第5話 世界と行為と

―――――――――世界。


多分咲といた『白い家』はこの世界の一部。

いわば『安全地帯』


沙耶のマンションもそう。

僕の籠るアパートも、ビル地下も全て。


となると…瑠花の『役目』は?

何故瑠花を助けたのにまたあの場所に戻った?

瑠花を管理するクソジジイは?



僕の勘でしかないが、

多分、一番爪を隠してるのは咲だと思う。

一番腹が座っている女。

適度に安心感を与え、適度に不安感を与え、適度な距離感で接する。

必要があれば力を使う…。

使い方を知らないだけ。


この世界の創造主マスター は僕だけど、

咲は多分それをサポートする者。

暴れないように、壊さないように、塞ぎこまないように、適度に回してくれる人。


だからなのかあいつを嫌う人間は一人もいない。あいつが誰かを悪くいうこともない。

恨むべき人間でさえも、冷静に見て、認め、敬う。


…そんな咲にまた惹かれる。

でも、僕には咲は敷居が高いのかもしれない。

『高嶺の花』なのかもしれない。


だとしたらお互い手の内におけて、

縛り付けあえる沙耶さやの方がお互いの身の丈にあってるのかもしれない。


『生かせる為の行為』が僕と沙耶。

『不安を埋める行為』が僕と咲。

『苦しみから逃げる行為』が翠と僕。

『純粋な行為』が麗美。


どれが正しいとか

どれが間違ってるとか


そんなのはどうでもいい。

僕がこの人達の前をウロウロしてたのは、

居場所が欲しかったから。


世界を隔ててその隔てた世界の中で

何となく生きてる。


そんな感じ。




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