料理
スラムで拾ってきた孤児二人であるレーヌとミリア。
「あの……」
その二人をテーブルに着かせ、その間に料理を作っていた僕へと依頼から帰ってきていたトアが疑問の言葉を投げかけてくる。
「誰です?その子たち」
トアが示す先。
そこにいるのは当然、レーヌとミリアの二人である。
「ん?新しい子供たち。君たち三人が老衰で動けなくなった後も僕を養ってくれる人たちが必要でしょう?そのための子たちだよ」
「……なるほど」
軽く答える僕へとトアが何とも複雑そうな表情でうなづく。
どうやら、トアは突然やってきたその二人を前に自分がどうすれば悩んでいるようであった。
そんな彼女の反応をよそに、新しく家にやってきた孤児二人へのトア以外の二人の反応。
「そんなことは良いから飯は?もう出来ているぅー?私はお腹もすいているし、いつものようにギャンブル行きたいんだけど」
「ねぇねぇ、二人とも始めまして。私はリスタだよ!周りからは幼くみられることも多いけど、それでも立派に年上。あそこでスカしているご主人様と同い年だよ!よろしくね!」
「は、はい……」
「……同い年?」
それは実に正反対だった。
端から興味がないクルスと積極的に話しかけに行くリスタとで。
ただ、二人ともトアとは違ってこの件を重くは捉えていないようであった……あと、リスタ。君たちの夕食をせっせと作っている僕を指してスカしているという評価はひどくない?
それに、別に僕はスカしていたりなんてしていないでしょ。
「別にスラムの孤児二人が見なくなったところで命を落としたと思われるだけなんだからそんな気にする必要はないよ」
僕はいまだに複雑そうな表情をして立っているトアへと軽く声をかけながら、出来上がった夕食を一人一人のお皿へと盛り付けていく。
「……いや、そうであるからこそ……いえ、私は別にもう貴族じゃないですしね」
「自己納得したのなら良かった。それじゃあ、手伝って。できた料理をもっていってくれよ」
「あっ、承知いたしました」
僕はさも当然のような表情で椅子へと腰掛けているリスタにクルス、レーヌとミリアの四人の前にあるテーブルへと料理を運んでいく。
「……こ、これを私たちが食べていい、の?」
「お、お姉ちゃん!なんか、これいい匂いするよー」
「食べていいんだよ。というか、君たちのためのものだからね。君たちが食べなければ捨てるだけになるから食べてくれると」
言いたいことはわかるが。
それでも何となく言葉のニュアンス的にミリアの言葉にほんの僅かばかりにダメージを負った僕は二人へと食べるよう勧める。
「……っごく」
「わゎぁ……」
レーヌとミリアの二人は緊張で体を震わせながらも、拙い食器の使い方をしながら最初のひとくちを自分の口へと持ち運んでいく。
「……っ!こ、これは」
「お、おいしぃぃぃぃぃいいいいいいいい!」
最初のひとくち目を入れたレーヌとミリアの二人は目を見開いて驚愕の声を上げる。
そして、そのまますごい勢いでご飯を食べ進めていく。
どうやらお気に召してくれたようである。
「それならよかった……いただきます」
笑みを見せるレーヌとミリアの二人に頷きながら、僕は自分の夕食を食べ進めるのだった。
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