーヌとミリアの二人を教育して終わるだろう。
「……」
「……」
「……んんっ、ふわぁ。うぅん」
「……」
「……」
「すぅ……すぅ……すぅ……」
時が過ぎ、レーヌとミリアのやっていることも読書から算数に代わっていた昼下がり。
眠そうにしていたミリアがとうとう限界を迎えて机に突っ伏しながら眠ってしまっていた中で。
「どうして……」
もくもくと計算問題を解いていたレーヌが小さな声で何かをつぶやく。
「どうかした?」
その独り言を計算がうまく行っていないのかと受け取った僕はレーヌへと疑問の声を投げかける。
「何で……私たちにここまでしてくれるの?」
だが、その言葉を受けて返ってきたレーヌは僕の想像からだいぶ逸れたものだった。
「いや、前にも言ったことない?」
レーヌの疑問に僕は苦笑しながら答える。
何で彼女たちを助けるかという疑問には、まず初対面の時に話した気がする。
「……それ、だけなら私たちに構う必要ないじゃない。ただ、適当に大量の孤児を拾って強引に奴隷とし、冒険者にしていきなり働かせてうまく生き残ったものだけを残せば。それだけで十分じゃない」
「さすがに、そこまで僕は薄情じゃないよ?」
「何で、そんな薄情じゃないの……私の知っている人は、もっと。何で、何で、急にこんな。私たちが」
「んー?あぁー」
スラムで、妹と二人で生きてきた苦労というのはやはり重かったのだろう。
自分の前にいるレーヌは猜疑心の方にどこまでも囚われていた。
「じゃあ、適当に僕が神様だからとでも思っていてよ。僕は神様だから困っている人を助けただけさ」
そんな、自分の前でうじうじと猜疑心に囚われながら悩んでいるレーヌへと僕は適当に言葉を返すのだった。
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