②キャラを立たせる記述技術

この表1を見てください。


表1----------------------------

|理性的\感情的| 上  |    中    |  下  |

|  上    |市の君 |利長・長秀・官兵衛|恒興   |

|  中    |秀吉  |信包・寧     |     |

|  下    |勝家  |         |信雄   |

|対象外                         |

|玄以・一益・三法師・松姫・イノシシ・光秀・信長・信忠  |

------------------------------


18基のキャラが理性よりか、

感性よりなのかを分類した図です。


そして読みながらキャラを一言でまとめた一覧。


ドリフターズ信長

フロントマン信孝

マスコット勝家

ライトアーム利家

アナリスト長秀

リベンジャー市の君

ミッシング一益

イノシシ

リアルうつけ信雄

インファント三法師

ジコチュー秀吉

ビーストマスター官兵衛

サウダージ寧

レジネーション信包

レジネーション松姫

(Regination 辞退すること)

ナルシスト恒興

シビリアン玄以


作中人物の性格はみんな、

単純な1つの形容詞で表現できます。


それでいて創作特有の淡泊な人形ではなく

ちゃんと人間味のある一人として

描かれているのがびっくりです。

どんな工夫があるのでしょう?


ポイントは葛藤することです。

表1のどちらも中間に添えた二人は

跡継ぎ争いに関与するものの、

行動自体はかなり受動的です。


政治的自我がない分、どちらにつくべきか

逃げながら迷って、結局、茶器に魅せられて

もしくは秀吉の奥さんだからと

秀吉の側について行くのです。


操り人形になってはいますが、

物に釣られて、夫への情で動いて、

出家した身の強欲さとか

当時からの女性の立場の弱さとか。


そうした人間の醜さをさりげなく

彼らの性につけ足しているので

人間っぽくみえているのです。


勝家は感情を隠さないマスコット加減が

すでに人間味らしい感じがあります。

そして、屈強な武人の印象にありがちな

「考えて動く」ことが苦手なタイプであり、

作中であらゆる人に騙されまくります。


長秀や利家は秀吉と勝家のどちらに

織田家の未来を委ねようか悩みましたし

恒興は最後の最後までどっちつかず。


市の君と官兵衛はそれぞれ

勝家陣、秀吉陣のブレインでしたが、

前者は秀吉憎しの一念を原動力に、

後者は軍師の才を精一杯生かすために。

異なった動機を持って動いていました。


同じように見えて少し違う。

そんな人間が身近にいるのもリアルです。


あとは、利口な信孝様も

跡を継げないと告げられると

拗ねてしまうかわいらしさがありました。


信雄は最後までバカでしたし、

一益は最後まで間に合わないし、

松姫は最後まで関わってない・・・のか?


三法師を抱えて他の武将が

自分に礼をするように仕向ける手口は

聚楽第のそれとおなじですよね。

史実を取り込むのが凄く上手い。


あれ、キャラの立たせ方の話は?

話がブレブレになってしまいました。


この、話題の軸をぶらしながら書くことが

キャラの人間味を立たせるコツなんです。


例えばバトル系少年漫画って

小ボス、中ボスとか作品を振り返ると

主人公たちの目的はすり替わっていきます。


目的が変化すれば、それまでの行動の中に

新しい目的に反する何かが見つかるかも。

そこのギャップを生み出すシナリオ、

およびそれを解決していく人間力が

どう描けるかがこの作家の肝だと思います。


では、次頁では

個人的に好きだったところを

2つ取り上げて結びにします。

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