平凡な俺と日替わりランチ
授業を終えて、俺はステラと二人でガストへとやってきた。
ルナに先に行っててと言われたからだ。
「いらっしゃいませ」
やばい、ファミレスで人を待つのは初めてだ。
そもそも、ルナにここに連れてこられるまであまりファミレスに来ること自体なかった。来ても親となので、待つことはない。
ステラの方を見る。
そもそもステラは俺の後ろにくっついている。期待は出来ない。
「あ……アトカラヒトリクルンデスケド」
「わかりました。メニューの立っている、お好きなお席にお座りください」
「ハイ」
よし、完璧だ。
俺は店内を歩いて行き、窓際ではない一番奥の暗めの席へと向かった。
そして座ると、ステラが向かいに座った。
うん。
「先に頼まないとな」
ルナを待っていると言っても、飲食店に入っておきながら何も頼まないわけにはいかない。
俺はステラへとタブレットを渡した。
俺には悩む余地はない。と言うか金がない。
小遣いからやりくりしているが、山ポとドリンクバーだけでも600円は超える。
週2で来ても月5000円近いだろう。普通に痛い出費だ。
「なあ、ステラはバイトしてるのか?」
真剣な顔でタブレットとにらめっこしているステラへと聞いた。
すると、ステラは顔を上げる。
「してないですね」
だよなぁ。してなさそうな感じだもの。
つまりステラも小遣いからやりくりしているということだ。
いくらもらってるの?なんて聞くのは悪いだろうか?
「ソル君もしてないですよね?」
う……質問が返って来るとは思わなかった。
「まあ、学生の本分は勉強だからな」
とは言ったものの、働きたくないだけである。
働きたくないでござる、というのは名言だと思う。コラなので誰が考えたのかわからないけどな。
だって学校帰りに働きに行くとか正気じゃないだろ?
学校が終わったら1日は終わりなんだよ。
「そうですよね」
ステラが、学生の本分は勉強と言う言葉を肯定するが、こちらは本当にそう思っているのだと思う。
なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
とりあえずこの話はやめよう。
俺の手持ちに気付いて、気を遣われてしまうかもしれない。
「悩んでるのか?」
ステラはタブレットと睨めっこしているのだ。
「はい、あんまりファミレスには来ないので……」
それにしたって、そんなに真剣な顔しなくてもいいと思うのだが。
「日替わりとかでいいんじゃないか?」
平日ランチにしかやってないのでお得感がある。
と思ったが、庶民感丸出しか?
「そうします」
しかしステラは即答した。
かなり適当に言っただけなんだが……早く決まることはいい事なので口は挟まないで置いた。
「ソル君、どうぞ」
ステラがタブレットを俺に渡してくる。
「ん」
俺は迷うことはないので、注文をするとタブレットを置いたのだ。
それからしばらくすると料理が運ばれてきて、それからまもなくするとルナがやってきた。
「社長出勤だな」
遅れてやってきたルナに言う。
「秘書がやったことです」
いや遅刻したのは社長ですよ。
「ステラちゃーん!」
ルナはステラの横に座り距離を詰める。
「美味しそうなの食べてるね」
今日のランチはミニチーズインとエビフライのようだ。
まだ少し残っている皿を見て、ルナが涎を垂らしそうな顔で言った。
「は、はい。美味しかったです」
まだルナという陽キャの距離感に慣れないのか、ステラは戸惑いながら答えた。
まあ俺もまだルナの距離感には慣れてないからな。気持ちはわかる。というか俺より圧倒的に、物理的に近いしな。
「じゃあ私もそれにするー。ソル君お願い」
「あいよ」
俺はタブレットを取って、日替わりを注文に入れる。当然ご飯は大盛りだし、ドリンクバーつきだ。
「山ポもね」
「え?」
まだ半分ほど残ってるんだが?
「もうっ、足りないでしょ」
足りないのか、そうか。何回も言うけど君ら弁当食べたんだよね?
全てを口には出さずに、山ポも注文に入れて送信した。
そして俺はタブレットを置く。
「じゃあ結果を話します」
そのタイミングを見計らって、ルナが口を開いた。
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