第4話 陰と陽

―――――――――アパートの一室。


「話したくて来た。」

「うん。」


僕は時を超えて何十もの壁を作って沙耶とアパートに籠っていた。



「……迷惑なら消していいよ。俺の事。その方が有難い。そうしてくれたら誰にも迷惑かけなくていい。どの世界からも消えたい。息してるだけで、歩いてるだけで誰かに迷惑かけてるから。もう死にたい。」


「あんたそれ、咲に言えてんの?」

「言うわけないじゃん」

「言いたくない?」

「……必要以上に暗い話したくない。」

「じゃあ綺麗な話だけ?」

「…こんな真っ暗な洞穴ほらあなみたいな所に呼べるのはさあやだけ。………でも迷惑なら出てけ。もういい。消えろ。もういい。消えろ。」


僕が膝を抱えて耳を塞ぐと、沙耶が僕を包み込んだ。


「ここに呼ぶ相手はあんたが本当に心許してる相手でしょ。カッコつけなくていい相手。そんな相手にそんな事言っていいの?怖いから呼ぶんでしょ?」


「お願い…殺して。さあやなら簡単でしょ?」

「…あたしは止めるほうだよ。何回あたしのマンションで話した?」

「なんで背中押してくんないの?」

「ん?あたしのエゴ。あたしが生かせてたいからそうしてる。」


「…さあやは自分の力どれくらいあるか知ってんの?」

「一応ね。咲も、あのピンク女もあたしからしたら子供みたいなもの。あえて言わないけどね?でも咲は怖い。あいつはあたしなんかゆうに超えていける力のある子。気付いてないだけ。」


「さあやは俺を縛っておける?」

「咲は緩いからね。紐が長すぎる。でも、あたしが前に出ていかないのはキツすぎるから。多分…信愛さんに近いから。頭で考える前に先に動いちゃうから多分縛り付けちゃう。。そこがね…不安。」



僕は…沙耶の首に手をかけた。


「…知ってる?お前の一番いいところ」

「どこ…?」

「…俺に染るところ。全身で俺にお前を捧げてくれる所…。」


僕は首ごと引き付けてそう耳元で囁いて、

指先でジャラジャラ付けたピアスを撫でた。


「何個付けたっけかな…本当はね…もっと付けてやりたい…俺だけのお前だからさ…。…不思議なんだよな。お前だけは不安じゃない。『どこにも行かない』って、どれだけ穴開けても傷付けてもお前は俺だけを見てる。…そう感じる。そういう愛し方をお前は望んでて俺も望んでる…。違うか?」


そう聞いて僕が首から手を離すと、

沙耶は僕の頭に腕を回して引き寄せてキスして囁いた。


「あたしの体はあんたのもの。好きに使って。…あたしは、咲とは違う。それはあんたが一番知ってる。…怖いの。あたしも。でも私は誰よりもあんたに染まれる。その自信はある。」


「……お前見てると痛めつけたくなる。」

「…して。」

「でも…こうしても欲しい。」


僕は沙耶の手を取って僕の服の中に直接手を入れて摘ませた。


「…嫌ならいい。…んぁぁ!……。」

「あたしの手でそうなってるあんたが好き。」

「…もっと欲しい。」

「教えて?…もっと知りたい。」

「嫌われるかも…」

「嫌わない」

「さあや…」

「どっちも好きなんでしょ?知ってる。あたしもだから。…というかあたしはあんたに全部捧げたいの。…嫌われちゃうかな。怖くてここまで言えなかった。」

「さあや。大丈夫だよ。俺は…その…病的に愛して欲しいから。カッコつけたり、プライド保ったり、そういうの要らない。」


――――――――――――――――――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る