平凡な俺の答え合わせ
俺達は駅前のマックへと移動すると、注文をして四階の席に座った。
わざわざ四階まで上ったのは単純に混んでいるからである。元々混む店の日曜だから仕方がない。
「んー、おいしい!」
ルナが眩しすぎる笑顔で言う。
食べているのはチキンクリスプのセットだ。
こういう風に素直に表現をし、
「ありがとね!」
素直に感謝を述べれる人間が好かれるのだろうと思う。
「いや、いいよ」
俺もダブルチーズバーガーのセットを食べていた。
休日の横浜に出かけるなんて疲れる要素しかないので腹が減って仕方がなかった。
その時、スマホが鳴った。
「え?」
俺は食べながらスマホを見て、その内容に驚く。
「どうしたの?」
ルナが興味津々に聞いてくる。
「山中さんからだけど……」
俺はルナへとスマホを渡す。
ルナはスマホを受け取り見ると、
「え~!凄い!」
興奮しだした。
「進君に告白されて付き合う事になりました。デアさんのおかげです。ありがとうございます。だってさ」
そして、その内容を読み上げたのだ。
「あ、ああ、これで依頼は達成だな」
「やったね!」
ルナが喜びながら手の平を差し出してきた。
一瞬理解できなかったが、すぐに理解する。
いや、これあれだよな。
ハイタッチみたいな。
「え……あ……」
だが俺は女子の手を触るとか、それは、あの……
ないだろう。小学校の時ならあったかもしれない。だが普通の高校生にはそんな機会はないだろう。
戸惑う俺を見て、ルナは不思議そうな顔をしながら小首を傾げた。
しかし手は下げない。
俺がハイタッチするまで終わらなそうである。
仕方がない。
俺はルナの手に自分の手を軽く合わせた。
勢いがなかった目、小さくパチンと音がする。
「いぇーい」
上手くハイタッチが出来たとは言えないだろう。
しかし、ルナは笑顔でピースをしたのだ。
「い、お、おう」
俺も、「いぇーい」と返そうかと思ったが途中で恥ずかしくなってやめたのだった。
「あ、返事しなきゃ、良かったですねって」
スマホを弄りだしたルナを横目に、俺は物思いに耽りだした。
考えるのは、この相談の答え合わせである。
今回の依頼に関して、相談は二つあったのだ。
一つは当然山中さんから、もう一つの相談は石川からである。
山中さんからの相談はルナと話した通りだ。
石川からの相談は、「好きな人を追いかけて同じ委員会に入ってしまいました。キモいでしょうか?」だったのだ。
つまり、俺は最初から二人が両思いである事を知っていたのである。
何故ルナに片方の相談しか見せなかったのかと言えば、ほどよくやり応えが合って、絶対に失敗しない相談を持ってきたというだけだ。
初めてのDEAでの活動。失敗することなく、気持ちよく終わらせてあげたかった。それだけだ。
当然、この事実は墓場まで持っていくつもりである。
だから今、心の中にしまった。
「でも、どこで告白したんだろうね?」
ルナが不思議そうに聞く。
「さぁ?」
それは俺も不思議だったのだ。
先程来たメッセージは、「今日、告白しようと思います」という石川からのものだったのだ。
俺がルナを連れ出したのは、そこまで見るのは悪いと思ったからである。
とはいえ、こんな人の多い横浜で告白するとは思わなかった。
電車で帰り、帰り道とか、近所の人気のない公園とか、そういうところでやるものだとばかり……
つまり、これほど早く結果を報告してくるとは思わなくて困惑していたわけである。
「まあ、そんなのどうでもいいんじゃないか?」
依頼は上手くいったのだから。
「そうだね!それで、私の入団試験はどうだった?」
そんなつもりはないのだが……
マイナス15店で85点と言ってやろうかとも思ったがやめておく。
「100点だ。君のDEAへの入団を認めよう」
「ははー、ありがとうごぜえます」
急に百姓風になる。
「うむ、今後も精進するのだぞ」
「あはは、なにそれ」
ルナは笑い出した。
そっちがやりだしたんだが。
理不尽ながらも、ルナの楽しそうな様子に俺も、「ふっ」と小さく笑ったのだった。
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