平凡な俺には友達がいない

 友達の作り方を教えて欲しい。

 そう言ったな。

 そんなの俺が知りたいくらいである。

 自慢ではないが俺の友達なんてアクルくらいしかいないのだ。

 聞く相手が間違っているだろう。

 と、それまでなら考えていただろう。


「そんなの簡単じゃん」


 だが今は違うのだ。

 ここに友達作りのプロフェッショナルがいらっしゃるのである。


「ルナさん!お願いします!」


 俺はルナに向かって舎弟のように頭を下げた。

 そこには何のプライドもない。


「え?急に何?何?」


 ルナは激しく困惑する。

 察してくれると助かったのだが、急な展開に着いて来れなかったようだ。


「いや、俺友達いないし」

「えー、私がいるじゃん!もうー」


 女神かなにかか?

 いや、彼女こそがDEAである。


「それでも、ルナとアクルしかいないし」


 結局そういうことになる。


「じゃあちょうどいいね」


 なにがちょうどいいのだろう?


「ステラちゃんってソル君と同じクラスだよね?」


 その言葉で何を言わんとするかわかってしまう。

 なので俺はその返事の準備をした。


「ソル君とステラちゃんが友達になれば解決だね」

「無理だ」


 即答した。

 思った通りの言葉に対して、準備通りに即答したのだ。


「え?なんで?」


 ルナは心底不思議そうに聞く。


「いや――」


 思春期の男子が女子と仲良くなるというのは本来難しい事なのだルナは男女問わず話しかけるし話しかけるのが普通の事なのかもしれないが俺はそんな普通を知らない最悪話しかけただけで晒し者にされる可能性すらあるそんなリスクを取るくらいなら俺は話しかけないと言う選択肢をとるだろういや俺と言うか多くの男子生徒はそういう選択肢を取っているのだ。


「無理だろ」


 頭の中に思い浮かべたことは全て呑み込んで、俺は同じ言葉を繰り返した。


「だからなんでさ」


 呆れたようにルナは繰り返す。


「あっ!」


 しかしすぐに納得したように頷いた。

 わかってくれたかと期待する。


「もしかしてステラちゃんに何かした?」


 違う。誤解だ。なにもわかっていない。


「いや、なにもしてない。ってか小学校から一緒だけど、ほとんど話したこともない」


 それはつまり、これからも彼女と俺の道が交わることはないということである。


「えー、幼馴染じゃん」


 そうかもしれないが、小中高が一緒なだけで幼馴染なら、同じ条件の奴はそれなりの人数いるだろ。小中からも一番近い平凡な高校なのだし。


「ルナが友達になればいいと思うんだが」


 俺の中では最初からそのつもりだ。


「んー、それはそうなんだけどね」


 ルナは顎に手を当てて何かを考えている様子だった。


「相談は友達の作り方を教えてください、だからなぁ」


 ルナが呟く。

 友達が欲しいとは微妙にニュアンスが違う。しかしルナでは駄目で俺でいい理由にはならないだろう。

 DEA側の人間では出来レースだから友達の作り方が学べないと言う話であるなら、そもそも俺もルナも駄目ということになる。


「よしっ!」


 ルナが言って、スマホを操作してるのが目に入る。

 嫌な予感しかしない。


「そろそろ時間だから戻ろっか」


 ルナは俺にスマホを返しながらそう言ったのだ。

 いや、何をしたのか教えてくれよ。


「あ、ああ」


 俺は不安と共に返事をし、画面を見る。

 そこにはルナが上水流さんに送ったメッセージが表示されていたのだ。

 まずは同じクラスのソル君に帰りの挨拶をしてみましょう。

 ルナが勝手に送ったメッセージはそう書かれていたのだ。


「お、おい、これ!」

「あはは!後で報告よろしくねー!」


 俺が抗議の声を上げた頃には、もうルナは走って校舎へと向かっていたのだった。

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