孤児
いくら、魔道具店の売り上げが軌道に乗っていたとしてもやはり、不労所得は手放せない。
僕はもう自由に生きたいのだ。
その他のものに縛られて生きたくはない。
明日、唐突に魔道具店を辞めたくなるかもしれない。
その時のために不労所得は必ず必要であり、その辞めたくなる日が己の人生のどこにでも来ることを考えるとその不労所得は永久に続いてもらう必要がある。
「誰かいないかなー?」
ということで、僕は自分の将来を養ってくれそうな人、将来有望な孤児を探すため、この街にあるスラム街へと訪れていた。
「っとと」
「金落とせや!」
「よっこいしょー」
たまに出てくる自分を襲って金銭を奪おうとしてくるスラムの住人を拳ひとつでサクッと気絶させながら進んでいく。
「んな?」
そんな折、僕はこちらの様子を伺うように向けてきている視線に気づいて足を止める。
二人、だな。自分の方を伺いながら視線を送っているのは。
それに。
「多分子供だよねー」
僕はその場を蹴り、移動を開始。
「やぁ、君たち」
「えっ!?ふぇっ……えっ!?」
「ひやぁぁぁぁあああああああ!!!」
自分が地を蹴り、移動した先はこちらへと送っていた視線の持ち主たちの後ろだ。
僕へと視線を送っていた持ち主。
それは、まだ年齢としては七歳くらいだろうか?
まだ幼い、両者綺麗な金髪で非常に似たり寄ったりに見える二人の少女であった。
「当たり」
「えっ……?」
「ふぇ……?」
かなり幼い二人の少女。
この子達から感じる魔力量はかなり多いように思え、また身体能力の方もかなり良いだろう。
何となく見ればわかる。
「やぁ、やぁ、君たち。僕はノア。ここの近くで魔道具店を営んでいるどこにでも居る一般人だ。君たち二人の名前は何かな?」
目の前にいる少女二人を当たりであると判断した僕は彼女たちに己の名を名乗ると共に、二人の名前を尋ねる。
「あっ……いや、その……ど、どうするお姉ちゃん!?」
「ど、どうするなんて言われても……ど、どうすれば……というか逆らえないんじゃないかしら?もう、これ。だって詰められているわよ?現状」
「た、確かに……」
僕の疑問を受け、自分の目の前で少女たちが会議を始める。
ふむ。それにしても二人は双子であったようだ。
お姉ちゃんという呼び方に、似たり寄ったりの二人、同じ年齢層。間違いなく二人だろう。
「別に僕は怪しいものじゃないとも。だから、名前を教えて?」
「……っごく。わ、私はレーヌよ」
「お、お姉ちゃん!」
「隣にいる、彼女の姉よ……ほら、貴方も名乗りなさい。もう、名乗るべきだわ」
「う、うん……わかった。私はミリア。お姉ちゃんの、妹、です……」
「レーヌとミリアだね。ありがとう」
僕は二人の自己紹介を聞き、笑みを返す。
「二人はここでどんな生活をしているのかな?両親はいる?」
「……いないわ」
僕の質問へと姉の方であるレーヌが答えてくれる。
「そっか、そっか。それじゃあ、どんな風に生活しているのかな?両親がいないなら大変だよね」
「……基本的には捨てられている残飯だったり、そこらで取れる小動物や虫など。あとは、喧嘩で負けてそのまま気絶状態で放置されている人から物品を奪ったりして」
続く僕の言葉にレーヌは素直に答えてくれる。
「なるほど。なるほど……そうか、そうか。それじゃあ、今のままでは君たちがこれから先も生活できないってことはわかっているよね?」
「な、何よ……わ、私たちを奴隷にでもするつもり!?」
「いやいや、そんなことはしないとも。ただ、君たちを育てようと思っているだけさ」
「……何の、目的で」
「金だよ」
「か、金……?そ、そんなの私たちにないけど」
「未来への投資だよ。君たちを育て鍛え、将来。稼げるようになった君たちからお金を貰おうと思ってね」
「な、なる、ほど……?」
僕の言葉をレーヌはゆっくりと咀嚼する。
「と、言うことで僕の元にやってきてくれるかな?二人とも」
「断る、と言ったらどうなるかしら?」
「え……?拒否権があると思う?」
頬引きつらせながら、それでも挑発的な笑みを浮かべながら告げたレーヌの言葉を僕は一刀のもとで切り捨てる。
「あっ、はい」
孤児二人が、勝てる相手ではないのだ。この僕は。
「と、いうことで君たち二人は僕と一緒に来てね?ふふふ……逃げる権利もないし、逃げさせもしないから」
「……わかったわ」
「お、お姉ちゃん……」
「そうするしかないのよ」
「はっはっは。そんな悪いようにはしないさ。ということで一緒にきてくれよな」
僕はレーヌとミリア、二人の奴隷を確保するのだった。
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