平凡な俺と後輩な彼女
平凡な俺のゴールデンウィーク
今日は5月の2日となる。
チャイムが鳴って、その日の授業の終わった。
「やっと終わった!」
「休みだー!」
つまり、ゴールデンウィークの始まりなのである。
教室の中は熱気で包まれる。
社会人であれば有休を使って10日間休みにする人もいるかもしれない。
ブラック企業であれば休み自体がないかもしれない。
とはいえ俺は学生であり、勝手に休む事など出来ないのだ。
なので、明日から振り返り休日を挟んだ、5日間の休みとなる。
つまり、5日間たっぷりとゲームをして遊べると言う事になるのだ。
え?予定?ないよそんなの。それが平凡だろ?
「なあ、アクル」
しかし、1日くらいはアクルと遊んでやってもいいかと思い、アクルに声をかけた。
「ゴールデンウィーク、暇な日あるのか?」
「ん?ああ、ないかな……」
だよな。
わかってたよ。
5日間ビッチ先輩と爛れた日々を過ごすのだろう。いや、まじで。
「じゃあいいんだ。行こうぜ」
俺達は二人で階段を降りていく。
そして下駄箱まで来ると、
「アッくーーーん!」
ビッチ先輩がアクルへと飛び着いてきた。
アクルは巨体であり、小柄なビッチ先輩が飛びついてもびくともしない。
「おう」
そして飛びつかれてもアクルは冷静であり、周りももはやいつもの光景なので見てこそいれど騒ぎ立てたりはしない。
「早く行こ!」
今から5日間一緒だろうに、待ちきれない感じでビッチ先輩がアクルに言う。
「ん……」
アクルが俺の方を見る。
無駄な気を遣わなくていい。
「じゃあ、また、えっと……水曜日な」
なので、俺はアクルに手を振って送ってやったのだ。
「おう、じゃあ」
「じゃあねー」
アクルは手を軽く上げて、ビッチ先輩も俺に手を振ってくれた。
「さて……」
俺は引きこもりゴールデンウィークを堪能するとしますかね。
そう考えて、俺も上履きをしまって靴を置く。
その時だった。
「あっ!ソル君!」
後ろから声がしたのは。
「ルナ?と、ステラ」
俺が後ろを振り向くと二人がいた。
「もう!連絡したのに」
気が付かなかった。
そもそもDEAに来る相談が多いため、スマホが鳴ってもあまり気にしないのだ。
「悪いな」
スマホを確認すると、確かにルナからの、「待ってて」という連絡がある。
俺が悪いため素直に謝る。
「いいよ、行こっか!」
どこに行くのかは知らないが、別に暇だからいい。
それも5日間もの暇がね。
それから正門を出て、普通に歩き出した。
「二人とも、ゴールデンウィークは暇かな?」
歩きながらルナが喋り出す。
予想の範囲内の話だろう。
「暇だな」
「あ……明日から、家族で三日だけ旅行に行きます」
家族で旅行。普通だ。うちも俺が中学生くらいまではどっかしらに行っていた。
高校生になってからは何故かなくなったが。
人混みは嫌いなので、わざわざゴールデンウィークには出かけたくないため、構わない。
「ソル君は?」
ルナが何故か聞いてきた。
あれ?俺言ったよね。暇だってさ。
「暇だが?」
仕方がないのでもう一回言う。
「だーかーら、いつからいつまで暇なの?」
ああ、そういうことか。
ゴールデンウィークという長い休み。その全ての日が暇な人間などいないとルナは思い込んでいるのだ。
陽キャ的には正しいのかもしれないが、平凡な陰キャには予定なんて一日もないのが正しいんだよ。5日間家に籠ってゲームするんだよ。
「全部……」
俺はぼそりと小さい声で言った。
別に俺だけ予定がない事が恥ずかしいわけではない。
「え?」
ルナは聞き返してくる。
なにこれ?羞恥プレイか?
「全部暇だよ」
仕方がないので、もう一度少しだけ声を大きくして言った。
「ええー、そんな人いるの?」
ルナが言う。
悪意はないのだろう。
「あ……私も旅行以外はなにも……」
ステラがフォローしてくる。
やめて、悲しくなるだけだから。
ここは普通なら、「お前はどうなんだよ」と相手に聞き返すところだろうが、ルナ相手に聞き返しても仕方がないだろう。
なので聞き返さない事にする。
「私はね。バイトして、バイトして、遊んで、遊んで、遊ぶの!」
しかし聞いてもいないのに、ルナが話し出す。
話したくて仕方がなかったのだろう。
「へぇ……バイトしてるんだな」
偉いものだ。
俺は学生の内から労働なんて絶対ごめんだね。
「うん、ガストでね!ゴールデンウィークは稼ぎ時なんだ」
ガストかよ。
ていうか……
「え?もしかして、いつも行ってるところって……」
もしかしてそうなのだろうか?
「違う違う。私のバイト先は家の最寄りだよ」
「そうか」
それがどこかは知らんが、いつものところとは違うようである。
「じゃあソル君はいつでもいいと……」
ここまで言われれば俺にだってルナが何を言いたいのかわかる。
ずばり、DEAの話をする日を一日作るつもりだろう。
「DEAの話をするのか?」
一応聞いてみる。
「え?違うよ。言ったじゃん友達と遊ぶって」
「あ、ああ」
それ俺達も入ってたのか。
「でもそうだね。デアの話もしないとね」
「はいっ!」
ステラが勢いよく返事をする。
そういえばステラが入ってから数日が経ったが、まだ相談らしい相談の解決はしていない。
言うなれば彼女の初仕事はまだなのだ。
「あ……」
そこまで話して家の近くになってしまう。
「じゃあまた連絡するね」
ルナもそれがわかっているので、あっさりと一人だけ駅へと向かったのだ。
「バイバーイ」
少し離れたところで、ルナが大きく手を振りながら去っていった。
「ああ」
俺とステラは小さく手を振り返す。
なんだか気分が良くなった。
「それじゃあ」
「はい」
二人になると、俺もステラと別れる事にする。
流石にバイバイとは言わないが、
「またな」
「はい、また」
軽く手を挙げて挨拶をし合ったのだった。
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