第二章 魔道具店
方針
当面の目標であったリスタの村を救う。
それを達成し、街の方へと戻ってきた僕は本格的に自分がこれからどうやって生きていくかを考える段階に入っていた。
「さて、と」
とはいえ、もうやることは決まっているのだが。
「僕は魔道具店を営もうと思っている」
僕は自分が所有している奴隷である獣人のリスタ、元貴族のトア、ギャンブル狂いの元冒険者のクルスの三人の前で口を開く。
「魔道具店、ですか?」
「そう。僕はやっぱり魔法とか、魔道具とかが好きだなって思って」
幼少期から触れてきた魔法に魔道具。
魔法について書かれた魔導書を読むときはいつも心躍るし、リスタの村で特殊な魔道具を見たときにはもうテンションが爆上がりしたものだ。
改めて思う、僕は魔法と魔道具が好きなのだと。
ならば、それをするしかない。
「とはいえ、だ。魔道具店を営むと言っても金の問題が出てくる。そもそも自分の商品が売れるかわからないし、作るのにも、研究するのにも金がかかる。そこでだ。三人にはお金を稼いできてもらいたい」
「……なるほど。そういうことですか」
僕の言葉にトアが頷く。
「つまり、私たちで好きなように生きるご主人様を支えればいいってことですね?」
「そういうこと」
不労所得。
この四文字ほど素晴らしいものはないだろう。
貴族の頃は様々な形で収益が入り、一部は不労所得と言えるものであったが、今の僕にはそれらの収入源がない。
僕はしっかりと永続的な不労所得を作っていくべきだろう。
「質問!それはあれ?私たちの収益は全部はく奪されて一切手元に残らない感じ?」
「いや?そこまで奪うつもりはないよ。基本的には一部を貰うつもりかな。たまに研究費が欲しくなったら追加徴収するかもだけど」
「おぉー!よし!なら、私が毎日得られる金を使って日々増やし、いつでも研究費を出せるようにしてやるぜっ!」
「ありがとう」
どうせ、トア辺りはしっかりとお金を貯めてうまくやりくりしてくれるだろう。
困ったら彼女を頼ろう。
「おぉー!さっそく恩返し出来る感じだよね!」
「うん、そんな感じだよ」
僕はリスタの言葉に頷き、自分の懐からお金の入っている袋を取り出す。
「すでに土地は買い、建物も建て終えた後。それにもその他、道具やら家具やらを買いこんだ結果。僕の手元に残っているのは金貨五枚だけ」
元は多くの白金貨が詰まっていた袋の中に残っているのはもはや金貨が数枚だけである。
今回でほぼ全部を使い込んだ。
「えっ……?」
「んっ?あ、あれ……?白金貨が、大量にあったはずの袋が空っぽ、に?」
「あ、あれ……?結構お金には余裕があったはずでは?」
「もう金ないから。みんなを頼っているよ?」
驚愕で固まっている三人たちへと僕は笑顔で告げるのだった。
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