平凡ではない彼女の答え

 今すぐ告白しろ。

 それは陽キャが過ぎると一度ツッコんだが、今は事情が違う。

 

「なんでそう思ったんだ?」


 今は彼女たちの様子を窺った後なのだ。


「石川君の方も茜の事好きだよね」


 まっ、そう言う事だな。

 だけど、俺は敢えてわからないフリをする。

 

「ただ仲が良いだけじゃなかったか?石川の方にその気がなかったら振られるかも?」

「えー、ソル君意外と鈍いねえ。あれは絶対石川君の方も好きだったよ」


 鈍いと言われてしまった。

 いや、それは間違いではないのだろう。

 多分俺はあの場面を見ただけでは見分けがつかないのだ。


「なんでだ?」

「んー、女の勘かな!」


 はい、落第ね。

 と言いたいところだがまあいい。

 

「それで、どうするんだ?」


 俺はDEAの画面を開いてルナへと渡した。


「そんなの決まってるじゃん!」


 そうだ、お互い好きあっていると言うのなら返信は一つだけである。

 「相手もあなたに好意を持っているように思います。告白したら成功すると思いますよ」

 例えば俺ならこう返すだろう。


「デートだよ!」

「は?」


 しかし、ルナの答えは違ったのだ。

 俺は思わず間抜けな声と共に口を開けてしまう。


「え?」


 ルナも俺の様子に困惑したような顔をする。

 何か間違えたか?とでも聞きたげである。

 いや、間違えてはいないのだが……


「そこまでする必要があるのか?」


 いつもそこまで深入りはしていないのだ。

 アドバイスをして、あとは勝手にやってくださいみたいな感じである。

 恋愛相談でお互いが好き同士なら後で、「上手く行きましたと」報告が来るので間違ってはいないはずだ。


「あるよ!ちゃんとした雰囲気を作って告白しないと失敗するもん」


 ルナは凄い剣幕で迫って来る。


「お、おう」


 俺はたじたじだ。

 ま、まあ、この依頼はルナに任せたのだから文句は言うまい。


「じゃあ、それで」

「うん!」


 ルナは嬉しそうにスマホを手に取って返信を打ち出した。


「これでいいかな?」


 それはすぐに終わり、俺へと見せてくる。

 書いてある返信は。「勇気を出して彼をデートに誘いましょう。きっと成功します。日曜日にショッピングなんてどうでしょう?」であった。

胡散臭い恋愛サイトみたいな内容だが別にいいか。


「いいんじゃないか?」

「オッケー。じゃあ送るね」


 返事を送信して、ルナは飯を食いながら待つ。

 すると、割とすぐに返事は返って来た。

 それだけ向こうも必死なのだろう。

 

「えっと……難しいけどデアさんがそう言うのなら頑張ってみます。だってさ」

 

 よし、今度こそ依頼は完了だろう。

 これで仲が進展すれば関係性も変わるはずだ。

 あとは付き合い始めたと言う報告を聞けばいいだけだ。


「それじゃあ」

「うん、それじゃあまた日曜日だね」

 

 

 だから、俺はこれで依頼の完了を告げようとしたのだが、ルナは俺の言葉に言葉を被せてきたのだ。


「え?」

 


     ♦



 4月14日日曜日。

 その日は春だと言うのにとても暑い日だった。

 少し前に気温が下がったと思ったら急に暑くなった、そんな日だった。

 こんな暑い日は俺は家でゲームでもしているのが常である。


「え?」


 しかし、俺はこの日外に出てしまったのだ。

 電車に乗り、横浜駅まで出てきてしまったのだ。

 

「どうしてこうなった」


 正直帰りたい。

 日曜日と言う事もあり人が多い。

 陰キャと言うのはアイスクリームのような存在なので人混みに揉まれたら溶けてなくなってしまうのだ。

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