平凡な俺の性善説

 俺がボーっと眺めていると、二人はすぐに料理を食べ終わった。

 そして、食べ終わってすぐにルナが立ち上がる。

 コップを持っていたので、ドリンクバーでも取りに行くのかと思いきや、ルナはステラの隣、俺の対面へと座ったのだ。

 

「おほん」


 そして、わざとらしく咳ばらいをすると、


「それでは、面接を始めます」


 言ったのだ。


「ん?」


 俺はキョロキョロと顔を動かす。

 当たり前だが、ルナの正面には俺しかいない。


「俺か?」


 つまり、面接の対象は俺と言う事になるのだ。


「だって私達だけ面接してソル君だけしないのは不公平じゃん」


 別にルナの面接もした覚えはないが?


「まあ、好きにしてくれ」


 しかし遊びに付き合うのも悪くないだろう。


「それでは、ソル君がDEAを始めた理由は?」

「話してもいいんだが、かなり長くなるぞ?」


 一応始めたのにはそれなりのエピソードがある。

 なので長くなるのだ。


「ではいいです」


 いいんかい。


「じゃあ私とステラちゃん。どっちがタイプ?」

「ひゃっ!」


 ぬぐ。

 いきなりぶっこみ過ぎだろう。

 ステラが驚いて困っているぞ。


 ルナもステラも二人とも可愛く、どちらの方がタイプと聞かれても困ってしまう。 

 強いて言うなら両方タイプだろう。

 というか男ならみんなそう答える。


「黙秘権を行使します」


 とはいえ、そんな事を言ったら袋叩きにされそうなので黙ることにした。


「ふーん……まあいいか」

 

 ルナがジトーっとした目で俺を見る。

 しかし、それ以上追及はされなかった。


「じゃあ、ソル君がデアをしている動機はなにかな?」


 まともな質問へと戻って来る。


「DEAを続けている動機でいいか?」

「うん」


 それに関して言えば、何度か自問自答した事がある。

 何度も何度も悩んだのだ。

 そして答えを出した話である。

 俺がDEAを続けている、その理由は。


「性善説ってわかるか?」


 俺は逆に問いかける。


「それはもちろん」

「わかります」


 まあ知らない人の方が少ないだろう。


「人はみな生まれつき善の性質をもつって説だな」

「うんうん」


 二人は頷く。


「俺は人を助けるタイプじゃあないのはわかるだろ?」


 更に俺は別の話を始める。


「そんなことないと思うけど」

「そんなことないですよ」


 しかし否定されてしまった。


「いや、俺は人を助けるタイプじゃないんだよ。そういうのめんどくさいから」


 納得させるために、同じことを強調して言う。


「まあ……そういうことにしますか」


 話が進まないのを感じ取ったのかルナが言った。


「でも俺は今人助けみたいな事をしている。これは俺の意思でやっているわけではなくて、性善説に基づいて人助けをしているんだ」


 これが俺の出した答えである。

 しかし、これを聞いたルナ達はポカンと口を開けていた。

 伝わらなかったのだろうか?


「伝わらなかったか?つまり――」

「ああ、いいよいいよ!わかったから!」


 ルナが俺の言葉を遮った。

 わかったのならいいのだ。

 俺の完璧な、DEAを続けている理由が。


「つまり、ソル君は困っている人を助けたいってことだよね?」


 わかってねえ!


「いや、違うんだって!俺は困っている人を助けるタイプじゃないけどな、人って言うのは生まれながらにして善なんだよ。だから、その説に従って、俺は――」

「ああ!はいはい!大丈夫大丈夫!」


 ルナはやはり俺の言葉を遮った。

 いやだって……わかっていないだろう。大丈夫ではない。


「なんだかソル君ってさ……めんどくさいよね」


 ルナはステラに向かって言う。

 酷い言われようである。


「はい、そうなんです。でも、そこもいいところなんです。ふふ……」

「そうかもね。あはははは!」


 二人は顔を合わせて笑い出す。

 そんな二人の様子を見て、俺は説明を諦めるしかなかった。

 それでも、俺はこれだけは主張したいのだ。

 平凡な俺は性善説に基づいて、これからも彼女達と一緒にDEAで人助けをしていくのだと。

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