平凡な俺は目を逸らす

「ええっ!本当に?ソル君!」


 俺がマルが部活に来ない理由がわかったかもしれないと言うと、ルナが嬉しそうに声を上げる。

 だが、そう言われると自信がない。

 その期待の眼差しをやめて欲しい。


「多分……だけどな」


 俺は自信なさげに答える。


「ソル君凄いですね!」


 ルナに続いてステラも俺を褒めてくるが、やはりやめて欲しい。

 自信はないんだよ。


「それで、マルちゃんはなんで部活に来ないのかな?」


 早く聞かせて欲しいと言わんばかり食いつきで、ルナは聞いてくる。


「それは、多分な――」


 俺は簡潔に、俺が導き出した答えを説明した。

 そんなに長い話ではないため、ルナとステラは神妙な顔つきで話を聞いてくれた。

 

「――という理由で、マルは部活に来ないんじゃないかと思うんだ」


 俺の話が終わると、二人は考え込むような、難しそうな顔をする。


「やっぱり違うか?」


 自信はないのだ。


「いえ……そんなことはないと思います」


 ステラがそれを否定する。

 それは俺の自信のなさを否定したことであり、俺の説を肯定したこととなる。

 それに俺はホッとしたのだ。


「ルナは違うと思うか?」


 そもそもルナが一番マルの性格には詳しいのだ。

 ルナの意見が一番大事である。


「う、うーん……」


 ルナは手を組んで考え込んでいるのだが、その手に大きな胸が乗っていたため俺は目を逸らした。


「わからないけど……ソル君が言うならそうなのかも……って、ソル君?聞いてる?」


 聞いてはいる。見てはいないが。


「聞いてるよ」

「じゃあこっち見てよ」


 とりあえずその胸の下で手を組むのをやめてくれ。

 つい目が行ってしまう。


「それで、どうしましょうか?」


 ステラが口を挟んでくれた。

 助かる。


「あ、ああ。そこで俺に作戦があるんだが……聞いてくれ――」


 その作戦を俺は説明をした。

 

「――というのはどうだ?」

「ええーっ!」


 言うと、ルナが驚く。


「駄目かな?」

「いいと思います!」


 ルナではなくステラが返事をした。


「ルナは駄目か?」


 ただ、この作戦は全てルナ頼みである。

 そのためルナに直接聞く。


「う、うん、いいけど……ちょっと自信ないかなーって……」

「大丈夫だ。ルナなら出来る」


 珍しく自信なさげなルナに、俺は柄にもない言葉をかけたのだ。

 だけど本心であるし、やってもらわなければいけないのである。


「うんっ!ソル君がそう言うなら頑張るよ!」


 俺の励ましがきいたのか、ルナは元気よく返事をしてくれたのだ。


「むしろもっと問題なところがあるんだけどな……そっちは俺に任せといてくれ」


 実の所、ルナよりも心配なのはこちらである。

 それは俺がなんとかするしかないだろう。


「決行日は月曜の放課後だ」


 とはいえ、今すぐにどうという話ではない。


「おーっ!」

「頑張りましょう!」

「おう」


 話はまとまり、その日はそのまま解散となった。

 そして作戦決行の日、月曜日がやってくる。

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