④ご都合の排除

冒頭で本郷はいきなり爆発で死ぬ、かと思いきや生きていた。これも一見ご都合に見えますが、プラーナが生命力のパラメータであることを踏まえると、爆発をものともしない耐久力が、変身前の本郷にもあったと考えることで理屈が通っていると解釈できます。


また、怪人が暴れて市民を襲っている所にライダーが急行する展開は不自然です。なぜライダーが怪人の居場所を知っていたかとか、誰がライダーに通報したかとか、なぜ怪人出現後すぐにライダーが到着できるのかとか。作中のオーグ戦はどれも、アジトに出向いて倒すか、オーグの方が襲撃に来るスタイルでした。ありがちだけど不自然な展開を避けていたのです。


そして、最後に本郷が死んでいく場面では、仮面ライダーは死なないというお約束が否定されています。本郷はプラーナを使い果たしてしまい、死んだのです。この作品の本郷猛はプラーナという概念によって生かされ、プラーナという概念のお陰で強くなり、プラーナという概念のせいで死んだのです。


物語の中で巻き起こる「ご都合的展開」はプラーナ理論に基づいた必然です。そして、いままでが偶然「必然的に勝利せざるを得なかった」だけで、必然的にライダーが死ぬ場合もあると観客に示し、この映画に存在する「ご都合的展開」はすべて、ただの必然であって、正義の味方補正ではないことを示しています。ちなみに正義の味方補正はルリ子が殺された時点で否定されているとも解釈できます。

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