隠し部屋

第10話 夢か誠か

――――――数日経った夜。

夢の様な空間で瑠花に会った。


『侑海、こっち来て。』

『…眠い。』

『いいから』

『…なに?』


瑠花に薄暗い部屋に通された。


『そこ座って。』

『…やんねぇぞ。』


その部屋にはベットが1つのみだった。



瑠花は静かに僕に口付けた。


『瑠花…』


瑠花が持つ独特の甘い香りと柔らかな空気にやられそうになっていた。


『お前、おっさんと出来てんだろ?…』

『それは無い』

『嘘だろ』

『嘘じゃない』

『俺には咲が居る』

『そんなにあの子がいい?』

『うん』

『そっか…』


直後、瑠花は目の前から消えて、

ドアが開いて沙耶が入ってきた。


『もしかして…』

『なに?』


沙耶は僕の目の前に来ると僕の頬を両手で包み込んだ。


『……』

『大丈夫。あたしがいる。』


僕は沙耶の手の温かさで涙が溢れていた。


…僕がベットに座ると、沙耶は僕の上に乗った。



『何して欲しい?』


僕は沙耶に抱きついた。


『不安だったよね。こっちの方がいいね。あんたは。』


やはりそうだった。


『さあや…』

『なに?』

『キスして』


僕がそうお願いすると、沙耶は優しくキスしてくれた。


『ぁぁ……』


瑠花と同じ歯の立て方をされて思わず声が漏れた。


一瞬目を閉じて次に目を開けると沙耶から咲に変わっていた。

でも僕にはわかる。これは咲じゃない。

この空気は沙耶。


『さあや。無理だよ。俺にはわかる。他の人になることが出来ても、咲には誰もなれない。咲は咲でしかない。』


すると、沙耶は舌打ちをして僕をドアの前まで手も触れず突き飛ばした。


(咲……痛い…)


すると、ドアが開いた。


「大丈夫。これは『夢』だから。『悪い夢』」


そう言ってしゃがんで僕を包み込むと、

沙耶を睨みつけた。


すると一瞬にして沙耶は消えた。




『侑海、帰るよ。もう大丈夫。帰ってもう少し寝よ。疲れたよね。』

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