シンゲツのヨルに
お月さまが死んだ。
上を見てもお月さまはいない。だって死んだもの。今日だけ、お月さまは死んだ。それを自覚した時、心の臓からぞっとするほど熱い感情が溢れてきた。
よく、お月さまの光は人を狂わせるといわれる。テンションをハイにさせたり、狼人間にしちゃったりする。そんな不思議な能力がある。
きっと、私はどうかしているんだ。色々と。
月の光のない夜は、私にとって正常な人間の証。ほら、周りを見てみて。あなたも、家の庭にいる犬も、そこにいる野良猫も、両親だって、みんないつもと違う。そんな気がしない?
あなたのその思考。私のこの思考。きっと、きっと違う。みんないつもお月さまのへんな力にやられているのよ。じゃないといつもあんなハイテンションで生きていけないじゃない。なにかに取り憑かれたみたいに生きていけない。みんな、そう。きっと、そう。
満ちていく希死念慮も、欠けていく希望もきっとお月さまのせい。じゃないと説明がつかない。どうかしてる。いつだってお月さまの光のせいで私はこんなにも苦しんでる。あなたの光のせいで、あなたが光っているせいで、私は、私たちは苦しんでいるのよ。
苦しんでるの。明日のことなんてせいぜい、月の形しかわからないくせに、不安で不安でたまらない。生きる理由もわからない。そうね、きっとお月さまのことしかわからないからよ。なんど、なんど私は正常で居られるのかしら。いつまで、私は生きるのかしら。こんな苦しい世界を、悲しい世界を、生きようだなんて月の光のせいで思えるのかしら。
お願いだから、ずっとしんでいて。
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