平凡な彼女は幼馴染

 ああ、なるほど。と思ってしまった。

 ルナがこちら側に座ったのは、こちら側が面接官側だという事なのだろう。

 安心したような、寂しいような、そんな気分である。

 

「ステラちゃん、あなたはなんで私達がDEAだと知っているのですか?」


 そこはステラさんだろう。細かいツッコみを心の中でいれておく。


「あ……たまたま烏野君のスマホが見えてしまって……」

「ソル君?」


 ルナが俺の方を見る。

 ガバガバ過ぎると言いたいのだろう。

 それは悪いと俺も感じたとこだよ。


「すまん……」


 なので、素直に謝って置いた。


「よろしい。えっと……なんで私もDEAだって知ってるの?」


 ルナが次の質問へと移る。


「烏野君と兎沢さんが――」

「待った!」


 ルナが突然話を遮った。 


「ルナね。友達でしょ」

「は、はい!」

「で、こっちはソル君」


 俺はよくない?


「あ……は、はいっ!」


 上水流さんも困ってるぞ。


「ソル君も、ステラちゃんね」  


 俺も困っちゃうぞ?


「ほら言って」

「ス、ステラ」


 ステラちゃんはちょっと気持ち悪いかと思い、呼び捨てにした。


「は、はい!ソ、ソル君!」


 なんだか恥ずかしい。

 それはステラも同じのようで、彼女の顔は赤かった。

 きっと俺の顔も赤いのだろう。


「はいっ!じゃあ話の続きして」

 

 妙な空気をルナがぶった切る。


「ソ、ソル君とルナちゃんが体育館裏で一緒にDEAの話をしていたので……」


 ステラが先程の話の続きを言った。

 それでルナもDEAに関わっていると知ったわけだ。


「ふむふむ……ほら、ソル君も何か質問して!」


 何故か怒られてしまう。

 まあ面接官?なのに黙りっぱなしだからな。


「じゃあ、なんでDEAに友達が欲しいって相談したんだ?」


 話を聞いた限りだと、俺とルナがDEAだとわかった上での相談である。

 

「それは……」


 ステラは俺の方を見る。

 え?なに?


「ソル君とまた仲良くなりたかったから……」


 そして、とても言いづらそうに、小さな声で言ったのだ。


「なるほど」


 ルナは顎に手を当てて頷いている。

 何がなるほどなんだ?

 というか、


「また?」


 というのが気になった。


「あ……ソル君は覚えてないみたいですけど……保育園から一緒です……」


 お、おう。

 保育園?幼稚園じゃなくて?

 

「うわ……さいてー、ソル君」


 ルナの視線が痛い。

 言い訳すると、保育園の時の事なんて覚えてない奴の方が多いと思う。

 

「すいません……」 


 だが言い訳と言うのはすればするほど形勢が悪くなるものである。

 賢い俺は素直に謝るのだ。


「い、いえ、全然大丈夫です!」


 よしっ!許された!


「それで、俺とステラは保育園の頃仲が良かった……と」


 ステラは無言でうなずく。

 正直まるで記憶がない。

 しかし、つまりステラは幼稚園までは俺と仲良かったので、また復縁したいと考えていたわけだ。

 それにしては少し遠回しだが、ステラの引っ込み思案な性格を考えれば勇気を出した方なのかもしれない。

 もしDEAからの指示が俺と仲良くしろではなかったとしても、どうにかして俺に辿りつくつもりだったのだろう。


「それで、なんでDEAに入ろうと思ったんだ」


 経緯はわかった。

 しかし、これが一番重要な話である。


「それは……そんなつもりはなかったんですけど……」


 俺の熱い説得で熱くなってしまったかー。

 そう言う事なのだと思う。

 つまり俺は余計な事をしてしまったのだ。


「採用!」


 突然ルナが言った。

 今、それを決める部分があったか?


「なんで採用なんだ?」

「可愛いから!」


 ルナは自信満々に言う。

 いや確かに可愛いけどさ。


「ソル君は反対なの?」

「いや――」


 今更断る事なんて出来ないだろ。


「いいんじゃないか?」


 俺も肯定すると、ステラの顔が一気に明るくなった。

 その顔を見れただけで俺は満足だよ。


「失礼します。マヨコーンピザのお客様」


 その時、店員が料理を運んできた。

 ルナが手を挙げる。

 店員さん。全部ルナの前に置いていいですよ。


「――オムライスのお客様」

「は、はい。ありがとうございます」


 と思ったらステラも手を挙げる。

 え?ステラさん。あなたもですか?

 食いしん坊キャラと食いしん坊キャラ。キャラ被りである。

 あれか?やっぱり、ある大きな部分に栄養が必要なのだろうか?

 二人とも立派だものな。


「さっ!食べよう食べよう」

「はい」


 二人ともとても美味しそうに料理を食べだした。

 俺はコーラをすするだだけだけど、見てるだけでお腹いっぱいだよ。

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