第11話 桜の樹
「王よ、お逃げください! キャバリエは天使により全滅。もうここには戦える戦士はおりません」
「そうか。やはり天使を殺し切ることはできなんだか……。市民は?」
「皆、地下大聖堂へ避難。しかし敵には
「私が出よう。後のことはお前に任せる。なんとしてでも生き延びよ、これは命令だ」
王と呼ばれた男はひとり分厚い鉄の扉を押し開け外に出る。無数の軍事ドローンの残骸。そこに立つ神父姿の男が見えた。
「
「お久しぶりとでも言っておきましょうか。
王は剣を抜いた瞬間、その姿は神父の背後にあった。
「死ね!」
「それは無いですよ」
王の長剣は神父の短剣一本で防がれた。
「オラァーーーーッ!」
王の身体は金色に輝き
「はぁ……。
神父は
「くっ!」
「お分かりいただけたようですね。では、ご提案です。私と『契約』しませんか?」
ーーーーーーーー
「クライフ……」
「ああ、これはカイト様。それにサードさんも」
「知り合いでもいたのか?」
「いえ、知らぬ者たちです。あんな連中でもこの星に生きる
「そうか」
「カイト様。あの美しい花の咲く樹、あれは『桜』と言うそうで。旦那様がカイト様の世界のカジイモトジロウ? でしたか、その方の短編小説を何度も朗読されることがございました。そして私に尋ねるのです『意味が分かるか?』と」
「ああ」
「旦那様は何度読んでも意味が理解できないと
春の風が無数の花びらを舞い散らせる。サードが『わっ、きれい』と
俺は彼に何と言っていいか分からない。そのカジイって人の小説のことも知らなかった。桜の花びらが
✳︎この話に登場する小説と作者は『桜の樹の下には(梶井基次郎 1901-1932)』です。
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