平凡な俺の右と左

「じゃあ始めるぞ」


 俺はスマホを出してDEAの画面を開いた。


「ちょっ!ちょっと待った!」


 しかし、すぐに抗議の声を上げる。

 何故なら、右からルナが、左からステラが、俺のスマホの画面を覗きこもうとしたからだ。

 二人とも近すぎる。

 特にステラは背が低いためか、かなり近づいていて、その……当たってしまっているのだ。何がとは言わないが、かなり大きいからな。

 

「どうしたの?」


 二人は離れ、ルナが聞いてくる。

 どうしたのじゃないが。

 ルナは陽キャの中の陽キャだからわからなくはないが、ステラはおかしいだろ。当たってるのわかってるよな?

 と思ったら、ステラは顔を赤くしていた。

 思いっきり意識してるじゃねえか。


「円陣にしてくれ」


 俺の心が持たないから。

 少しきつい体勢だが、スマホを持った手を前に出して二人に見てもらう。


「見づらいよ」


 ルナが抗議の声を上げたが無視した。


「中間テストの話ばっかだね」


 まあ時期的にそうなる。

 もうすぐ中間テストだからな。

 

「貸してください」


 ステラが言うので、スマホを渡す。

 ステラはスマホを操作していき、しばらく経ってから返してきた。


「ん?」

「テスト関連は返事しときました」


 助かる。

 正直冷やかしみたいなのも多い。

 いつからテスト?とかテスト範囲は?とか、自分で調べろって言う相談もあるのだ。

 だからと言って、返事を待っているわけだから、返事をしないわけにはいかない。


「ありがとう」

「そ、そんな、私もDEAの一員なので……」


 俺が感謝を伝えると、ステラは照れる。


「むぅ……」


 ルナは蚊帳の外であり、それが面白くないようで、


「ソル君!ちょっと貸して!」


 俺からスマホを奪い取った。


「あ……」


 そしてスマホをしばらく見ていたルナだが、小さく声を漏らして、驚いたような顔をした。


「どうした?」

「んー、これ」


 ルナがスマホを俺達の方へと向ける。

 そこには一つの相談があったのだ。

 それを俺は読み上げる。

 

「中学の時の先輩と同じ部活に入ろうと思っていたのですが、先輩は部活に入っていませんでした。悩んでいるうちに中途半端な時期になってしまって、どの部活にも入りづらくなってしまいました。どうしたらいいでしょうか?」


 そう言う内容だった。


「それ、名前がさ」


 ルナに言われて、名前の欄の名前を読んでみる。


「ん?馬越海……ばこしうみ、か?」


 キラキラネームも多いので、あっているかわからない。

 中学の頃に海と書いて、みうと読むやつまでいた。


「うまごえまる」


 ルナが言った。


「って言うのか?」


 それが正解らしい。

 馬越海(うまごえまる)。これは読めないだろ。いや、ソルも大概だけどな。


「うん……」


 どうにもルナは歯切れが悪い。

 名前を知っていることといい、何か関係があるのだろう。

 だが聞いていいものだろうか?

 悩んでいるうちに、ルナが口を開いた。


「それ、あたしの後輩なんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る