やはり平凡な俺の悪い予感は当たる

 だが悪い予感と言うのは当たるもので、それから4日後に問題は起きたのだ。

 それは5月17日の金曜日となる。

 その日の昼休みにも、俺達は体育館裏に集まっていた。


「っと、こんなところか」


 マルの一件が終わってから、DEAに来る相談に特別真剣そうな相談はなかった。

 そのため、今日のように軽く話し合うだけでDEAの活動は終わる事になる。

 

「ん……そうだね」

「少し早いですけど、教室に戻りましょうか」


 だが、俺には一つだけ気になる事がある。


「待ってくれ」


 だから話が終わってから二人を呼び止めたのだ。


「なあ、なんかあったのか?ルナ」


 気になる事と言うのは、ルナの事である。

 ここ数日、明らかに元気がないのだ。


「え?な、なにもないよ」


 動揺している。

 なにもないということはないだろう。


「マルのことか?」


 だから俺は鎌をかけてみた。

 彼女が何故元気がないのかはわからないが、現時点で一番可能性があるのはこれだろう。


「え?な、なんで……」


 ルナはあっさりと引っかかる。

 やっぱりか。


「何かあったんですか?」

「う……うん……」


 ステラにも聞かれて、ルナは堪忍したようだ。


「マルちゃん、陸上部に来なくなっちゃって……」


 正直に言えば、こちらもやっぱりか、という話となる。

 ルナがここまで思いつめる話となると、容易に予想がついた。


「いつからだ?」


 言い方的に昨日今日というわけではないだろう。

 しかし、マルが入部してからまだ五日間しか経っていない。

 俺達は初日しか見ていないわけだが、まさか2日目から既に来ていなかったということはないと思いたい。


「一昨日から……」


 いつも元気なルナだが、とても心配しているようで大人しい。

 こんなにも心配してくれる先輩がいるのに、マルは何をしているのだろうか。

 そして問題は今日起きたのではなく、既に起きていたのだ。


「連絡はしたんですか?」


 俺とステラで質問攻めみたいになってしまっているが、聞かなければ何もわからない。ルナには頑張ってもらおう。

 

「したよ、そしたらテスト前で勉強するから休みたいって……」


 テストは再来週の月曜日からだ。

 つまり来週からテスト前期間で部活は休みとなる。

 変な理由ではないのだが。


「マルってのは、そんなに勉強熱心なタイプなのか?」


 どう見てもそうは見えなかった。

 むしろスポーツ一筋という感じの健康少女だった。


「ううん、むしろテスト直前まで勉強しなくて私に泣きついてくる感じかな……」


 だよな。

 一応理由をつけてはあるが、不自然なためルナは心配しているのだ。

 来週はテスト前休みだし、このままテストが明けても来ない可能性が高いのだと思う。

 というか、むしろそれを狙っているのかもしれない。

 自然な流れで退部しようとしている、ということだ。


「じゃあ――」

「あの……」


 俺は更に質問しようと思ったのだが、ステラが控えめに間に入って来た。


「どうした?」

「時間です」


 とても申し訳なさそうにステラが言う。

 時間を見ると、もう昼休みが終わりそうである。

 そんな申し訳なさそうに言わなくても、時間を教えてくれてありがたいよ。


「わっ!早く戻らないと!」

「話はまた後だな」

「とりあえず、今日は私は陸上部に行くから!」

「ああ、今日は来るかもしれないからな。明日か明後日また話そう!」


 俺達は急いで会話を終わらせると、教室へと急いで戻ったのだ。

 そしてその日は終わり、次の日となる。

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