襲撃
こちらを伺っていた敵の存在。
その存在へとマーキングをつけていた僕は相手の位置をずっと把握し続けることが出来ていた。
「ここだね」
自分がマーキングを仕掛けた相手が逃げ込んだ先。
そこへと僕は自分の奴隷たちを連れてやってきていた。
「何というか、結構これ見よがしね」
僕たちがやってきたのは獣人の村からほど近い場所にある山のふもと。
そのふもとには山の中へと繋がる大穴が空いており、穴へと入る入り口には二人の見張りが立っていた。
明らかにあれが敵のアジトであろう。
間違いない。
「トア」
「了解しました」
僕の言葉に頷いたトアは迷いなく魔法を発動し、見張りの男二人を確実に撃ちぬいて殺して見せる。
「……うわー、本当に撃ったよ。まだ相手が犯罪も冒していない一般人の可能性もあったのに」
「それはありえませんね。そもそもとしてこの森の中で自勢力を築いて戦力を集めることは禁止しています。ここにアジトを作っている時点で相手はすでに犯罪行為を働いた敵ですよ」
そんなトアを煽るような言葉を告げるクルスに対して、彼女は淡々と言葉を返していく。
「おー?それは本当なのぉ?覚え間違いだったりしない?」
「しませんよ。私はこれでも元貴族です。そこら辺に関する知識はあります。ここら辺に勢力を築くのは自治権をもって生活している獣人たちをいたずらに刺激しないようそう決められているのです」
「あっ……そうなんだ。ここまでしっかりと論破されると何も言い返さない。ごめんなさい」
「よろしい」
トアとクルスがいつものようなじゃれ合いによる言い合いをしている中で。
「……あっ、そんな配慮してくれているんだ」
リスタがぼそりを独り言のような形で言葉を漏らす。
「結構国は獣人相手に配慮しているよ?」
そんな彼女へと僕は言葉をかける。
「うちの国は色々と荒れているからな。不用意に相手を煽ったりはしたくないのさ」
「そうなんだね……」
「だから、一応君たち獣人の方がうちの国の方に助けを要求すれば助けてくれたと思うよ」
「えっ!?そうだったの?」
「そりゃまぁね……基本的に貴族は自分たちが特別で周りは下。あまり獣人であることを気にしたりしないよ」
基本的に人は自分よりも立場の低い人間を攻撃する傾向にある。
世界の頂点に立つ貴族は自分とその仲間以外が立場の低い存在であり、わざわざ獣人を狙いうちすることはない。
獣人へと苛烈な差別行為を働くのは人間の中で下に位置するような貧民であることが多い。
貴族は平民を見下し、平民は貧民を見下し、貧民は獣人などの亜人を見下し、亜人も亜人で必死に自分より低い存在を探すのである。
実に素晴らしい世界だよね。
これだけ多くの数がいて多くの立場があり、それでもやることなすことは何時だって似たり寄ったり、ここに芸術性を感じてしまうのは僕だけだろうか?
なんか、ちょっと思想が強いかもしれない。自重しよう、うん。
「さぁ、そんなことよりさっさと敵を滅ぼしちゃおうかっ!」
さっさと話を切り替えていこう。
今、自分たちがしなければならないのは敵の排除である。
「ということで水を流していくわ」
既に内部構造がどうなっているのかのスキャンは終わった。
このアジトの中に閉じ込められている捕虜の存在はおらず、ボスっぽい人間は何か奥の方の部屋に閉じこもっている。
奥の部屋へと入るための扉は完全に外とのつながりを断っており、密閉状態。
水を流し込んでも敵のボスは生き残るであろう。
「「「……えっ?」」」
「ということでドボン」
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええっ!?」」」
僕は腕の一振りで大規模な魔法を発動。
この森の中に巨大な水の龍が姿を現し、そのまま大穴の内部すべてを埋め尽くすべく突入していくのだった。
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