01.02 :What is ウンゴーレム?

 ウンゴーレム Lv.1:自身の大便を材料にし、ゴーレムを造ることが出来る能力。他者の大便は利用不可。

 造られたゴーレムは意のままに動かすことが出来る。能力の経験値を積み重ねてレベルを上げれば、ゴーレムへ色々なスキルを付与することも可能。




「おおぅ……」


 俺は少し目眩がした。そんな気がしたくらいにおかしな、イカれた能力だった。ウ○コ、ウ●コ、ウ△コ、ウ▲コ……ウ☆コ!!

 そんな思考に入ったので、神父が何やら締めの挨拶に入っていたようだったが、その内容は俺の頭に一切入らなかった。どうせ内容は無いようなのでどーでもいいか。って、寒っ。

 まあ、それは置いておいて。


「インドール、どんな能力を頂いたのだ?」


 家族席へ戻ると、父・母・兄が揃ってサンタクロースからのクリスマスプレゼントを開ける直前の子供のような、ワクワクを隠せない笑顔で待ち構えていた。

 そんなスリー・チルドレンに何と言えばいいか。まあ、理想と違ったクリスマスプレゼントでガッカリしてしまうのもあるあるか?

 そんな考えに至った俺は、楽な気持ちで言った。


「ウンゴーレムでした」

「それって、どういう能力なのかしらぁ?」


 母は首を傾げた。デスヨネー? ミー・トゥーよ? 俺も絶賛首傾げ中よ?

 なので、おれの返しもサックリと。


「よく分かりません」

「分からない?」


 ええ。俺は頷きながら考えを巡らせた。本当にウ★コでゴーレムが造れるのか? 天っぽい所からみょみょ~んって降りてきた言葉を鵜吞みにしていいのか? 全て正しいのか? 何処まで出来るのかなどなど。

 一つ一つ検証してみたいな。まずは他者の大便は利用不可という点。ただ、この領都の街にはウ□コは落ちていない。何処ぞのインドールというドラ息子が下水道というものを配備してしまったそのせいで、とても綺麗な街にしてしまったからだ。F**Kwwwww

 とは言え、そこら辺の家へ行って「ウ■コ分けてもらえませんか?」とは言えねぇしなぁ。じゃあ、と考えて俺は両親に訊いた。


「この近くに牧場はないですか?」

「牧場? 北の端にバイソンさんのバイソン牧場があるけどそれが何なの? 貴方の能力に何か関係があるの?」


 母は不思議そうな顔をして俺に確認してきたが、俺はその問いに即答する。


「ええ。そこでどういう能力を授かったのか確認したいと思いまして」

「じゃあ、バイソン牧場に伺ってみるのでいいのかしら?」

「OK牧場♪」

「だから、そんな名前じゃなくてバイソン牧場と、ってインちゃん? 待ちなさい」


 俺は母が何か言い切る前に駆け出した。検証できるならば1分でも1秒でも早い方がいい。そうに決まっている。

 急いだ気持ちな俺は、中々動かない3人を急かす為に言った。


「ほら、母上父上兄上。急いで急いで急いで。馬車は待ってくれませんよ!」

「馬車はウチの専用だから待っていない訳ない……って、聞いてないわね」






「領主の皆様、いらっしゃいませ。此処がオラの牧場でごぜぇます」


 俺達はOK牧場、もといバイソン牧場に到着した。そして、そこの親父さんに牧場内を案内してもらった。牛舎、搾乳所、放牧地など、案内してくれた場所は興味深いものだったが、それはそれとして。

 俺は牧場の中で最も臭い糞の堆積場へ赴いた。そこでは想像以上の獣臭と糞臭の混じった超絶悪臭が蔓延していた。


「此処は牛っこ達の糞を重ね、発酵させて堆肥を作っているんですわ。貴族の皆々様がご覧になるような場所じゃございやせん」

「そうよ、インちゃん。他の場所へ行くわよ〜」


 母も俺の服の裾を掴んで引っ張って、別の場所へ連れていこうとした。おおマザー、それは聞けぬ。此処が俺の目的地なのだから。

 俺は掴む母を振り切って、一歩前へと踏み出した。そして、積み上がった牛糞に向かって手を翳し、咲けんだ。


「ウンゴーレム!」


 ↓

 ↓↓

 ↓↓↓

 ↓↓↓↓

 ↓↓↓↓↓


「「「……………………」」」


 しかし何も起こらなかった。無機室なタイプ音の幻聴が頭の中に響いた。

 ひとまずただ手を翳して呪文を唱えるだけではダメか。何かやってみるか。


「モーモー体操第1!」


 ちゃーんちゃーららっちゃっちゃ……♪

 おうっし、にー、さんしー、もーもー、さんしー……

 おうっし、にー、さんしー、もーもー、さんしー……

 ラジオ体操をベースに牛っぽい動きを加えたオリジナル振り付けを即興で創り、踊り、そして唱える。


「ウンゴーレム!」


 牛糞なのだから、牛っぽい動きを入れればワンチャンいけるかも? ってチラッと思った俺だったが。

 ↓

 ↓↓

 ↓↓↓

 ↓↓↓↓

 ↓↓↓↓↓


「「「……………………」」」


 しかし何も起こらなかった。無機室なタイプ音の幻聴が頭の中に響いた。そして、モ〜〜〜〜……牛の鳴き声もまた、それに重なった。


「何をしているのとか、聞きたいことはあれこれあるけれど、インちゃん。結局貴方の授かった能力って何だったの?」

「ウンゴーレムです」

「…………何、それ?」


 揃って首を傾げるバウルムーブメント家の面々、気持ちは分かるぞ。俺も昔(2時間くらい前)はそうだった。

 俺はウンゴーレムという能力の概要を家族に話した。


「じゃあ、インドの便じゃないとダメなんじゃないか?」


 俺の説明を聞き終えると、兄はそうツッコミを入れてきた。まあ、その通りなんだけどね。

 それは出来ないのです。


「今朝の俺、ズバッと元気に快便だったのです。なので、今日はもう出なそうかなと。なので、本当に俺の便じゃないとダメかどうかの検証から入ったのです」

「僕の能力で出してあげてもいいけど?」

「いやぁ、最初のくらいはナチュラル・ウ▽コでやってみたいじゃないですか」

「そういうものなんかね?」


 そうですよ。と言うことで、俺の能力検証は明日へ延期となった。まあ、急ぐようなものでもないのでそれで良かったのだろう。

 その日の晩は兄の時と同じように俺の誕生日パーティーもバウルムーブメント家内で行われたのだが、その日はもう俺のウ▼コが出ることはなかった。






「次の日!」


 俺は昨日と同じようにパチリと目を覚ました。外から来るチュンチュンという鳥の鳴き声を聞きながら、此処は日本じゃないからその鳥もスズメではないんだろうなと思いながら。

 モーニング! ベッドの上に立ち上がって、両肩をちょっと上げてMっぽいポーズをしてからベッドを下り、着替えてトイレで軽く小便をしてから家族の待つ部屋へと向かった。朝食の時間だ。それはいつも通りの朝だったのだが。

 家族揃って朝食を食べる部屋に俺が入ると、父母兄の3人が待ち構えていて、その視線がグリッと俺に向いた。その皆の目が語っていた、wkwkと。

 ああ、俺の能力が出るのを楽しみにしていたのか。とりあえずだが、朝起きて次の瞬間にウ*コは出ねーよ。それを分かってはいるのか、3人共それを言葉にはしなかった。だが、食事中俺をチラチラ見るのは変わらなかったし。


「さぁ、インちゃん。こちらも食べなさい」


 母はいつもより多くの食事をさせようとしてきた。その母の目が語っていた。たくさん食べて、早くウ$コをしなさい。そして、能力を見せなさいと。

 そんな妙に緊張感の漂う朝食の後、俺はいつも通りトイレに行って、いつも通りに排便した。出て来たのもいつも通りのウ¥コで、俺はいつも通りの快食快便ハッピーセットだった。残念ながら、緊張による便の乱れはないらしい。


「ふぅ……」


 そんなことをチラッと思いながら、俺は臭いトイレの中で一つ深呼吸をして、そして自分のウ#コを真っ直ぐに見下ろした。このウ♭コが出るまで、どんな呪文が必要なのだろうかとか、どんなポーズやダンスが必要なのだろうかとか、あれこれ考えていたのだが、このウ%コを見ただけで分かった。ウンゴーレムという能力が教えてくれた。

 そんなものは不要だと。


「ウンゴーレム!」


 ウÅコに向かって手を翳すと、俺のウ◎コが光を纏いながら胎動し始めた。そして、手から何となく力が持っていかれている感じもした。魔力を消費しているのだろう。

 これがウンゴーレムか。俺はゴーレムということで人型をイメージすると、俺のウ☮コはみゅちゅみゅちゅと俺のイメージ通りの形へ変化していった。

 そうして、パンパカパーン♪ 人型のウ♮コは完成した。完成したソレは俺のイメージ通りの動きも見せてくれはしたが。したのだが……


「さすがに、小さいな」


 材料が8歳児の1回分の大便だけなので、その大きさはちょっと大きめな指人形程度でしかなかった。

 どうしたものか。これでは何かをやらせることは非常に難しい。


「あら、それがインちゃんのウンゴーレムというもの? 可愛い……と言えなくもないわねぇ」


 俺の後ろにいつの間にか母が立って、俺と俺のウ⚀コを見下ろしていた。母上、無理しなくていいですよ? ウ⚁コはウ⚂コですからね。

 ウ⚃コはその間にも俺の意のままに動き続けた。ウンゴーレム作成とそうさ、そのどちらも大きな負荷にまではならないようだ。まあ、指人形程度の大きさだからかもしれないが。


「ふむ、それがインドールの能力か。現状では戦闘力という訳にはいかなそうだな」


 父と兄も母の横に立って、俺と俺のウ⚄コを見下ろしていた。父は真面目な顔をして、そんな真面目なことを言ったのだが、父は忘れてはいないか?

 これは、ウ⚅コですよ? 大きな期待をしてはダメでしょうが。


「うぅぅむ、まだよく分からん能力といったところか? インドールよ、あれこれ能力を試し、どうすればより良くなるのか考えてみるんだぞ。そうすればきっと、その能力はインドールの助けになってくれる筈だ」

「分かりました」


 そうして俺が授かった能力、ウンゴーレムの初お披露目は終わった。父からの真面目なアドバイスで終わった。終わったのだ。

 その横で、兄は手を口に当てながら考え込んでいた。その結果、口を開いた。開いてしまった。


「言おうかどうかちょっと迷ったんだけど、インド。いつまでお尻丸出しでいるの?」


 俺は排泄して、すぐにウンゴーレムの能力を使った。なので、俺はズボンどころかパンツすら上げていないハーフ・ヌード状態、後ろ向きに言えば尻丸出し状態だった。前向きに言えばフルチ(以下略)。

 俺はそそっとパンツとズボンを穿いてノーマル状態へ戻った。そして、ワンチャン誤魔化せねぇかと笑う。


「おっと、ついうっかり」

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