開発
とうとう……とはいえ、建物を建てて一週間程しか建っていないわけであるが、それでも魔道具店は開店した。
「まぁ、客は誰もいないけど」
開店から一週間。
未だに客は誰も来ていないわけであるが。
「ふんふんふーん」
まぁ、それに関してはさしたる問題はない。
どうせ僕の目的としては魔法の研究と魔道具の作成。売ることは重要視していない。
なので構わないのだ。
「えっとぉ」
ということで、今日も今日とて僕は魔道具の作成を行っていた。
「んー」
魔道具の作り方。
それを語る際にまず、簡単に魔法とは何かに知る必要がある。
魔法とは生命であれば誰もが持っている力、魔力を用いて発動する術のことを言う。
それはこの世界に存在する生命であれば誰もが持っている力のことだ。
それで魔法は各属性。
地、水、風、火に分かれている。
魔法発動のプロセスとしては何の属性にも染まっていない魔力に属性を与えて属性魔力へと変換。
そして、体の中にある属性魔力を体外に放出することで魔法となる。
属性変換をせずに体外へと出す方法した場合もあり、この魔法は無属性魔法と呼ばれる。
代表的なのが身体強化魔法だ。
ここまでは基本情報。
重要なのはこれからだ。
属性魔力を体外に放出しただけでは少量の土を出す、少量の水を出す、そよ風を起こす、火種を起こす。この程度のことしか出来ず、基本的に活用することは出来ない。
ゆえに、変化させる必要がある。
そして、その変化に必要となるのが魔法陣だ。
体外へと放出する際に魔法陣を展開することで魔法の在り方に変化を加えるのだ。
魔法発動で最も重要なのは魔法陣。
そして、それは魔道具も同じだ。
魔道具とは何か。
これは予め道具そのものに魔法陣を刻むことで、自分で魔法陣を描かなくとも、魔力を流すだけで魔法が使えるようになるのだ。
まぁ、魔法陣を刻むのは結構難しくて。
下手な材料に魔法陣を刻むと材料のほうが耐えきれなくて壊れてしまうため、基本的に高威力の魔法を使うのであれば自前で描く方が良い。
この説明だけ聞くと、魔道具はただの代用品、便利道具でしかないが、魔道具の本懐はここから。
基本的に魔法陣というのは同時に発動できるものでも無い。
僕でも最大で五つまでしか同時に使えないし、魔法の祖と呼ばれる過去の大偉人でも最大七つまでだ。
つまり、魔法と魔法を組み合わせて一つの大きな魔法を作ろうとしても、世界最強の存在ですら七つを組み合わせることしか出来ないのだ。
だが!!!魔道具があれば別。
別途、他に魔法陣を作っておけば自分で描かなくとも済む。
つまり、幾つもの魔法を組み合わせることが出来るのだ。実に素晴らしく、美しい事実だ。
「ふへへ、これを、こうして……こうすれば」
僕が作っている魔道具は、基本的に自前の魔法陣に魔道具による魔法陣を組み合わせて更なる大きな魔法を作るためのものばかりだ。
今日も今日とて僕は自分の魔法を更なる芸術へと昇華させるべくありとあらゆる努力を行っていく。
「ただいまー」
そんな中、自分たちの食い扶持を稼ぐべく冒険者として活動しているリスタたち三人がこちらへと帰ってくる。
「おかえり」
この世界に蔓延る魔物を倒すことで世界の治安を守ると共に街に住む人たちの依頼もこなす冒険者という職種。
たとえ奴隷であっても慣れるほどに裾野の広い冒険者として、リスタたちはしっかりと実力を示して多くの金銭を稼いできてくれている。
「これが今日の依頼金です」
「ありがとう」
僕はトアが差し出してくるお金の入った袋を取り出す。
そこから僕は半分ほどお金を出し、それをさらに三等分。
「はい。じゃあ、これが君たちのお小遣いね」
三等分したお金を僕はリスタたちへと分け与える。
「わー!お金だー!」
「謹んでお受け取りさせていただきます」
「金きたー」
僕からお金を受け取ったリスタたちは三者三様の反応を見せる。
「それじゃあ、私はちょっくら賭けてくるわ!」
「……昨日、有り金溶かしていたのですから、もうやめればよろしいのに」
「うるせぇ!昨日は溶かしたから今日は当たるんだよ!ギャンブルってのは波なんだ?わかるだろう?」
「わかりませんね。所詮、ギャンブルは確率。胴元が儲かるようになっている確率でしかありません」
「そんなわけないだろうっ!」
いや、そんなことある。
カジノを街の領主として経営していた者だからこそ断言する。
毎日、必ず胴元が勝つようになっている。
「というわけで私は勝ってお金を増やしに行ってくる!」
「待って。その前に晩飯としよう」
僕は意気揚々と店を飛び出そうとするクルスを呼び止める。
「あっ、はーい」
呼び止められたクルスは素直に僕の言葉へと頷いた。
「お腹すいたー」
「すでに調理済みでしょうか?」
「うん、作ってあるよ」
「……申し訳ありません。本来は私がやるべき業務ですのに」
「別に良いよ。どうせ魔法を使って全自動でやっちゃうし」
「お世話になります」
僕は三人と会話を交わしながら、二階の方へと上がっていくのだった。
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