第7話 フレスコ画
しばらく中庭を探してみたが女の子の姿は見つからなかった。多分帰ったのだろう。そう思うことにした。買い出しから戻ったクライフさんにあの女の子のことを話したが、この屋敷の周辺にはそんな子どものいる家はないそうだ。
「そうなの?」
「ええ、それに旦那様の
「ど、ドラゴン……」
いるんだ龍も。
「それにカイト様のおっしゃるような形状の水色のワンピースはこちらの世界では見ないですよ。それに
いつの間に起きてきたのかサードもそう言う。彼女は睡眠中でも
「俺、寝ぼけてたのかな……」
昨日よく眠れなかったし、そういうことにしておこうか。
サードも来たことなので、軽く屋敷の周辺を案内してもらうことにする。
「何というか想像通り過ぎて……」
中世ヨーロッパを思わせる街並み、行き交う人々。どれもかつて俺が
「あっ、あそこの
彼女はそう言うと
「どうぞ」
そう言って彼女は自分のを一口食べる。
「食べたりするんだ……」
「ええ、私たちには食事による栄養
「ああ」
彼女たちの動力源が何なのか知らない。あの悪魔も、複雑な機構で理解できないでしょうからと教えてくれなかった。そう言えば食糧調達で得た物資の中に俺は食べないチョコレートやキャンディのような物もあった気がする。ふむ。彼女たちにもそんな楽しみがあったんだ……。
「ここが
「レンブラントは地球より1000年進んでるって言ってたけど……」
「ああ、そのことですね。この中でご説明しますね」
ノートルダムとかサンピエトロだっけか、昔画像でみたような巨大な建物の中へ俺たちは入っていく。教会騎士というのだろうか警備の姿も見えるが、聖職者だけでなく一般市民も多く見える。立ち入りは自由なようだ。
フレスコ画というやつだろう。巨大な
「これにこの世界のことが描かれています」
「ほう」
どうやら世界の創造から現在に至るまでを表現しているらしい。
「芸術作品ですので暗示的ですけどね。聖書も似たようなものですけどこっちの方が文字の読めない民衆にも分かりやすくなっています」
俺もまだこっちの読み書きは怪しいところがある。それを配慮してくれたのだろう。
「あの後光がさしてるきれいなお姉さんの絵が、女神様?」
「そうです、世界の創造主とされています。名はありません、ただ『女神』と呼ばれます。この国は実在する女神様の一神教ですから、名で示さなくても分かるということです」
「その女神様が天地を創造されたと」
「いいえ。女神は後から登場した存在です」
急に俺の耳元で小声でそう言うサード。
「おうっ」
俺より背の低い彼女は背伸びして顔を近づけている。正直ドキッとした。その反応が楽しかったのか俺の前にまわってニコニコしている。
「私たちの周りに
そんなことができるのなら初めからそうしてくれるかな。悪い気はしなかったけど。
「後からってどういうこと?」
「旦那様、レンブラント神父によるとこの世界はかなり科学が進んでいたようです。カイト様のいた地球より数百年も。理由は教えていただけませんでしたが一度世界は滅んだようです。そこから
「あそこの絵が、世界が滅んだことを表現しているのかな。
「そうですね。あの悪魔が『カガク』を象徴しているようです。特にこの国ではその言葉を
なるほど。見えないところでは進んでいるということか。するとあの化け物【セラフィム】も……。
そう思ったとき視界に水色の。
「あの子だ! サード、あの子だよ。俺が見たのは」
「えっ!? どこですか?」
俺が指差す方向には、駆けていくあの水色のワンピースの女の子の後ろ姿があった。
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