02.20 :vs色彩戦隊カラーマン
王都に戻って少し経ってユリン嬢などゴフジョー辺境伯家ともまた会うようになったある日、冒険者ギルドの訓練場にて俺達は訓練の一環で他所の冒険者パーティーと模擬戦をすることになった。
相手は14〜15歳くらいの5人組パーティー。そしてこっちは俺、ルア&アーク、ユリン嬢、シアの5人。シアを入れても向こうがちょっと年上ではあるが、ウンゴーレムを考えるとちょいこちらが有利か?
なんてちょろっと考えていたら、向こうはポーズを取って名乗ってきた。
「アッカー!」「アーオ」「キイ!」「ミドーリ」「そして、モーモ」
5人揃ってぇ……
ババーーーーン!
「「「「「色彩戦隊カラーマン!!」」」」」
カッケェエエエエッ! 草生えて、それがめっちゃ広がって、この星の全てが草原になってしまうレベルに。海原も砂漠も氷河もみーんな、草原になってしまうレベルに。
俺は後ろをチラッと見た。すると、ルアがずずいと俺の方に迫って来て言った。
「インドール様、ボク達はやりませんからね。や・り・ま・せ・ん・か・ら・ね!」
目がクワッとしていた。表情がカッチコチになっていた。
アークも俺の服の裾を抓んで言った。
「インドール様、ぼく恥ずかしくてああいうのは出来ないです……」
アークのそれは、まるで可憐な少女のようだった。服装、スカートでもあるしね。だが、騙されてはいけない。アークはネコミミ・ボーイだ。
嗚呼残念、排泄戦隊トイレンジャー結成にはなれなかったか。脳内妄想で主題歌も作成しようとしたところだったが。
そんな俺の横にシアが立って、サラッと告げた。
「私達はGB(仮)です」
「では、始めて下さい」
審判役の受付嬢もまた、あっさりと試合開始を宣言した。つれないねぇ。
とは言え、あちらさんは戦闘準備完了だ。こっちも気を取り直すか。
「カモン、グアノ!」
俺はUSAのポーズでグアノを召喚した。……言うまでもなく、USAのポーズである必要性は全くもってない。
あちらさんの赤がグアノを見て不敵に笑う。
「クックック、それがちょっとだけ噂になったゴーレムか。おもしれぇ。やってやろうじゃねぇかぁ」
尚、後出しになったがこれはあくまでも試合であり、模擬戦であり、鍛錬である。殺し合いではない。
その為、俺達の武器は殺傷力のない木剣や木矢に変えられている。そして、木爪なんて素敵なものはなかったので、グアノは手袋だけで武器はなしだ。
その上で俺達5人✕2組はそれぞれ頭の上に金魚すくいのポイみたいなものを装着させられた。それを打ち抜かれるか、壊されるとリタイヤとなり、先に5人全滅した方が負け。そんなルールだ。
ちな、グアノの頭の上にポイはない。頭数ではなく、魔法の一環だからだ。と言うことで……
「じゃあ、行くぜ。ヒア・ウィ・ゴー、グアノ!」
俺はグアノを真っ直ぐあちらさんに向けて突っ込ませた。そのまま踏み込ませ、赤に向けて左のパンチを繰り出したが。
「そうはさせない」
青が赤の前に立ちはだかり、盾でグアノの攻撃を防いでしまった。左、右、左、右、4度程殴りかかったが、少し後退りはしたものの、ダメージにはならない。
さて、どうしようか。なんて、ちょっと立ち止まって考えた隙をあちらさんは見逃さない。
「行くぜ!」
すぐさま青が横に退き、赤が木剣でグアノへ斬りかかってきた。うん、予想通り。
その攻撃を軽いバックステップで回避。それから大きくバク宙で下がらせた瞬間に。
「アイスアロー」
「ファイアーアロー」
ルアとアークの魔法攻撃がグアノの退いた場所を貫き、赤達の場所へと襲いかかった。
それは決定的な攻撃ではあったが。
「だから、そうはさせない」
青が再び赤の前に立ちはだかり、盾で2人の魔法攻撃を防いだ。まあ、そうなるよな。
それは俺達も考えていたので。
「アーオ、失格!」
2人が魔法攻撃するのとほぼ同時に、シアが右回りで斬撃を仕掛けていた。赤ではなく、青に向けて。
シアの斬撃はあっさりと青のポイを破壊していた。青は驚いた顔をしながらも盾を下げ、戦闘を止めた。
「チイッ!」
赤は青が撃破されたのを見て、一歩後ろに下がった。シアもまた、赤や青から下がって距離を取った。
その空いた空間を、ルアとアークのファイアーアローとアイスアローの第2段が赤に向かって放たれた。
「チイッ! チイッ!」
赤は舌打ちしながら、斬撃で2本の矢を防いだ。態勢を崩しながらどうにか。
それは隙。緑焦った様子で。
「援護します! ウィン…」
「ミドーリ、失格!」
魔法攻撃しかけようとしたが、ユリン嬢の放った矢が緑のポイを貫いた。緑はガックリとしたが。
俺はそちらには目も向けず、グアノを赤へ真っ直ぐ向かわせた。赤の態勢がととのわない内に再び赤へパンチ。
「クッ!」
グアノのパンチで赤が後退った。それだけではポイに影響はなかったが。
「アッカー、失格!」
後退ってまた隙の生まれた赤のポイを、シアが忍び寄って貫いた。
アアアア! 赤は奇声を上げながら驚き、ガックリと地に手をついて項垂れた。
その様を見ながら俺は……
「キイ、失格!」
後ろに忍び寄ってきた黄のポイを木剣で貫いた。俺が攻撃をされる前に。
黄は少し驚いた顔をしたもののすぐ真顔に戻り、俺に訊いてきた。
「な、なぜ、気付いた?」
「気付いたと言うか、そうするだろうなと思って」
ここまでやられてしまったならば、俺ならばせめて一矢報いたいと考える。そして、忍び寄って俺(敵将)の首を狙う。
そうするんじゃあ、この辺かな? 思ってテキトーに突いたら当たった。それだけだった。
さらに言えば、あちらさんの役割は赤が前衛・攻撃、青が前衛・防御、緑が後衛・魔法攻撃、ピンクが後衛・魔法回復&補助で、黄は斥候なのだろう。役割が分かり易かったのもこちらの有利となった。
「で、続ける?」
「降参よ」
残ったピンクに確認すると、戦う意志はもう無いと両手を上げた。
まあ、後衛・魔法回復&補助役が1人残されてもやれることはないよなぁ。
「モーモ、降参! よって、この模擬戦はGB(仮)の勝利です!」
おおおおおおおおおおおおおっ!!
俺達の勝利が告げられると、この模擬戦を見ていた野次馬達から歓声が上がった。それは地面が揺れそうな程に大きなものだった。
小さいガキばかりなのに、コイツ等すげーぞ!
将来有望じゃないか!
そんな讃えてくれる声ばかりだったので、悪い気はしなかった。このチームとしては上々の滑り出しと言っていいだろう。
ただ、俺個人としてはもっとやれることがあったとも感じていた。まあ、そこは要鍛錬といったところか。
と、綺麗に話を終えようとした時だった。
「おおっ、中々やるガキ共じゃねぇか。次は俺達が相手だ」
「え?」
出て来たのは20代後半位の年代の5人組パーティーだった。明らかに上級冒険者パーティーだった。
え、めっちゃ遠慮したいんだけど? そう言いたかったのだが。
「おおっ、今度は上級冒険者集団、ハイ・プレッシャーが相手かよ!」
「すげぇな、アイツ等何処までやれそうだ!?」
野次馬共が勝手に盛り上がり、その上級冒険者集団も煽り、引っ込みがつかなくさせられ……
また模擬戦をやらされることとなった。
「では、ハイ・プレッシャー対GB(仮)、試合開始!」
その模擬戦はほぼ手も足も出ず、負けてしまったのは言うまでもない。
「よくやった。インド、そしてユリン嬢も」
「うむ、よくやったぞ。ユリン、そしてインドール君も」
冒険者ギルドでの模擬戦から数日後、俺達は何故かバウルムーブメント家とゴフジョー家の双方の父親から絶賛されていた。2人の父はどちらもニッコニコである。正直、ちょっとキモいくらいに。
どういうこと? 疑問に思った俺へ回答するように、我が父はベラベラと喋った。
「14〜15歳の年長者である冒険者パーティーと模擬戦をして、無傷で圧倒したそうじゃないか。儂は優秀な子供達を誇りに思うぞ!」
「そうだ。倒した相手もそこそこ優秀なパーティーではあったそうだ。それを加味すると、さらにそのようなこと、容易に出来ることではないからな!」
我が父もユリン嬢の父上もそう言い、俺達のことを大絶賛した。もうニッコニコ、ニッコニコ二ーで。
どういうこと? 俺は模擬戦のことなんか誰にも話さなかったんだけどなぁ。疑問の目をパーティーメンバーに向けると、下手人はあっさりと自白した。
「模擬戦のこと? 話すに決まっているじゃないですか。ダイアリア様から訊かれますもん」
そう話したのはルア。
時々母に呼び出され、俺の様子を訊かれるらしい。立場としては正直に話さざるをえないという訳か。うん、責められん。
「ゴフジョー家ではユリン様のことを報告しますよ? それが私の仕事ですから」
ゴフジョー家側ではシアが報告していたらしい。
そう言えばシアはユリン嬢の側用人ではあるが、雇用主はゴフジョー辺境伯家当主だったな。じゃあ、報告義務があるのか。
まあ、隠してほしいとまでは言っていなかったことではあるが……正直言うと話したくないことでもあった。
「でも、次の模擬戦ではあっと言う間に負けてしまいましたよ?」
そう、何か西の革命みたいな名前のパーティーには手も足も出ず、あっと言う間に負けてしまった。それを考えると、誇れるようなものではないと思っていた。悔しさを噛み締め、次に繋げることと思っていた。
が、俺達の2人の父は首を横に振った。
「お前達はまだ小さい子供なのだ。そこまで出来るものではないよ。成長していくに従って強さを得て、出来るようになっていくものだ」
「うむ、その通りだ」
「……………………」
2人の父はそう言ったが、その言葉にすぐ「そうですね」と言いたくはなかった。俺には前世の記憶がある。それを考えると、子供だからという理由は通じないように思えたからだ。他人からの評価ではなく、俺自身の評価で。
前世の記憶がある俺だけでなく、それがない筈のユリン嬢も何処か納得出来なそうな顔をしていた。
その俺達の様子を見て、2人の父は少し真顔になってから訊いてきた。
「納得出来ないか?」
「…………はい」
「では色々と学び、色々と鍛錬を積み、ありとあらゆる意味合いで強くなっていくしかあるまい。1人ならば大変な道程であろうが、2人ならば大丈夫だろう。出来るな?」
「「はい!」」
俺とユリン嬢は同時に返事をした。
こうして俺達は、王都で一緒にいる時も領地で離れている時もそれぞれ鍛錬をし、色々と学び、この世界で成長を重ねていった。互いに話をしたり、手紙を送り合ったりするのは想像以上にそれらを取り組むモチベーションになってくれた。
そうして3年の月日が流れた。
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